灘中→灘高→東大理Ⅲ…超エリートコースを歩んだ男が“医師とピアニストの二刀流”を続ける理由
日刊SPA! / 2024年4月22日 15時54分
「身内に医師などもいない、いわゆる中流家庭です。一人っ子だから私立中学にも入れてもらえたし、ピアノも習わせてもらえたのではないでしょうか。結果としてそれらを続けさせてもらえたので、感謝をしています」
そんな浅野氏が医師として在宅医療の道を選んだのは、「患者さんとコミュニケーションを取りながら治療を考えていくのが自分に合っているから」。人の機微に敏い浅野氏の着眼点には、なるほどと手を打った。
「認知症を判定する医学的な基準はあり、それは有用なものです。しかしそれ以外にも、実は認知症を疑うところはあります。たとえばこれは学生時代に実習で体験したのですが、訪問先で出していただいたコーヒーの砂糖の量がかなり多かったり、砂糖ではなく塩が入っていたりするときなどです。注意深くその人とコミュニケーションをしていけば、簡単に気付けることも多いと思うんです」
◆「リサイタルで寝ている人」を見て気づいたこと
目の前にいる人に配慮し、その人とコミュニケーションを取ること。浅野氏はそこに注力して診療をし、また演奏活動も行っている。音楽は浅野氏にとって、自らの演奏技術を誇るものではなく、コミュニケーションツールそのものだ。そういえば冒頭のリサイタルも、クラシックに詳しい人を楽しませる楽曲から誰もが身体を揺らしたくなるポピュラーミュージックまで、グラデーション豊富だった。
「せっかくリサイタルに来てもらっているのに、一曲も知らないという状況は双方にとってもつらいと思うんです。私はプログラムを決めるとき、来てくれた人が楽しめる曲、知らなかったけどいい曲だと思ってもらえる曲などを織り交ぜるようにしています。私自身、聴いたことのない曲もたくさんあるので、勉強のためにジャンルを問わず聴くようになりました。
大学生の頃、クラシック曲ばかりを演奏していた時期のことです。あるリサイタルで、最前列の人がずっと眠っていたんです。それを見て、このような考えに変わりました。私は、リサイタルで心地よくなって寝てしまうことをまったく悪いとは思いません。しかしその方は、おそらく退屈さから眠ってしまったのだろうと感じました。自分の演奏技術のなさを痛感すると同時に、人に関心を持ってもらう仕掛けの重要性を知りました」
◆高校生から90歳まで幅広い層に支持されている
多くの人々に目配りし、最大限楽しませようと企む浅野氏のリサイタルは、“常連”も少なくない。
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