「退職した社員」の顔写真掲載は法律上許されるか? 企業のソーシャルメディア活用に潜む落とし穴
東洋経済オンライン / 2023年12月12日 10時30分
ソーシャルメディアの発達によって、誰でも自由に、かつ安価に情報発信が可能になった時代。企業の広報やマーケティングでも、当たり前にソーシャルメディアが使われるようになっている。
しかし、そこには落とし穴もある。個人情報保護や著作権、ステルスマーケティングなど、「やってはいけない」ことを行い、炎上したり、指弾されるケースが増えてきている。近著『デジタル時代の 情報発信のリスクと対策』を上梓し、企業の危機管理に詳しい北田明子氏が、いまビジネス現場で頻発している、ソーシャルメディア活用で法律違反となる事例を紹介する。
ソーシャルメディア活用に潜む落とし穴
外食チェーンで、アルバイト従業員が厨房のシンクに座り込んだり、冷蔵庫に体を入れたりした様子をSNSで公開して大炎上する。いわゆる「バイトテロ」が多発したことは記憶に新しいところです。
2023年1月には、回転ずしチェーン大手「スシロー」で、少年がしょうゆ差しの注ぎ口を舐めたり、レーン上のすしに唾液をつけたりする動画を拡散させ、問題になりました。
これらは、スマートフォンが急速に普及し、全国各地どこでも高速通信網が整ったことで、誰もがたやすく動画をソーシャルメディアに公開できるようになったために起こった出来事です。
情報発信によって目立ちたい。そんな悪意の薄い「少年の悪ふざけ」であっても、多額の賠償責任を負いかねないことが世に知られたことで、このような不祥事は減っていくでしょう。
しかし、問題はその先にあるのではないでしょうか。
つまり、ソーシャルメディアを広報やマーケティングに積極活用している企業もまた、情報発信のリスクを十分に理解しているわけではない。そのため、思いもよらぬトラブルに見舞われる企業が続出する恐れがある、ということです。
例えば、こういうことが起こり得ます。
企業が採用ホームページを使って人材の募集をするのは、企業の大小を問わず、広く行われている手法です。そこに現職の社員が顔写真入りで登場し、自分の職場の魅力について語る、というのも当たり前の手法になっています。写真のキャプションに本人の氏名、入社年、所属部署名などが明記されることも普通です。
ところが、ある会社では、情報が公開されてから間もなく、ホームページに登場した若手社員が退職する、という事態が起こりました。その社員は、「採用ホームページに掲載している私の写真とコメントを削除してほしい」と申し出てきたのです。
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