十種競技の37歳超人・右代啓祐が挑む“限界突破” 米国で前年ベスト超え7164点「不安もあったが…」
THE ANSWER / 2024年5月9日 10時3分
■五輪2大会出場、37歳の日本記録保持者が米大会で掴んだ手応え
37歳の男に限界はあるのか――。陸上十種競技の日本記録保持者で、五輪に2度出場した右代啓祐(国士舘クラブ)が、4月17日と18日に米国で行われた大会で昨年のシーズンベストを超える7164点をマークして14位に入った。この得点は36歳以上の日本人として最高記録となっており、今なお進化していることを証明。今年7月で38歳となる万能アスリートは、自身のパフォーマンスに手応えを感じている。
2011年以降、日本記録を3度も更新した第一人者は立ち止まらない。優勝者に「キング・オブ・アスリート」の称号が与えられる過酷な十種競技は、陸上競技に求められるあらゆる要素が詰まっており、原則として1日目に100メートル、走幅跳、砲丸投、走高跳、400メートルの5種目、2日目に110メートル障害、円盤投、棒高跳、やり投、1500メートルの5種目が実施される。短距離、中長距離、跳躍、投てきでは使う筋肉はもちろん、日々のトレーニング方法も異なるため、すべての種目でトップレベルを維持するのは困難を極める。
そんな十種競技に高校時代に魅せられた右代は、国士舘大学を経て11年にスズキに入社。そして同年6月、日本人として初の8000点超えとなる8073点を叩き出し、日本記録を更新した。翌年には、この種目で日本人選手として48年ぶりとなる五輪切符を獲得。26歳で出場した12年ロンドン大会では20位の成績を残した。
さらに14年4月の日本選抜陸上和歌山大会で8143点を記録し、2度目の日本記録更新。さらに6月の日本選手権では、現在の日本記録となる8308点をマークした。五輪には16年リオデジャネイロで2大会連続出場を果たすと、世界陸上にも通算5回出場、アジア大会では14年仁川と18年ジャカルタで金メダルを2度獲得するなど、長年にわたって第一線を走り続けている。
もちろん陸上競技は、特にフィジカルの状態が記録に大きな影響を与えるスポーツだ。加齢によって経験値が高まっても、筋力の衰えをすべてカバーするのは難しい。実際に右代も、29歳だった16年4月の日本選抜陸上和歌山大会で記録した8160点を最後に、その大台に到達できず、昨年のシーズンベストは7112点となっていた。
しかし、そうしたなかでも右代は前向きな姿勢を失わずに戦い続けている。4月17日と18日に米国で行われた大会「64th Annual Mt. SAC Relays Mens Decathlon Elite Standings」に出場すると、見事に前年超えとなる7164点を記録して14位となった。
36歳以上の日本人として最高記録を更新。この結果に右代は「2日間を通して、目標としていた得点には届きませんでしたが、たくさんのサポートや栄養指導も入っていたおかげで、集中を切らさず最後まで走り切ることができました。技術種目がどの程度形になるのか不安もありましたが、去年よりも良いパフォーマンスができたと感じることができ、冬のトレーニングで強化してきた成果が表れたことが実感できて、自分自身にとってすごくプラスになったと思います」と、現状のパフォーマンスへの手応えを明かしている。
「トップレベルの選手たちと一緒に試合ができる楽しさを再び感じることができたのは、良い経験となりました」とも語った不屈のアスリートの次なるターゲットは、6月22日と23日に岐阜メモリアルセンター長良川競技場で開催される日本選手権だ。過去8回優勝している同大会で、再び“前年超え”を果たせるか。「8000点台」再到達を目指す37歳は、十種競技に初めて魅了された当時と変わらぬ情熱で、自らの限界に挑戦し続けている。(THE ANSWER編集部)
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