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『週刊ベースボール』での手記が球団批判と取られ…… ドジャース戦法を取り入れた川上哲治と広岡達朗の確執前夜

日刊SPA! / 2024年4月8日 15時50分

◆『週刊ベースボール』での手記が球団批判と取られた

六六年から三年間巨人に在籍した江藤省三(元慶應大監督)が、キャンプ中のミーティング内容を丁寧にまとめあげた「川上ノート」を作り上げていた。江藤はこう証言する。

「川上野球とは、要は勝つためにどうするのかを徹底した野球。当時のコーチングスタッフはOB出身者のみで構成されていて、なあなあの雰囲気だった。そんな不文律をぶち破って、中日出身の牧野(茂)さんをコーチに呼んだのも川上さんが初めてでした。ドジャース戦法を身体に叩き込むため、キャンプの初日からバント防止のピックオフプレーやダブルスチール阻止といったサインプレーの反復練習ばかりやらされたね。

バントをやらせるにしても、打ってくるかもしれないという予想を元に守備陣形を敷いていくんです。私はポジションがセカンドだったので、状況に応じて動きを覚えなくてはなりません。例えば、一死満塁でライト前ヒットを打った場合のカットオフプレーにしても、打者の二塁進塁を防ぐ動きをするためにセカンドが一塁カバーに入るなど、覚えることがたくさんありました。今でも通用するプレーを五〇年以上前からやっているんですから、そりゃ強くて当たり前です」

六一年のシーズンは、巨人の組織プレー、サインプレーが面白いように決まった。当初、他球団はただ偶発的にやっているのだと思っていた。だがあまりにやられるので巨人が意図的に行っているのだとようやく気づいた。

七〇年に中日へ移籍した江藤は、中日コーチ陣からすぐに巨人のドジャース戦法を教えてほしいと請われる。当時どこもやっていなかったバントフォーメーションのサインや、投手と野手の牽制サイン等を、キャンプの日程表の裏に記したという。

「ルーキーの頃、川上さんがキャンプ前日に言った『理屈じゃない。理屈を超えてこそバッティングのコツを見出すことができる』という言葉が終生忘れられません。理屈を超えるくらいの努力をしないとグラウンドに立てない。一打席立つためにバットを千回振るんですから、やっぱり理屈じゃないですよ」

正しい理論を体現するには、時間をかけて身体に叩き込まなくてはならない。近代野球の礎ともいえる組織プレーを身につけるまでには、膨大な練習量があったのは言うまでもない。

広岡が良かれと書いた『週刊ベースボール』での手記が球団批判と取られ、反広岡の首脳陣から「広岡を追い出せ」と声が上がりトレード話が浮上した。幸いにもすぐ立ち消えたが、プロ入り一一年目に件の「長嶋ホームスチール事件」が起こった。

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