主要国の上場企業「減少時代」に日本で起きる変化 中小の退場ではなく大手の統合・再編が必要
東洋経済オンライン / 2023年12月12日 9時0分
そして株式市場の代替機能として、PE(プライベート・エクイティ)ファンドなど投資ファンドが急増したことも大きい。最も大きな変化を見せたはアメリカだ。
アメリカにおけるPEファンドは、1980年の24社から2016年には3000社へと飛躍的に増加、運用資産も10億ドルから8250億ドルとなった。アメリカでは、PEファンドに買収された企業が再上場する確率はわずか10%。それ以外の企業は、事業会社やPEファンドなどに売却される。つまり、こうしたサイクルが上場企業数を減少させているわけだ。
下図は、貿易と直接投資の推移だ。貿易の増加は通常、相手国への製造・営業拠点の設置などを通して直接投資を増加させる。しかし、90年代後半以降、この動きがデカップリング。アジア通貨危機の1990年代後半、リーマンショックの2000年代後半などが特徴的だ。現在では、貿易の多寡とは独立して、国境を跨いだ資本移動が活発に行われている。
こうしたグローバル資金は、PEファンドや機関投資家を巨大化させ、上場企業に対してガバナンスや収益力の改善を求める。これに各国の規制強化がシンクロする。そして巨大化した機関投資家は、流動性の高い企業を好む。一方、流動性の低い企業は株価が過少評価され、アクティビズムの標的になったり、事業会社や投資ファンドに買収されたりするのだ。
日本でもCGCをはじめとする上場企業に対する規制強化はすでに始まっている。また、国内系、外資系ともに投資ファンドの存在感も高まってきた。PEファンドによる投資案件数も2000年の25件から2020年には146件へと増加している。23年8月には経済産業省が「企業買収における行動指針」を発表し、被買収会社が同意していない場合の買収のガイドラインを示しており、M&Aは活発化するであろう。
こうした変化に伴って、日本にも「上場企業数の減少」という波が来る可能性は高い。ただし重要なことは、新興企業の上場を抑制せず、伝統的大企業の再編を促すことではないだろうか。単なる上場企業数減少の経済効果は限定的である。新興企業の上場規制を強化して、彼らへのリスクマネーの供給を減らすことはむしろ経済にマイナスだ。
下図を見ると、日本の上位10社の時価総額シェアが他国と比べて低いことが分かる。つまり再編や統合が必要なのは大手企業なのだ。いくら中小の上場企業を減らしても、こうした状況は変わらない。
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