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脅迫のジェンダー本、政治家や医療関係者、当事者らが読む「差別つながる要素ない」

産経ニュース / 2024年4月19日 11時17分

ジャーナリストの郡司真子氏(右)

4月3日に発売された翻訳本「トランスジェンダーになりたい少女たち SNS・学校・医療が煽る流行の悲劇」(産経新聞出版)。放火を示唆する脅迫メールが送り付けられたこともあり、一部書店では現在も販売を見送っている。国内での発売から約半月。欧米で先行する、性別違和を訴える若者の性別移行を進める「ジェンダー肯定医療」の負の側面も指摘した内容を巡り、国内のトランスジェンダー当事者や識者からはさまざまな声が上がっている。

客観的な視座

「一方的ではなく非常に客観的な視座で描かれている。今まで光が当たっていない分野だったが、かなり事態が客観化されるのではないか。『差別助長につながる』要素はない」

自民党の有志議員でつくる「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」の片山さつき共同代表は同書についてこう指摘する。

同書は米ジャーナリスト、アビゲイル・シュライアーさんが手術などで回復不可能なダメージを受けて後悔する少女らを取材し、2020年6月に米国で発売された著書の翻訳本だ。フランス語、ドイツ語などに翻訳された。

日本語版はKADOKAWAが昨年末、発行を予定したが「(心と体の性が一致しない)トランスジェンダーへの差別を助長する」といった批判を受けて中止された。4月3日に発行した産経新聞出版にも脅迫メールが届いた。

トランスジェンダーへの逆風を防ぐ

性別違和を訴える若者に対し、倫理的でエビデンスに基づく医療の推進を目指す「ジェンダー医療研究会」の加藤祥子共同代表は同書について「『ジェンダー肯定医療』の負の側面を明確に問題提起した本が事実上初めて日本で発売された」と評価する。「過去の研究では性別違和を訴える児童の8割で後に性別違和が消失したというものがある。思春期の性別違和は一過性のこともあると理解が進むきっかけになってほしい」と期待も込める。

加藤氏は、同書がトランスジェンダー差別につながるといった見方にも首をかしげる。「むしろ、著書を通じてジェンダー肯定医療に慎重な雰囲気ができれば、若年者への医療虐待を防ぐ結果になり、将来的な分断が防げるのではないか」と指摘。理由について「欧米では医療をめぐるトラブルが多発し、成長して手術を後悔した患者が医師や病院を相手に裁判を起こしたことなどがきっかけで、強い社会の反発が(慎重さに欠くトランスジェンダー支援団体に対して)起こり、深い分断と対立を生んでいる」と説明する。

思春期の変身願望

「性同一性障害特例法を守る会」副代表の浅利進氏は、同書で描かれる性別移行を望む少女らについて「自分とは違う」と語った。浅利氏は女性として生まれ、幼少期から自身を男性だと認識してきた。ネクタイ姿で仕事していたが、外見の女性化が進んだため、30代で男性ホルモンを投与した。48歳になった今、ようやく中身と外見が一致したと感じている。

浅利氏はそもそも男性に見られること自体に喜びを感じることはないという。「女性性が欠けた状態のまま成長し、普通におじさんをやっている。男装に喜びを見いだすのは思春期の変身願望に過ぎない」と述べ、「不可逆的な性別移行に手を出すのを思春期の冒険に思わないでほしい」と訴える。

思春期で性別移行ならぬ

「思春期女子の生きづらさに丁寧に寄り添うことの重要性が語られ、SNSの悪影響や、ずさんなジェンダー医療の問題を伝える本書は、子どもに関わるすべての人に読んでほしい」

ジャーナリストの郡司真子氏はこう語る。

郡司氏はこだわりが強いなど発達特性を抱える子供の支援に20年以上携わってきた。2年前はトランスジェンダーを表明する子供が多かったが、最近は性自認が男女のどちらでもない「ノンバイナリー」を訴える子供が増えているという。

郡司氏は「性別違和を形容するための言葉は変化していく。発達特性を抱える子供は特に思春期は揺れる」と述べ、同書の副題にある「流行の悲劇」に直面しないためにもこう強調する。

「ジェンダー肯定医療に進むといった先鋭的な行動は自我が確立した段階で考えるべき問題だ。思春期の状態に性別移行を決断してはいけない」(奥原慎平)

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