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【事業開発マネージャーインタビュー】NOKIAの遺伝子をもつ点滴管理デバイス&システム「Monidrop」

Techable / 2024年4月30日 14時0分

2023年4月17~19日の3日間、東京ビッグサイトにて「ファーマIT&デジタルヘルス エキスポ2024」が開催された。同展は研究開発、マーケティング・セールス、デジタルヘルス、製造、ベンチャー/スタートアップの5つのゾーンで構成され、過去最大となる98社が国内外から参加、およそ300の製品・技術が展示された。

スタートアップゾーンに配置されていたフィンランド企業Monidorは、点滴管理デバイス・システム「Monidrop」を出展。正確な点滴注入速度によって全体的なケアの品質向上およびワークフロー効率化、コスト削減をも実現するソリューションだ。

Monidor社の同ソリューションについて、事業開発マネージャーのケラネン陽子氏に話をうかがった。

点滴進捗を遠隔で確認、看護師の負担を大幅軽減

――Monidropは点滴をモニタリングできる製品ということでしょうか。
 ケラネン:はい、最初にまず輸液モニターで設定します。たとえば点滴の量どれだけなのか。500ミリリットルであれば投入時間は30分なのか2時間または5時間なのか。どのくらいかけて落とすかという指示が医師から出されるんですね。ところが点滴はなかなか調整が難しいんです。

流量…しずくの落ちる速さの調整がなかなか難しいんですが、Monidropは数値を入力すると画面に表示されます。それに合わせてこの「クレンメ」(注入チューブに付いている車輪のような部品。クランプとも言う)で調節します。クレンメを回すと落ちる速度が速くなったり遅くなったりする。これを使って調節するんですね。

――数値入力で設定したあとで、最終的な速度調整はそのクレンメで行うんですね。
 ケラネン:はい、輸液ポンプのほうは自動ですが、クレンメを使う自然落下式輸液セットのモニタリングシステムになります。ただ、こうして速度を調節しても、患者さんが動くと点滴が止まったりするんです。それにすぐには気が付かないこともありますが、Monidropがあれば「停止した」とか「速度が上昇・低下した」という情報がIVスクリーンアプリに表示されます。通常であれば看護師さんが見に行って初めて気がつくところを、遠隔で把握できるという利点があります。

――患者本人は点滴が止まったなどの事態に気づけないものですか?
 ケラネン:患者さんは眠っていないとダメですから(笑)。基本的に、点滴が止まってしまった・速度が速すぎる・電池が切れたという3つの問題は音が鳴ります。それ以外については、あまりピーピー鳴っても患者さんが眠れなくなってしまうので、遠隔でモニタリングしている看護師さんに通知がいくという仕組みです。

点滴のデータはWi-Fiでクラウドに保管されるので、世界中どこにいても確認できます。たとえば今、「ヘルシンキ大学病院の外科病棟101号室にいる患者さんの点滴が見たい」という場合にも、リアルタイムで把握できるんです。

開発のきっかけは点滴管理に対する医師の要望から

――Monidrop開発の理由は、看護師の人手不足だったのでしょうか。
 ケラネン:それもありますが、最初に医師の側から「もう少し点滴管理をしっかりしてほしい」という要望があったんです。さきほど言ったとおり、500ミリの製剤を2時間あるいは5時間かけて投入するという指示を出しても、結局バラつきが出てしまいます。指示どおり落ちているかというと、そうではない。そうすると、12時間で投入するはずが終わっていなかった、といった事態がやっぱり出てしまう。

 ケラネン:もう1つの理由がおっしゃるとおり、看護師さんがどうしても忙しいこと。点滴の管理ってものすごく時間がかかるんですよ。点滴は取り付けてから最初の10分は行ったり来たりします。クレンメで調節してもどうしても速度が変わってしまうので、看護師の皆さんは巡回で何度も回ってるんですよね。チューブがビニールですから、患者さんが動いたりして曲がったり止まったりするんです。最初は早い速度で落ちていてたのに、だんだん遅くなってきたりとか。

それで、たとえば30人の患者を担当していると病室を回るにしてもあちこち移動するので見るだけでも1時間かかってしまいます。その時間が、Monidropのデータを見ることによってカットできるというのがありますね。

フィンランドの病院って、縦に高いんじゃなくて横に広いんですよ。土地があるので(笑)。そうすると点滴の確認移動ですごく時間がかかってしまう。他にも重要な処置や業務がいっぱいあるのに、「点滴の管理だけで1日終わっちゃう」といった問題があって、なるべく効率的に進めたいということで開発されました。

 ケラネン:当初は輸液モニター単体でしたが、後からリモートで確認できるモニタリングシステムを追加しました。その後は、〇〇大学病院の〇〇病棟で導入したら、他の病棟も「何使ってるの」と興味を持って…という感じで、ほとんど口コミで広がっていきました。Monidor社の設立自体は2015年ですが、製品が完成したのは2020年なので比較的最近の話ですね。

日本では在宅・訪問介護の分野に注力予定

――それがすでに多言語展開されているんですね。アプリの表示も日本語になっています。
 ケラネン:元はもちろんフィンランド語なので、日本では泉工医科工業さんにすべてローカライズしていただきました。いろんな言語に展開していて、今日もルーマニアへ納品に行っているところです。日本では2023年4月から展開していますが、私たちもどこの病棟に提案したらよいのか、フォーカスの仕方になかなか苦労していました。それで最近分かってきたのが、在宅・訪問介護での需要です。

訪問介護でもやっぱり皆さん同じ悩みを抱えていて、点滴を取り付けてから3時間後に取りに行ったら終わってなかった、後でまた取りに行かないといけない、途中で回収しないといけない…そういう問題があるんです。Monidropを使うことによって、そういった問題が解決されるので、これからは在宅医療の方にフォーカスを置くことになるかと思います。

――少し再配達問題に似ていますね。日本は超高齢化社会だから需要もありそうです。
 ケラネン:だと思います。点滴を確認に行って「あ、終わってなかった…」「この後どうしよう」とガッカリするそうです。Monidropがあれば点滴が終わっているところを回ればよいので、1日のプランを自分で立てられます。ですが、日本での展開はまだこれから。恐らく、こういう製品があるということ、需要自体が知られていないんでしょうね。「そういう解決法があったんだ」「こういう製品があったんだ」ということをご存じじゃないと思います。製品の知名度を上げて、皆さんに使っていただきたいですね。

――今後、Monidrop以外のデバイスを開発・販売する予定などはありますか。
ケラネン:まだどんなものか言えないのですが(笑)、似たような感じでモニタリング製品の予定があります。

拠点は元NOKIA城下町にして北欧のシリコンバレー、オウル

2015年設立のヘルステック企業Monidorは、フィンランド北部最大の都市オウルを拠点とする。現在は「北欧のシリコンバレー」としてスタートアップエコシステムが形成されているオウルだが、かつては「NOKIA城下町」だった。ケラネンさんによるとMonidorの共同設立者兼CTOのVeli-Matti Puurunen氏はノキアの元開発者だ。確かに、Monidropのコンパクトでシンプルな輸液モニターは、NOKIAの携帯電話に通ずるものがある。

2023年11月には追加資金調達ラウンドを完了し、これまでの調達資金総額が56万4512ユーロに増加。また、フィンランド最大規模の専門医療プロバイダーであるHUSグループによって選ばれ、最大200万ユーロ相当の契約を勝ち取った。2024年4月にはルーマニアの病院からEU入札で選ばれ5つの病棟に納入している。

使いやすい革新的なソリューションで看護師の業務を支援し、患者の安全を強化することをミッションに掲げる同社。MonidropはISO13485およびFDAの医療基準を満たしており、日本での製造販売は泉工医科工業が行っている。

引用元:Monidor

(文・Techable編集部)

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