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ビジネスケアラー"抱え込むな"介護と仕事は同じ 「家族と介護サービスのプロによるチーム戦」

東洋経済オンライン / 2023年12月11日 19時30分

ここまでの話を読んで「仕事と同じだな……」と感じた人がいたら、鋭いです。1人で仕事を抱え込んでいる人は、意外と成果が出せずに思い悩みます。

それに対して、周囲と上手に仕事を分け合って、チームとして成果を追い求める人は、大きな成果を出しやすいでしょう。経営学者トーマス・ダベンポートが明らかにしたとおり、大きな成果を出す人材というのは、優れた人脈を活用しているものなのです。

ある介護の研究を行う研究者によれば「介護とは、家族と介護サービスのプロによるチーム戦」とのことです。

ビジネスケアラーとして仕事と介護の両立に成功している15名のケースの追跡からわかったのは、優れたマネジャーは、仕事で培ったその能力を用いて、上手に介護の負担を分散していたというのです。

実際にこの研究者が観察したのは、次のようなことでした。

(1)介護者は、家族と介護サービスで構成されたチームのマネジャーであるという意識を持つこと。

現実に、日々のビジネスにおいて、マネジメント経験がある人のほうが「仕事と介護の両立」に成功している。逆に言えば、介護経験は、マネジメントのトレーニングにもなる。

(2)介護とはマネジメントであると理解し、介護に関わる「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を把握し、それぞれの資源を成長させること。

「ヒト」であれば、介護を支えるための新たな人脈を築き、それを効率的に維持・活用すること。「モノ」であれば、介護負担を軽減させる商品・サービスなどを活用すること。

「カネ」であれば、様々な介護の制度を理解して無駄な出費をおさえ、必要なサービスをよりうまく使うこと。そして「情報」は、介護全体を俯瞰して考えられるような良質なものにアクセスし、学ぶこと。

(3)企業のサポートが必要。企業が、働く介護者のニーズを把握すること。介護に関して相談できる職場の雰囲気を醸成していくこと。

ただし、ビジネスパーソンにとって、自分が介護役割を担っている現実はカミングアウトしにくいことを理解する必要がある。

デリケートな課題であり、ここに対応するには、介護の専門家としての旧来の介護相談窓口では不十分。仕事と介護の両立を支援できる、外部の両立支援アドバイザーなどが必要。

一人ひとりの積極的な働きかけが大切だ

(3)の企業のサポートについては、経産省のテコ入れによって、今後、良い変化が期待できます。これからは、従業員の介護支援(ビジネスケアラー支援)が、健康経営の評価指標になっていくことが決まったのです。人的資本経営の文脈でも、従業員の介護支援は、注目されています。

とはいえ、そうした介護支援が充実するのを、ただ待っているだけではいけません。あなた自身が、こうした企業のサポートを拡充するために、経営者や人事部と連携していくことも重要です。

何事もそうなのですが、ただ、誰かに助けてもらうのを待っているだけではダメで、自らが求める環境を構築するために、周囲に対して積極的に働きかけていくことが重要なのです。

人類史上かつてない高齢化が進む日本においては、誰もがいずれ、仕事と介護を両立するビジネスケアラーになっていくのです。あなたの積極的な働きかけによって、社会が良い方向に進化していくとするならば、あなたの苦労は、きっと報われると思います。

酒井 穣:株式会社リクシス 取締役副社長CSO

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