ひき逃げ交通事故という犯罪から物語が始まるこの作品。
犯人の逃亡を巡るサスペンスとか被害者家族による加害者への復讐物語のような、ありがちな展開を想像していると肩透かしを食らう。根底にあるのは、手酷い心の傷をもたらした“罪”に対して、人は“その罪に向き合うこと、そしてその罪を赦すこと”ができるのか、という問いだ。
高度経済成長期前の日本では、金持ちと貧乏人の格差は確かに存在していたし、だからこそ、丘の上の豪奢な屋敷に住む資産家の会社経営者(三船敏郎)の子供を誘拐して身代金をせしめよう考える貧乏な若者(山崎努)を描いた黒澤明監督の名作『天国と地獄』(1963/今度、デンゼル・ワシントン主演でハリウッドでリメイクされる!)にはリアリティが感じられた。