自己免疫疾患の新薬候補、全身型重症筋無力症/シェーグレン症候群対象の試験で良好な結果
QLife / 2024年3月7日 13時5分
開発中の高親和性完全ヒト型モノクローナル抗体、両試験で主要評価項目達成
米国ジョンソン・エンド・ジョンソングループの医薬品部門であるヤンセンファーマ株式会社は2024年2月20日、成人の全身型重症筋無力症(Generalized Myathenia Gravis:gMG)患者さんを対象としたnipocalimabのピボタル第3相VIVACITY試験および成人の中等度~重度のシェーグレン症候群(Sjögren's Disease:SjD)患者さんを対象とした第2相DAHLIAS試験の結果を発表しました。
nipocalimabは、現在開発中の高親和性、完全ヒト型、アグリコシル化、エフェクターレスのモノクローナル抗体であり、FcRnを選択的に阻害し、複数の疾患の根本的な原因となっている自己抗体や同種抗体をはじめとする循環免疫グロブリンG(IgG)抗体の濃度を下げます。同剤は、希少な自己抗体疾患、母体胎児疾患、リウマチ性疾患の治療薬として開発中の唯一のFcRn阻害薬です。FcRnを阻害することで、広範囲な免疫抑制を引き起こさずに免疫機能を維持したまま、全体的な自己抗体濃度を低下させられる可能性があります。また、胎盤でIgGがFcRnに結合するのを阻害することで、母体の同種抗体が胎盤を介して胎児に移行するのを防ぐことができるとも考えられています。
第3相VIVACITY試験において、nipocalimabは主要評価項目を達成し、第22~24週にかけてのMG-ADLaスコアにおいて、プラセボと比較しベースラインから統計学的に有意な低下を示したということです。
第2相DAHLIAS用量設定試験においても、主要評価項目が達成され、第24週時のclinESSDAIbスコアが、ベースラインからプラセボと比較して統計学的に有意な低下を示したとしています。なお、両試験におけるnipocalimabの忍容性は良好だったということです。
両試験の結果は学術会議で発表予定、承認に向けて保健当局と連携していく重症筋無力症(MG)は、自己抗体が神経筋接合部のタンパク質を標的として、神経筋シグナル伝達を障害し、筋収縮を障害・妨げる自己抗体疾患です。世界で70万人の患者さんがいると推定され、このうち85%はより広範囲に病変が広がっています。MGでは、免疫系が抗受容体抗体を産生し、誤って筋受容体を攻撃することにより、これらの筋受容体が遮断または破壊され、神経から筋肉に伝達されるシグナルが妨げられます。症状としては、四肢脱力、眼瞼下垂、複視、咀嚼困難、嚥下困難、発話困難、呼吸困難などが挙げられます。gMGは既存の治療法で対処できる場合もありますが、十分な効果が得られない、もしくは現治療に対して忍容性がない患者さんのために、新たな治療薬の開発が必要とされています。
SjDは、比較的罹患率の高い慢性自己免疫疾患で、米国で約35万人、欧州も併せると56万人の患者さんがいると推定されています。男性よりも女性で9倍多く、自己抗体の産生、慢性炎症、外分泌腺系のリンパ球浸潤を特徴とします。ほとんどの患者さんにおいて、粘膜の乾燥(眼、口、膣)、関節痛、疲労が認められます。腺外症状が認められることもあり、関節、肺、腎臓、神経系などの複数の臓器系に影響を及ぼすことがあります。さらに、複数の関連疾患の発症リスクが高くなることが知られており、B細胞性リンパ腫の発症リスクは一般集団と比較すると最大20倍高くなると言われています。これら疾患に伴う身体的・心理的苦痛により、多くの場合、生活の質や機能的能力の低下を伴います。しかし、SjDに対する根本的かつ全身性の疾患の治療薬として、現在承認されているものはありません。
なお、同剤はこの1年間でgMGとSjDに加え、胎児・新生児溶血性疾患(Hemolytic Disease of the Fetus and Newborn:HDFN)と関節リウマチの4つの自己抗体疾患に対する臨床的有効性を示しました。
同社は「次のステップとして、第3相VIVACITY試験から得られた全ての結果を今後開催される学術会議で発表するとともに、gMG患者さんにnipocalimabを提供できるよう、各国の保健当局と連携していく。また、第2相DAHLIAS試験の結果は、SjDを対象とするnipocalimabの臨床開発を次のステップに進めることを支持するものであり、同試験の全ての結果についても本年の学術会議にて発表予定だ」と、述べています。(QLife編集部)
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