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<ビブリオエッセー>最も怖い、その正体は…  「闇祓(やみはら)」辻村深月(KADOKAWA)

産経ニュース / 2024年5月13日 12時42分

「闇ハラ」は心の中の闇から生まれる。この小説はそんな闇ハラ、つまり自分の事情や思いなどを一方的に相手に押しつけ、不快にさせる言葉や行為を描くホラーミステリだ。

第一章の舞台は高校。謎の転校生、白石要とクラス委員長の女子、原野澪、そして澪の部活の先輩、神原一太が話の中心になる。不気味なムードの要はなぜか澪に接近し、それを知った一太は澪の下校に毎日付き添うことになった。やがて澪の親友が行方不明になる。

この小説を読むきっかけは「タイトルが特徴的だな」と感じたからだ。もともとホラー小説に興味があったし、確かに最初はゾッとした。読み進むうちに別の恐怖も感じた。

それは第二章。場面は団地と小学校に移る。そこではママ友たちの闇ハラ、マウントの取り合いがあまりにドロドロしていて何度も読むのを中断しようかと思った。第三章は食品会社に舞台を変えて職場のハラスメントが描かれるが章を追うごとに自殺や事故死など不審な事件が相次ぐ。やがて人々を言葉で操り、闇に追いつめる家族の存在が浮かび上がる。

一番の恐ろしさはごく普通の身近な人間が周囲を得体の知れない絶望に追い込むという点だ。霊や呪いなどの見えないものではなく「人間」が最も怖い存在になりうる。そう考えると言葉に表せない恐ろしさを感じ、思わず自分の周囲を見回してしまった。

最後に物語は大きく動く。小説のタイトルが『闇祓』、「闇を祓う」であることがヒントになるだろう。そこに救いと驚きがある。

やはり一番怖いのは人間だということを再確認することができた。もし読む機会があったら心の闇に潜むものの怖さを知ってほしい。

東京都調布市 中野美心(14)

投稿はペンネーム可。650字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556-8661 産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本や漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。

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