眼科医が警告する「レーシック・ICLの怖いリスク」…30代後半になってからの手術は「慎重に検討したほうがいい」という理由
集英社オンライン / 2023年10月27日 11時1分
視力を回復させるためにレーシックやICLの手術を検討する人も多いはず。なんとなく、まわりから「簡単に目がよくなる」といったふんわりとした情報で検討していないだろうか? 眼科専門医が警鐘する目の手術に関するリスクについて紹介する。『眼科医が警告する視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと』(SB新書) より、一部抜粋・再構成してお届けする。
×視力を取り戻したいなら、すぐに視力回復手術を受ける
〇感染症のリスクや年齢を考慮して視力回復手術を受ける
視力回復手術の選択肢はレーシックとICL
視力(裸眼視力)を回復させる方法というと視力回復手術、具体的にはレーシックやICLを思い浮かべる人が多いでしょう。手術を受けるか迷っている人、かなり前向きに検討している人もいるかと思います。
まず、それぞれの手術がどういうものかを簡単に説明しておきましょう。
レーシックは角膜を少し削り取るという手術です。
ものが「見える」のは、眼球の表面にある角膜から入った光(ものの姿を反射している光)が水晶体を通り、網膜のスクリーン上で像を結んで映し出されたものを、脳が画像として認識するからです。
ところが近視は眼軸が長くなっているために、角膜から入った光が網膜よりも手前で像を結んでしまいます。そのため、網膜にはピンボケの像が映し出され、それを脳が認識する。これが「遠くのものがぼやけて見える」という現象です。
そこで角膜を少し削り取り、角膜から入る光の屈折率を変えることで、ちょうど網膜上でピントが合うように調整するのがレーシックです。
一方、ICLは、角膜を切開して水晶体の前にレンズを装着し、角膜を閉じるという手術です。
ICLの根本原理は、メガネやコンタクトレンズによる視力矯正と変わりません。
ただ、その視力矯正のためのレンズを眼球の中に設置するため、切開手術になるというわけです。
手術の内容を知ったうえで、改めていかがでしょうか。メガネやコンタクトレンズから解放されることを期待して「ぜひ受けたい」という人もいると思いますし、眼球にメスを入れるなんて、想像するだけで「怖い」と感じる人もいるでしょう。
リスクとデメリットを理解する
たしかにメガネをかける、コンタクトレンズを装着するという煩わしさがなくなるのは、視力回復手術の最大のメリットです。万が一、災害などに遭ったときにメガネやコンタクトレンズを失くしたら……、という心配も無用になります。
しかし眼科専門医としては、視力回復手術のリスクやデメリットについても触れないわけにはいきません。
まずレーシックについて、近年最も強く指摘されているのは、術後だと眼圧という目の圧力が「低めの数値」で出がちという問題です。
眼圧検査は緑内障の診断に必須なものです。それが低めに出てしまっていたせいで緑内障の兆候が見逃され、かなり緑内障が進んでから治療に苦労するというケースがすでに報告されていますし、私自身も多くのそういった患者さんを診てきています。みなさん口々に「視力がよくなったから油断していた」と言います。
また、レーシックにもICLにも感染症のリスクがありますが、かかったときの深刻度はICLのほうが高くなります。
というのも角膜を削り取るだけのレーシックの場合は、感染症にかかったとしても角膜(黒目)の部分だけですが、ICLは眼球にレンズを装着するため、感染症が眼球全体に及ぶ恐れがあるのです。
そして決して見過ごしてはいけないのは、レーシックは角膜を削り取る、ICLは水晶体にレンズを装着することで、あくまでも「網膜上でピントが合うように調整するもの」にすぎないという点です。
つまり、いずれの手術でも、眼軸が伸びてしまっている「近視の眼球」そのものは変わりません。近視だと緑内障、白内障、黄斑変性、網膜剝離にかかるリスクが高くなるのですが、これらのリスクは、レーシックでもICLでも一切低減されないということです。
ところが、なまじ手術によって「ものが見える」ようになったがために、眼科から足が遠のき、定期検診も受けなくなり、深刻な目の病気の早期発見の機会を逸してしまう恐れがあります。
視力回復手術のリスクというと、おそらく世の中で最も広く認知されているのは感染症のリスクでしょう。しかし実は、手術後の患者さんの意識変容、「視力が回復した=眼球の問題がすべて解消された」という勘違いこそ、一番のリスクといったほうがいいのかもしれません。「手術後、感染症にさえかからなかったら万事OK」という話ではないのです。
「年齢」も考慮に入れたほうがいい
以上を踏まえて、それでも視力回復手術を受けたいと思ったら、次に考慮に入れたいのは「年齢」です。
もともと強い近視がある人は、遠くを見るときはメガネを使い、手元を見るときはメガネを外します。この人が手術を受けたら、どうなるでしょうか。手術によって遠くは裸眼で見えるようになっても、45歳を過ぎて老眼が出てくると、手元を見るときに老眼鏡が必要になります。
要するに、手術を受けてもメガネの煩わしさからは解放されないわけです。単にメガネを使うタイミングと使わないタイミングを逆転させるためだけに、リスクをおかしてまで手術を受ける価値があるのかどうか……、というところです。
多くの場合、40代半ばから老眼が出てくると考えると、30代後半~40歳近くになってからの手術は、慎重に検討したほうがいいでしょう。
×眼トレは、いろんな種類をやればやるほどいい
〇効果が認められているのはガボール・アイだけ
「ピンホールメガネ」「マジカル・アイ」「外眼筋トレーニング」……効果のほどは?
細かい穴が開いた「ピンホールメガネ」や、特殊な絵や写真を見る「マジカル・アイ」、眼球を動かす筋肉にアプローチする「外眼筋トレーニング」など、視力回復に効果的とうたわれている手法は、いくつかあります。
それらの効果が気になっている人もいるかもしれませんが、「ガボール・アイ」を除いて、直接的に明確な効果が認められている手法はありません。
ピンホールメガネは、ごく簡単にいうと、遠くを見るときも近くを見るときも自分でピント調整しなくていいようになっているメガネです。かけている間は眼球を休めることができるので、ピント調整機能不全で近視が強くなっているケースや、毛様体筋の緊張による仮性近視には瞬間的に効果が表れます。
3Dでモノを見る訓練にも毛様体筋を休める効果があるとされています。それが視力回復につながるという建前ですが、厳密にいえば、リラックス効果があるかもしれない程度の話にすぎません。視力回復の効果があるとまでは言いにくいでしょう。
また、外眼筋は目を動かすための筋肉ですが、この筋肉をいくら鍛えても眼軸の長さは変わりません。それどころか、目の前で蚊が飛んでいるように何かがチラつく「飛蚊症(ひぶんしょう)」の人は、眼球に穴が開いている可能性があるため、眼球を動かす眼トレを行うと網膜剝離になるリスクがあります。飛蚊症でなければ、外眼筋トレーニングは有害ではありません。
ただ、もし何らかの効果が期待できるとしても、それは、あくまでも「目を動かす機能」の向上であって、眼軸の長さが「網膜上でピントが合う、ちょうどいい長さ」に変化するわけではないのです。
そもそも視力は移ろいやすいものなので、臨床実験の行い方次第で、いくらでも「視力回復効果があるように見える実例」を集めることは可能です。
まったくのうそっぱちとは言いません。実践し続けることで、3Dのリラックス効果や外眼筋トレーニングが、まわりまわって「ものの見えやすさ」につながることは考えられます。
しかし、そうした「風が吹けば桶屋(おけや)が儲かる」のような間接的で不確かな効果ではなく、直接的な因果関係で視力回復の効果が実証されているものというと、現時点では、脳の視覚野に作用することがわかっているガボール・アイしかないのです。
「ガボール・アイ」で視力改善効果が期待できる人、できない人
そのガボール・アイですらも、効果は限定的です。0.1以下の視力の人には極めて効果が表れづらいですし、0.1以上ある人でも、効果が出るのは7割とされています。
つまり3割には効果が出ないわけです。また、効果のエビデンスも強いものではありません。さらに、視力回復トレーニングは大人の近視のためのものであり、子どもは注意が必要です。
子どもは3歳くらいまでに1.0近く見えるようになるのが通常ですが、中には、眼球の成長が遅れるケースもあります。これは「弱視」と呼ばれる状態であり、幼少期のうちに専用のトレーニングメガネを使って治療する必要があります。
12歳以前の近視については、弱視である可能性も考えなくてはいけません。そこを見落として視力回復トレーニングを行ってしまうと、眼球に深刻なダメージを受ける恐れがあるのです。子どもは眼科で診察を受け、慎重に検討する必要があります。
大人でも、実は視力回復が有効な場合と、そうでない場合があります。
裸眼視力が0.1以上あり、メガネやコンタクトレンズで矯正されるのであれば、単に裸眼視力が落ちているということなので、ガボール・アイで何らかの効果が期待できるでしょう。
しかし、メガネやコンタクトレンズを使っても視力が矯正されないとしたら、近視以外の病気が疑われます。この場合、裸眼視力の検査値は関係ありません。たとえ裸眼の検査値が0.9でも、眼科の診察を受けて原因を突き止め、しかるべき対処を始める必要があります。
文/平松類 写真/shutterstock
『眼科医が警告する視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと』(SB新書)
平松 類 (著)
2023/9/6
¥990
224ページ
978-4815621841
習慣を見直せば「一生見える目」は手に入る!
・1カ月以上前に買った目薬を使っている
・3年前に買ったサングラスを今でも使っている
・水をがぶ飲みしてしまう
・寝つきがいい
・ブルーライトカットメガネを使っている
・目がいいから、検診を受けていない
1つでも当てはまるあなたは、要注意!
知らず知らずのうちに、自分の目を傷つけてしまっているかもしれません。
50万部突破『ガボールアイ』シリーズの著者が警告する「視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと」。
・1カ月以上前に買った目薬を使っている
・3年前に買ったサングラスを今でも使っている
・水をがぶ飲みしてしまう
・寝つきがいい
・ブルーライトカットメガネを使っている
・目がいいから、検診を受けていない
1つでも当てはまるあなたは、要注意!
知らず知らずのうちに、自分の目を傷つけてしまっているかもしれません。
50万部突破『ガボールアイ』シリーズの著者が警告する「視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと」。
第1章 巷にあふれる「目の健康常識」は眼科専門医の非常識
× ブルーベリーは目にいい
× 緑を見ると目にいい
△ 暗いところでものを見ると目が悪くなる
× メガネを使うと近視が進む
× 若いうちは老眼にならない
△ 現代人の目にはブルーライトカットメガネが必要
× 視力は誰でも改善できる
× 視力を取り戻したかったら、視力回復手術を受ければいい
× 眼トレは、やればやるほどいい
第2章 その習慣、目にとっては「拷問」です
× 習慣的に目を洗う
× 目薬を差したときに目をパチパチする
× 目が充血したら、「充血用の目薬」を使う
× 1カ月以上前に買った目薬を使っている
× ドライアイ解消の最善策は目薬である
× コンタクトレンズの手入れは「ワンステップ」でいい
× ディファイン、カラコンを使っている
× 目をこする
× 目の紫外線対策は必要ない
× 筋トレをめちゃくちゃがんばっている
× マッサージ、ツボ刺激は、視力低下防止、目の疲労回復に効果的
× 目がいいから、検診を受けなくても大丈夫
× 寝付きがいいのは健康のサイン
第3章 放っておいたら危ない「目のサイン」
× 急に視力が落ちてきた
× 急に目が見えなくなった
× ものが光って見える
× 蚊が飛んでいるように見える
× 視野が欠けてきた
× 異常に光がまぶしい
× 目が疲れやすい
× 目がかすむ
× ものが二重に見える
× まぶたが下がってきた
× 目が充血する、かゆい、ショボショボする、ゴロゴロする
× 見たいところがよく見えない、歪んで見える
× 目の健康のセルフチェック法
第4章 知らないと危ない「眼科選び」
× かかりつけ眼科いない
× 手術は眼科医に任せておけば大丈夫
× 「世界水準」を謳う眼科なら安心できる
× ジェネリックの目薬を選んでも、医師に報告しない
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