「財政非常事態宣言」に沈んだ町で進む再生への動き 地元企業、高校生らが独自の取り組み
産経ニュース / 2024年5月9日 10時0分
「令和12(2030)年には(町の貯金にあたる)基金が底をつく恐れがある」として昨年9月に「財政非常事態宣言」を出す事態に陥った山梨県市川三郷町は、行財政改革推進計画を取りまとめ、財政再建を図ろうとしている。それと同時に地元企業や町と協定を結ぶ民間組織などが、町の活性化に向けた各種の取り組みを開始した。破綻懸念の町のイメージ改善も狙う〝民〟の草の根の動きが始まった。
自虐的なフレーズで
「もともと、お祭りが好きな地域。沈んでいる町の雰囲気を変えて、盛り上げようと初めて企画した」
市川三郷町の製紙会社、金長(きんちょう)特殊製紙の5代目、一瀬清治さんは、4月13日に地場産業である和紙PRのために開催した「金長マルシェ」の狙いを強調した。金長などの地元の和紙製造会社による「おさんぽ凧作り教室」や「折り染め体験」など、紙にちなんだイベントや、キッチンカーなども出店し、小学生や未就学児連れの親子らが思い思いに作品作りやグルメを楽しんでいた。
イベントの案内には「財政非常事態宣言などネガティブなイメージの町を元気にしたい」と、半ば自虐的なフレーズを使っており、それも注目を集めた。
MTB拠点で公園再生
町のホームページによると都市計画公園とある町立「市川公園」は、少年野球で使うグラウンドだけは整備されているが、それ以外は荒れ果てた状態だ。審判台があることでそれとわかるテニスコートも、大人の胸の高さまでの草で覆われている。展望台への階段なども草がかぶさり、手すりがみえない状態だ。
4月6日午前。マウンテンバイク(MTB)の普及推進を進める「YAMANASHI MTB山守人」のメンバーや遠藤浩町長を含めたボランティアの町職員ら40人が集まり、自前のエンジン式の刈払機やチェーンソーなどを使って、雑草や通路側に張り出した木の枝などを刈り取り、それを軽トラックで集積所まで運んだ。満開のサクラの下で雑草がなくなり、公園らしさを取り戻しつつある。
山守人は昨年4月に町と包括提携し、MTBコースの整備や体験会の開催などで、活性化に取り組んでいる。代表の弭間(はずま)亮さん(42)は、「市川公園をMTBの拠点としながら、公園として活用できるように再生させる」と話す。市川公園は県有数の景勝地である四尾連湖(しびれこ)までのサイクリングロードのスタート地点としても利用できるとみており、今後も草刈りなどの作業を続ける。
高校生や町出身者も
このほかにも町活性化の提案が始まっている。地元の文具・紙製品メーカーのマルアイと、同社に隣接している県立青洲高校の生徒は共同で「地域課題解決アイデア創出ワーク」に取り組んだ。町の再建計画で閉鎖方針が示されている大門碑林公園を軸にグランピングや地場産業の和紙を活用したプラネタリウムの設置などのプランが出て、それらを遠藤町長に提案した。
町出身者でつくる「町ゆかりの会 りんどう」では青洲高校と日体大荏原高の野球部交流試合や、かつて甲子園に複数回出場し「ミラクル市川」と呼ばれた市川高校OBによる野球教室など、町の活性化に向け独自の取り組みを計画している。
こうした民間の動きに遠藤町長も「財政的には大変厳しい状態だが、こういった形で再生に向けた取り組みが広がることが、地域を盛り上げ、再生に向けたスピードを上げていくことなる」と期待を寄せる。(平尾孝)
◇
なぜ財政が悪化したのか?
旧市川大門、三珠、六郷の3町が平成17年10月に合併にして誕生した市川三郷町は、合併後10年間は合併特例法の優遇措置があったものの、平成28年度からは縮減され、令和2年度で終了。これにより地方交付税が約4億5千万円減となったことに加え、この間の人口減少で、4年度の町税収入は16億6千万円と、ピーク時から約15%減少している。
本来なら合併を機に公共施設の統廃合や会計年度職員の削減などを図る必要があったのだが、合併以降集約されたのは保育所の1カ所のみ。平成の大合併の効果を生かすことなく、収入が減少することはわかっていながら、支出削減は全く取り組めていない結果の財政非常事態宣言だった。
行財政改革推進計画は大規模な公共施設の統廃合など身を切る改革だ。まず令和7年度までを集中期間とし、収入に対して、人件費や社会保障費といった固定的な支出が占める割合を示す「経常収支比率」を3年度の98・1%から95%以下にする。
公共施設では、現在8つある博物館のうち6つを削減し、3つある図書館も1つに統廃合、8つある公営団地を5つに減らすなど、住民サービスに直結する領域でも、大規模なリストラを図る。
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