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AI駆使し勘頼みの作業を「見える化」 サバの陸上養殖で技術確立、気になる生食も可能に 深層リポート

産経ニュース / 2024年5月11日 8時0分

かもめミライ水産の大沢公伸社長(右)=福島県浪江町(芹沢伸生撮影)

完全閉鎖循環式のサバの陸上養殖場としては、東日本最大級の施設が福島県浪江町に完成、6月から養殖に乗り出す。来春の初出荷を目指すが、施設の主な目的はサバの陸上養殖に関する技術開発。人工知能(AI)などを駆使して新たな手法を確立し、個人の経験や勘に頼っている作業手順の「見える化」などを推進することで、さまざまな課題を克服し事業を発展させたい考えだ。

安全で生食可能に

施設を手掛けるのはプラント大手、日揮(本社・横浜市)の子会社で、浪江町の「かもめミライ水産」。4月下旬に完成した「陸上養殖イノベーションセンター」は、敷地面積約7800平方メートル。2棟の養殖棟には30トンの大型水槽が計14基、稚魚を入れる7・5トンの小型水槽が計4基ある。

水道水に塩分を加えた人工の海水を浄化や殺菌などの装置を循環させる、完全閉鎖循環式のシステムでは、寄生虫のアニサキスがいない安全なサバが育てられ、生食が可能になる。

サバの陸上養殖施設は、ほとんどが九州と山陰の日本海側にあり〝西高東低〟の傾向が顕著。東日本ではアニサキスによる食中毒の懸念などから、生のサバへの抵抗感が西日本に比べて強いのが実情だ。そのような背景を踏まえ、同社ではサバの生食になじみが薄い東日本には、ビジネスチャンスがあると判断した。

技術を「見える化」

一方、サバの陸上養殖には、生産リスクや生産原価が高いなど技術的な課題が少なくない。これをいかに抑えるかが事業成功のカギで、来春の初出荷をにらんで養殖を行う現場では、技術開発のさまざまな実験を同時に進める。

水槽ごとに水温や餌の種類など、魚を育てる環境や条件を変えてデータを蓄積。さらに、餌の食べ方を画像でチェックしたり、飼育や環境条件をセンサーで監視するなどして、最適な飼育方法を模索する。効率的な給餌や安価な餌の研究開発などでは、大学や民間企業などとも連携する。

収集したデータはAIで管理、飼育環境を制御するシステム開発なども急ぐ。陸上養殖の現場では、スタッフの経験や勘に頼る部分があり、作業手順などを整理し「見える化」することも重要になる。

飼育方法の確立で飼育期間の短縮や餌やりの自動化などが実現すれば、安定生産が可能になりコスト削減にもつながる。同社では一連の技術開発と並行して、販路の新規開拓なども行うことにしている。

順調にいけば来春、25センチ程度に育ったサバを初出荷できると見込んでおり、令和9年には年間生産量を60トンにまで増やしたい考え。10年には大規模生産を展開し、その後の海外展開も視野に入れる。同社の大沢公伸社長は「まずは技術を確立したうえで、販路も含めてスケールアップしていく」と意気込む。

大沢社長は「将来的には(養殖で育てた魚の卵から生まれた稚魚を成魚にするサイクルを繰り返す)完全養殖も目指し、持続可能な水産業の確立に貢献したい」とも話している。

陸上養殖 陸上に設置した人工的な環境で水産物を育てる養殖手法のこと。「完全閉鎖循環式」の陸上養殖は、人工的に作った海水を浄化装置や殺菌装置などを循環させて行う。そのため、海水や川の水を水槽に引き、古くなった水を放流する「かけ流し式」などと比べ、環境への負荷が低いとされる。ただ、自然環境を人工的に整えるため、さまざまな設備が必要でコストは高くなる。

~記者の独り言~ サバは大好物で「シメサバで晩酌」は至福のひととき。単身赴任する福島で1人、ウキウキと塩サバを焼くこともある。ただ、生食はなじみが薄くアニサキスで文字通り〝痛い思い〟をした仲間もいて、これまで積極的に食べたいとは思わなかった。今回、取材を進めると生で食べるのが楽しみになった。今日もひと仕事終えたら一杯やろう。もちろん、サバをさかなに-。(芹沢伸生)

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