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国内最高販売台数を記録。「Jeep」が若い世代にも爆発的に売れている理由

集英社オンライン / 2022年9月3日 16時1分

四輪駆動車の先駆けであり、いわゆる「SUV」の歴史を作ってきた「Jeep」が、いま日本でも大人気だ。国内での販売台数は2013年以来右肩上がりで伸び続け、2021年度には史上最高の販売を記録。車離れが進んでいると言われる若い世代にも好調な売れ行きを見せている。いったいなぜJeepはこんなにも売れているのか。そしてオーナーを虜にするJeepの魅力とは何か。日本でJeepブランドを展開するStellantisジャパン株式会社 ジープブランドマネージャー新海宏樹さんに話を聞いた。

すれ違いざまのハンドサイン

バイクでのツーリング中、ほかのライダーとすれ違うと、ピースサインや挙手を交わすことがあります。知らない人からすると一見奇妙に思えるこの行動は「ヤエー!(YEAH!)」と呼ばれ、ライダーには常識の挨拶の文化。その言葉のないコミュニケーションには「こんにちは」の意味だけではなく、「気をつけてね!」や「楽しんでね!」など人によってさまざまな意味が込められていて、実際にやってみるとなんとも言えない気持ちよさがあります。



ライダーでないと日常生活でこのような体験をすることはあまりないと思いますが、私の知る限り、1車だけハンドサインを交わし合うクルマがあります。

それは、第二次世界大戦中にアメリカで軍用車として開発され、欧州戦域の連合国軍最高司令官(CINCAF)を務めたドワイト・D・アイゼンハワー大統領が、"第二次世界大戦を勝利に導いた兵器”として、「C-47輸送機」や「バズーカ」などと並んで挙げたことでも知られる「Jeep」です。

四輪駆動車の代名詞であるJeepは、初代「Jeep Willys」の登場から81年が経ち、現在はステランティスグループの1ブランドとして「WRANGLER」「RENEGADE」「COMPASS」「GRAND CHEROKEE L」「GLADIATOR」がラインナップ。2013年以来国内市場において9年連続で販売記録を更新し、2021年度には年間1万4000台という 、過去最高販売台数を達成している、今大人気のクルマです。

「Jeepにはオーナー同士がすれ違うとハンドサインで挨拶をする文化があります。これは『Jeep Wave』と呼ばれるのですが、なぜWave(波)なのかというと、ハンドルを持ちながらピースした手の形が波のように見えるからです。Jeep Waveの起源には諸説ありますが、第二次世界大戦中にアメリカ軍がヨーロッパへ戦争に行ったとき、兵士たちが敬礼代わりに行ったのが始まりと言われます」(Stellantisジャパン・新海氏)

1941年にアメリカ軍の軍用車として誕生したJeep。「どこへでも行ける。何でもできる。」がそのスピリット。写真は「Jeep Willys MA」

それが終戦後もJeepオーナーのカルチャーとして定着し、現在に至るまで脈々と受け継がれてきたのです。戦時中は下士官から上官へするのが決まりだったそうで、それが転じて、新米の(新型に乗っている)オーナーから古参のオーナーへ挨拶するのが本来のやり方だというトリビアもあるのだとか。

そういえば、Jeepオーナーである私も、過去に何度かWaveされたことがあったっけ。しかし、Jeep歴が浅かったのでそのときはハンドルを持ったままスルー。今考えるとベテランの方に大変失礼なことをしたと反省していますが、それでもバイクの「ヤエー!」と同じような仲間意識を肌で感じ、自然と笑顔になったのを覚えています。

昔のJeepも当然かっこいい。Jeepの歴史を詳しく知るには、「自由と冒険の81年」と題された公式WEBページで(https://www.jeep-japan.com/history.html

Jeepオーナーはすれ違ったら「Jeep Wave」でご挨拶

オーナーの心を掴むJeepの文化

なぜJeepにはこのような独特のカルチャーが根付いているのか。それは、私を含めたオーナーがほかのクルマにはない唯一無二の魅力をJeepに感じ、そして時には過剰と言われるほど愛しているからに違いありません。だからこそ、そうしたJeepへの強い愛着が、同じ仲間を見つけたときのWaveへとつながるのです。「僕もJeep、君もJeep、お互いわかってるね」といった感じに。

「Jeep Waveのように、Jeepには面白いと思ってもらえる歴史や文化、そしてサブカルチャーがたくさんあります。それが国産ブランドとも輸入ブランドとも違う、Jeepだけのアイコニックな魅力なんです」(Stellantisジャパン・新海氏)

たとえば、Jeepという名前の由来もその1つ。初代のJeep Willysは四輪駆動の偵察車両としてタイヤが1つ外れても約50km走るよう設計されていたり、ボンネットを改良すると負傷兵を運んだり、大砲をひっぱたりなどできる機動性の高さを持ち合わせていたため、「GP(General Purpose)」(「多目的な用途に使える車」という意味)と呼ばれ、それをもじった隠語としてJeepと呼ばれたと言われます。

また、時代を経ても変わらないデザインもそう。

「JeepのDNAとして長年踏襲されているものがあります。1つは、フロントに縦に刻まれる『セブンスロットグリル』。登場時は9本でしたが、民間用として生産されたシビリアン・ジープからはずっと7本です。また、もう1つの象徴である『台形ホイールアーチ』。台形のほうが隙間があるので雪などが入ったときの操作性が良く、タイヤ交換やメンテナンス、修理をしやすいというメリットがあります」(Stellantisジャパン・新海氏)

セブンスロットグリルや台形ホイールアーチは、JeepのDNAとして今も変わらない

WRANGLERでいえば、丸いヘッドライトや外ヒンジのボンネットをはじめ、取り外せる屋根やドア、ノーマルのままだと剥き出しの給油口のキャップ、「トラクション」「渡河性能」「機動性」「アーティキュレーション」「地上高」といった各性能がアメリカ本社のオフロード基準を満たすことを示した「Trail Rated」というマーク(Jeepの四駆モデルにはすべてついている)などもそうでしょう。

Jeepの大きな特徴であるのが、悪路の走破性能。Jeepの中でも特に優れた4×4性能を持つモデルには「Trail Rated」のバッジがつけられる

ちなみに、私の乗るWRANGLERのひと世代前のモデル「JK」(現在は「JL」)では、フロントガラスの片隅に山を登るWRANGLERのイラストがお茶目につけられていたり、乗車席のドリンクカップの下にさりげなく丸いヘッドライトとセブンスロットグリルが刻印されていたり、取扱書や車検証ケースが迷彩柄だったり…。そんな小さな遊び心にも、グッと心を持っていかれます。

「Jeepにはいつになっても変わらない世界共通のコアバリューがあります。それは『Freedom(自由)』(地球を楽しむ。どこにでも行ける。なんでもできる。)、『Authenticity(本物)』(オリジナル4×4ブランドとしての誇りと自信)、『Adventure(冒険)』(冒険とは発見。非日常の体験で見つける新しい自分)『Passion(情熱)』(内なる力を呼び覚まし前進させる)です。こうした明確なバリューを持っているブランドは、あまりないのではないでしょうか」 (Stellantisジャパン・新海氏)

筆者の乗る旧WRANGLER「JK」モデルでは、フロントガラス部分に遊び心溢れるイラストが描かれている

乗車席の間にあるドリンクカップの下にも、WRANGELRの象徴でもある丸いヘッドライトとセブンスロットグリルのアイコンが

買う人の多くは「DREAMERS」

そうしたJeepのコアバリューに虜にされる人の数は、販売台数の伸びが示すように年々増えています。また、特にJeepで特徴的なのが購入者の平均年齢が非常に若いこと。2021年の国内のSUV購入者の平均年齢が49歳であるのに対し、Jeepは42歳と、若いうちからクルマがある楽しい生活を送っている人が多いのです。

「最近は若年層のクルマ離れが叫ばれますが、Jeepに関しては若い人、中でもアクティブファミリーやカップル層に多くご購入いただいています。ドライブやキャンプ、フェスといったアウトドア系の趣味をお持ちの方とJeepは相性が良いことに加え、中古市場が活況であることも理由です。WRANGLERの場合は購入後3年の想定価値は80%くらい残ると言われるように評価額が落ちにくいため、残価設定ローンを組むことで毎月の支払い額を抑えられるのです」 (Stellantisジャパン・新海氏)

Jeepではローンやリースなどの各種ファイナンシャルサービスが提供されている

Jeepの販売台数のうち4割超を占めるのはWRANGLERだそうですが、近年では2015年秋に登場したRENEGADEが大ヒット。それまでの「大型・大排気量」のイメージを覆し、そのポップでコンパクトなデザインが女性や街乗りがメインの人の心を掴みました。

Jeepの販売台数の4割を占める人気モデル「WRANGLER」

コンパクトな見た目が人気の「RENEGADE」

また、2018年に本国アメリカで発表され、日本では2021年11月に受注開始したピックアップトラック「GLADIATOR」は、全長5.6mあるその大きさから日本市場での展開を社内で不安視する声もあったそうですが、蓋を開けてみるとファンやオーナーからの支持の声 は大きく、発売前に約500台もの受注があったといいます。

「昔のJeepは、アメリカ好きの年配の男性や、冒険家、登山家などがWRANGLERの『TJ』や『YJ』に乗っているというイメージがありましたが、今はまったく違います。現在の購入者の圧倒的多数を占めるのは『DREAMERS(ドリーマー)』です。普段は家庭や仕事に時間的に拘束されながらも、わずかな時間の中で、積極的に冒険や旅、アウトドア、アクティブスポーツに取り組む。そして、そういった理想や夢 を実現しようという希望のもと、こだわりの道具として、Jeepを選ばれるのです」(Stellantisジャパン・新海氏)

全長5.6mの大型モデル「GLADIATOR」

そして、Jeep Japanはそうしたドリーマーに対して、ほかのブランドにはあまり見られない独自の取り組みを積極的に行っています。

たとえば、冒頭で述べたJeep Waveは単なるハンドサインを示すだけでなく、実はJeepが展開しているカスタマーケアサービスの名称でもあります。安心の3年間無償サポート等のカーケアサービスに加え、「Real」というキーワードにこだわり、オーナーを対象としたキャンプイベントやフォトコンテストなどを定期的に開催。

また、著名人を起用した派手な宣伝をするのではなく、オーナー1人1人のJeepのある生活を紹介する「Real People」や、自由、冒険、本物をテーマにしたライフスタイル・ウェブマガジンの「Real Style by JEEP」、『National Geographic』と組んで日本の知られざる美しい場所を紹介する広告企画「Real Tabi with Jeep」など、Jeepの世界観とオーナーを大切にした"偽りのない"活動を展開しています。

こうした取り組みが奏功して、2021年度のアンケートでは実に56%ものオーナーが「次もJeepに乗り換える」と回答。オーナーロイヤリティを高めることに成功したほか、そうした人がSNSなどでJeepのことをつぶやくことでオーガニックなプロモーションにつなげています。

クルマに乗ることがこんなに楽しいなんて

クルマに求めることは性能や機能、乗り心地など人それぞれですが、いちオーナーとして「Jeepの魅力はどこにあるか」と問われたら、それは「合理性では語れない豊かさ」にあると思います。

Jeepについてインターネットで調べてみると、ほかのクルマもそうであるように、さまざまな欠点やデメリットなどが挙げられますが、私個人としては「それってそんなに大事かな?」と思うものばかり。

また、たとえそれらが事実だとしても、誰かについつい語りたくなる歴史や、古くから継承される美しいDNA、そして冒険や自由を掻き立てる遊び心などから醸成される、"乗っているときの楽しさ"がそれを上回ってしまうのです。

「考える葦」で有名なブレーズ・パスカルの『パンセ』の中に、「ウサギ狩りに行くハンターに、はい、ウサギ!と手渡しても喜ばれない。なぜなら、ハンターが求めているのは狩だから」という話がありますが、それと似たように、Jeep乗りがクルマに求めているのは「目的地にたどり着くこと」ではありません。Jeepに乗ることは手段ではなく、それこそが目的と言ったらよいでしょうか。だから、下手すれば目的地に辿り着かなくたっていい。Jeepには、そんなふうに合理性では割り切れないところに魅力があるような気がします。

こう書くと販売店であるStellantisジャパンやディーラーさんから「いやいや、今のJeepは性能も機能もいいよ!」と怒られてしまったり、熱烈なほかのオーナーからは「いや、違う。真の魅力は…」と反論されたりしそうですが、これはあくまで、いちオーナー個人の「Real」な意見ということでご承知おきを。

フラッグシップモデルとして圧倒的な存在感を放つ「GRAND CHEROKEE L」

アウトドアレジャーにもぴったりのコンパクトSUV「COMPASS」

文/水川歩
写真提供/Stellantisジャパン

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