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岸田首相の言葉はなぜ響かないのか?“昭和の名宰相”の演説・スピーチと比較する

日刊SPA! / 2024年4月12日 8時51分

 田中は聴衆の質、数にかかわらず、演説、スピーチで会場を一体化させ、盛り上げる名手だった。特筆すべきは〝借りてきた言葉〟が一切なかったことで、自分の言葉が最強であると知っていた。政治家だけでなく、部下を抱えるあらゆる組織の上司、リーダーたる者は、スピーチ力が問われることを改めて自覚すべきである。言葉で説得せず、黙っていても部下がついてくるのは、高倉健くらいしかいないのである。

 幹事長時代の田中は、政治家として最も脂が乗り切ったといわれていた。当時の自民党本部幹事長室の職員による証言がある。

「田中幹事長の演説会があって、超満員の大盛況でした。田中さんは演説が始まる前、私を呼びつけると『いいか。ワシが話を始めて5分たったら、中身はどうでもいいからメモの紙を入れろ』と妙なことを言うんです。私が指示通りにすると、田中さんは聴衆に向かって『いまね、事務局から〝時間です〟というメモが入った。冗談じゃないね。こんな大勢に来ていただいて途中で帰れるか。ねぇ、皆さん、そうでしょ!』と言ったから、聴衆がワッと沸いた。この程度の演出など、田中さんにとっては朝飯前でしたね」

 こんな〝芸〟ができるかどうか。ここまで知恵の回る上司なら、部下がついてくること間違いなしである。

【小林吉弥】
1941年8月26日生まれ。東京都出身。半世紀にわたる永田町取材歴を通じて、抜群の確度を誇る政局分析や選挙分析など幅広く活躍する気鋭の政治評論家。
歴代実力政治家を叩き台にした指導者論、組織論への評価は高い。田中角栄研究の第一人者。1968年から政治評論家となり現在に至る。

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