EV電池原料リチウム、「供給過剰」で値崩れが加速 需要回復の見通し立たず、先物市場に売り圧力
東洋経済オンライン / 2023年12月21日 17時0分
中国の商品市場で、EV(電気自動車)向け車載電池の主要原料である炭酸リチウムの先物が売り込まれている。先物相場の急落に引きずられ、現物価格も値下がりが止まらない状況だ。
【写真】リチウム原料の需要の伸びが鈍化するなか、2024年の供給はさらなる増加が見込まれている。写真は中国の天斉鋰業が開発権益を持つオーストラリアのリチウム鉱山
炭酸リチウムの先物を取り扱う広州先物取引所では、12月5日、決済期限が2024年1月の先物取引の終値が1トン当たり9万3000元(約191万円)と、2日連続のストップ安で引けた。また、同日の現物価格は1トン当たり12万4000元(約255万円)と、2021年9月上旬以降の最安値となった。
先物価格は1トン200万円割れ
2023年初めの時点では、リチウムの現物価格は1トン当たり約50万元(約1029万円)の高値をつけていた。しかし車載電池の(供給過剰による)在庫急増を背景に、3月にかけて同約20万元(約412万円)に急落。その後は同約30万元(約618万円)まで値を戻し、年央までは横ばいが続いた。
ところが、7月21日に広州先物取引所が炭酸リチウム先物の取り扱いを始めたのをきっかけに、先物主導の新たな弱気相場が始まった。先物価格は9月に1トン当たり約17万元(約350万円)まで売り込まれ、10月は小幅に戻したものの、11月から再び急落。12月に入ってついに同10万元(約206万円)の大台を割り込んだ。
リチウム相場の下落に歯止めがかからない主因は、車載電池の需要の伸びを上回る供給過剰にある。
証券大手の中信建投証券の試算によれば、2024年のリチウム原料の供給量は炭酸リチウム換算(LCE)で41万トンに達するのに対し、需要は19万2500トンにとどまる見込みだ。この予想が的中すれば、供給と需要に20万トンを超えるギャップが生じることになる。
「2023年は蓄電システム向け電池の需要が急拡大したことが、(EV向けの需要拡大の鈍化を補う形で)年央までのリチウム相場の下支えになった。とはいえ、蓄電システム向けの市場規模はEV向けとは比べものにならないほど小さく、下支え効果は長続きしなかった」
財新記者の取材に応じた業界関係者は、2023年のリチウム相場の動きをそう総括した。
先行きは悲観ムード一色
「リチウム原料の需要回復の時期について、業界内では明確な見通しを立てられなくなっている。中国国内の自動車市場は、例年1~3月期はオフシーズンにあたる。海外市場でも(中国市場のような)EV普及率の急上昇は見られない」。前出の関係者は、そうため息をつく。
業界の悲観ムードに追い打ちをかけたのが、アメリカ政府が12月4日に発表した「懸念される外国の事業体」に関する規制案だ。同案は、中国資本が25%以上を出資する企業が生産した電池または電池部材を組み込んだEVについて、税額控除の対象から外す方針を示した。
中国のEVメーカーの進出が相次いでいるヨーロッパ市場でも、EU(欧州連合)の政策執行機関である欧州委員会が、中国製EVへの(中国政府の)補助金に関する調査を開始した。
こうした悪条件が重なり、業界関係者の間には(リチウム原料の)需要の本格回復は短期的には期待できないという見方が広がっている。
(財新記者:盧羽桐)
※原文の配信は12月5日
財新 Biz&Tech
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
バイデン政権、中国製EVの関税を4倍の100%に引き上げ…対中強硬姿勢アピールか
読売新聞 / 2024年5月14日 18時0分
-
中国電池CATL「減収でも増益」で光るコスト競争力 過当競争でも販売量稼ぎスケールメリット発揮
東洋経済オンライン / 2024年5月7日 19時30分
-
新車販売に占めるEVの割合、2035年には5割超―国際エネルギー機関
Record China / 2024年4月27日 14時0分
-
中国電池CATL、「超長寿命」の蓄電システムを開発 最大1万5000回の充放電可能、5年間は劣化なし
東洋経済オンライン / 2024年4月25日 8時20分
-
中国の鉄鋼業界が「供給過剰」に苦しむ背景事情 不動産不況で需要縮小も、粗鋼生産は逆に増加
東洋経済オンライン / 2024年4月23日 18時0分
ランキング
-
1有毒植物の“誤食”に要注意 死亡例も 農水省が注意喚起
オトナンサー / 2024年5月18日 20時10分
-
2煮物だけじゃない!スーパーフード並みの栄養価「切り干し大根」の意外な食べ方
週刊女性PRIME / 2024年5月18日 8時0分
-
3ヤマトHDを苦しめる「2024年問題」…大幅減益で株価も大幅下落(小林佳樹)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年5月18日 9時26分
-
4ワークマンの「機能的なサンダル」3選 2000円前後で買える、アウトドアでも活躍する優秀アイテム
Fav-Log by ITmedia / 2024年5月18日 9時55分
-
5「16時間断食のデメリット」無理なく克服する方法 脂肪のほかに「燃やされてしまうもの」を補う
東洋経済オンライン / 2024年5月18日 15時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください