怖かった街「立川」を変貌させた"大家"企業の正体 商業施設が続々開業、住みたい街にランクイン
東洋経済オンライン / 2024年3月27日 10時30分
「今でも敷地内に約160の建物を所有しています。長年の所有で減価償却も終えて利益率の高い企業でしたが、閉鎖的な一面もありました。敷地はコンクリートの塀で覆われ、地域との交流にも熱心ではない。地元の花火大会に少額の寄付をする程度でした」(村山社長)
そんな会社が“企業の塀”を取っ払い、地域活性化に乗り出すと商業施設も相次いで開業した。2015年、所有地に「ららぽーと立川立飛」(運営は三井不動産商業マネジメント)がオープンするとにぎわいも増し、有名ブランドが出店する流れができた。
筆者は2014年、開業直後のイケア立川を視察して記事にした。取材当時はそこまで未来予想図をイメージできなかったが、この10年で「点」が「線」や「面」として広がった。
村山社長は「一企業が出過ぎた感があるが」と話しつつ、「都市格」という言葉を用いる。
「地元で商売をしてきた私たちにとって、立川の都市格が上がる開発のお手伝いをしたい。『浮利(ふり=目先の利益や社会的に意味のない利益)は追わない』もモットーです」
こう話すが、街の魅力度が高まれば子育て世代の人気も出て、所有する土地の資産価値も上がるだろう。かつての立川とはすっかり様変わりした。
昭和時代は「米軍基地の街」だった
街としての負の歴史にも触れておきたい。
当時を知る人は、「立川は何となく怖い街だった」と話す。主な理由は米軍基地の存在だろう。立川飛行場の敷地が米軍に接収されて、「立川のシネマ通りには夜になると米兵が繰り出し、横須賀市の“どぶ板通り”のような雰囲気でした」(地元関係者)という声も聞いた。
時代の変化や運営側の努力で健全化されたが、立川競輪場の存在もあった。
「その昔は街のイメージを損ねるような雰囲気でした。裏通りには赤ペンを耳にはさんだオジサンたちが集まり、勝っても負けても赤ちょうちんで気勢を上げていたのです」(同)
かつての米軍「立川基地」跡地に建設され、1983年に開園した「国営昭和記念公園」は立川市と昭島市にまたがる大規模公園だ。これからの季節はソメイヨシノ(桜)やナノハナ(菜の花)やチューリップが訪れる人の目を楽しませる。昭和末期から立川のイメージも徐々に変わっていき、平成時代の1998年には多摩都市モノレールが開業した。
その昭和記念公園の横に2020年に誕生したのが、大型複合施設「グリーンスプリングス」だ。立川駅から徒歩8分程度、上空をモノレールが走るのを見ながら歩ける距離。店舗や飲食店のほか、オフィスや保育園、大規模ホールを備え、日常でも非日常でも利用できる。
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