【速報・更新】JAXA月探査機「SLIM」夜を迎えて休眠状態に 2月中旬以降に運用再挑戦
sorae.jp / 2024年2月1日 15時18分
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2024年2月1日14時頃、X(旧Twitter)のSLIMプロジェクト公式アカウントにて、小型月着陸実証機「SLIM」が休眠状態に入ったことを明らかにしました。SLIMは月の過酷な夜に耐えられるようには設計されていないものの、JAXAは太陽電池に再び太陽光が当たるようになる2月中旬以降の運用に再挑戦するとしています。【最終更新:2024年2月1日17時台】
SLIMは日本時間2024年1月20日0時20分頃に日本の探査機として初めて月面へ軟着陸することに成功したものの、2基搭載されているメインエンジンのうち1基で着陸直前に生じたトラブルによって接地時の水平方向の速度や姿勢が想定外となり、太陽電池を西に向けた状態で安定してしまいました。太陽光が東から当たっていた着陸当時は太陽電池の発電が確認できなかったため、JAXAは着陸から約2時間半後にSLIMの電源を一時オフにしていました。
【▲ 参考画像:小型月着陸実証機「SLIM」から放出された探査ロボット「LEV-2(SORA-Q)」のカメラで撮影された画像。大きく傾きつつ接地した状態のSLIMが右奥に写っている。画像は試験画像で、もう1機の探査ロボット「LEV-1」経由の試験電波データ転送により取得されたもの。2024年1月25日公開(Credit: JAXA/タカラトミー/ソニーグループ(株)/同志社大学)】その後、太陽光が西から当たるようになったことで2024年1月28日以降はSLIMとの通信が再確立され、「マルチバンド分光カメラ(MBC)」による岩の観測が進められていました。観測対象の岩は着陸直後に実施された低解像度スキャンのデータから6つが選ばれ、「トイプードル」「柴犬」といった犬の名前が愛称として付けられていました。運用再開後はここに「土佐犬」「セントバーナード」など少なくとも5つが新たに追加され、高解像度のマルチバンド観測が実施されています。
【▲ SLIMのマルチバンド分光カメラ(MBC)で電力回復後に取得された月面スキャン画像(モザイク合成)。観測候補の岩石に付けられた愛称が示されている。2024年2月1日公開(Credit: JAXA、立命館大学、会津大学)】 【▲ 電力回復後にMBCを使って近赤外線(波長1.65μm)で詳細観測が行われた岩「秋田犬(あきたいぬ)」の画像。JAXA宇宙科学研究所(ISAS)によるとSLIMから岩までの距離は18m、岩の横幅は63cmとされている。2024年2月1日公開(Credit: JAXA、立命館大学、会津大学)】JAXAによると、日本時間2024年1月30日~31日の運用をもってSLIMは休眠状態に入りました。SLIMは太陽電池から電力を得ているため、着陸地点が夜の間は活動することができません。また、SLIMは約マイナス170℃まで温度が下がる月の夜を乗り越えるようには設計されておらず、夜の間に電子機器が損傷する可能性もあります。月の昼夜は2週間ずつ続くため、JAXAはSLIMの太陽電池に再び太陽光が当たるようになる2月中旬以降の運用に再挑戦するということです。
【▲ 日没にともなう休眠前にSLIMの航法カメラで最後に撮影された画像(日本時間2024年2月1日14時頃に公開)。手前の月面が夜闇に覆われつつある様子がわかる。SLIMプロジェクトのX公式アカウントのポストから引用(Credit: JAXA)】こちらは休眠前のSLIMの航法カメラで最後に撮影された月面の様子です。先に掲載したLEV-2(SORA-Q)やMBCで撮影した画像と比較して、太陽光の当たらない部分が増えていることがわかります。SLIMプロジェクトの公式ウェブサイトによると、着陸後の観測運用を含め、休眠状態に入るまでの一連の電源系の動作は正常だったということです。
【2024年2月1日17時更新】JAXA宇宙科学研究所(ISAS)からSLIMの電力回復後にMBCで取得された画像が追加公開されたため、記事中の画像を一部差し替えました。
SLIMについては新しい情報が発表され次第お伝えします。
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・JAXAの月探査機「SLIM」2024年1月20日に月着陸へ 成功すれば日本初(2023年12月6日)
Source
小型月着陸実証機SLIM (X, fka Twitter) JAXA - 小型月着陸実証機 SLIM JAXA/ISAS - 小型月着陸実証機(SLIM)搭載マルチバンド分光カメラ(MBC)による 10バンド分光撮像の成功について文/sorae編集部 速報班
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