「ぐるなび」と「食べログ」で分かれた明暗。“4年前は互角”も大差がついてしまったワケ
日刊SPA! / 2024年4月4日 8時53分
それでは、食ベログの業績が安定しているのはなぜでしょうか?
消費者が外食に使っている金額そのものに大きな変化がないからです。総務省の家計調査によると、2023年の1世帯当たりの年間の外食費は17万3000円でした。2020年は12万9000円まで下がりましたが、力強く回復しています。2019年は17万6000円で、ほぼ同じ水準まで戻っているのです。
食ベログはテレビCMで「お店探しは、食ベログアプリ」をキャッチコピーにしていました。まさにこれが重要で、消費者の中に飲食店探しは食ベログだという意識が醸成されている限り、転落することはないでしょう。
◆外食頻度が減った結果、食べログ有利に?
食ベログにはもう一つ追い風が吹いています。それが外食頻度の変化です。家計調査によると、2023年の勤労世帯における年間外食頻度は132回でした。2019年は153回。月当たりに直すと、2019年は12.8回、2023年は11.0回飲食店を利用していることになります。
つまり、外食に使う金額は2019年の水準に戻っていますが、頻度は下がっているのです。コロナ禍をきっかけとして、消費者は1回当たりの飲食店の利用機会を堪能しようとする姿が浮かび上がります。
飲食店の探し方は複雑化しています。SNSで発見したお店をGoogleで検索してグルメメディア、公式サイトを確認。地図アプリで場所を見て、グルメメディアで予約を入れるといった様々な過程を踏みます。
消費者は飲食店選びに対して慎重になりました。口コミで信頼を構築した食ベログはユーザーの受け皿になっているのです。2023年10-12月の食ベログのネット予約人数は2307万人でした。2019年10-12月は1137万人。倍増しています。
◆懸念は「アルゴリズム訴訟」と「別のプラットフォームの台頭」
ただし、食ベログに死角がないわけではありません。
その一つがアルゴリズム訴訟。焼肉チェーンを経営する会社が、不当に食ベログの点数を下げられて客数と売上が減少したと主張。運営するカカクコムに損害賠償を求めました。
一審では店舗側の主張を一部認め、3800万円余りの賠償を命じました。しかし、二審では店側の訴えが退けられています。焼肉チェーンの経営者は、最高裁判所に上告する意向を示しています。
この裁判の一番のポイントは、食ベログが適切ではない方法で点数を操作しているのではないかと疑われていること。消費者は食ベログの点数を店選びの参考にしていますが、その信頼が揺らぐとメディア離れを引き起こすきっかけになります。この裁判の行方は極めて重要です。
もう一つはGoogle MapやInstagramなどの別のプラットフォームの台頭です。Google Mapは食ベログと同じように口コミが充実しており、特に若者の間では大いに活用されています。Instagramは2021年に飲食店の席予約ボタンを追加し、来店を促す仕組みを導入しました。
現在は食べログが飲食店探しの受け皿になっていますが、勢力図はいつ変わってもおかしくはありません。この先も安泰だとは決して言えないでしょう。
<TEXT/不破聡>
【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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