史上初!韓国紙が日本人を東京特派員に据える理由 日本を正しく理解し、日韓共通の問題を解決したい
東洋経済オンライン / 2024年3月27日 17時0分
また大貫氏は、日韓夫婦の物語『帰らざる河ー海峡の画家イ・ジュンソプとその愛』(現在は『愛を描いたひと イ・ジュンソプと山本方子の百年』と改題出版)で小学館ノンフィクション大賞を受賞している。政治部記者としてのキャリアが長い。
なぜ日本人記者を採用したのか
日本の年配の世代から見れば、日韓がかつて植民地と被植民地との関係であったことから、韓国メディアは一昔前までは日本に対する不信感や疑念が根強く、「反日世論」形成の旗振り役となっていた印象があった。その韓国メディアが日韓関係改善に一役買う形となる日本人記者を採用する意義はどこにあるのか。
日韓は現在、少子高齢化や人口減、教育など数多くの共通の問題に直面している。このため、大貫氏によると、中央日報側も日本の問題が「韓国の明日の鏡」や参考になる話になると判断した。
さらに、こうした諸問題は韓国人記者の日本現地取材では限度があり、深掘りが難しいため、大貫氏の採用に踏み切ったという。さらに、韓国メディアの東京特派員は概ね約3年という短い期間で異動しているという事情もある。
日本を代表する朝鮮半島問題専門家で慶應義塾大学名誉教授の小此木政夫氏は、「韓国メディアが日本人を特派員として雇うのは初めてではないでしょうか。一報を聞いた時は驚きました。すごいことです。時代ですね」と感嘆した。
そして、中央日報の大貫氏採用の理由として、同紙の会社としてのカラーを挙げ、「中央日報には柔軟性がありますね。つねに日韓関係を真剣に考えている影響もあったのでしょう」と推察した。
元NHKソウル支局長で桜美林大学の塚本壮一教授は、中央日報の大貫氏採用には2つの大きな意味があると指摘した。
1つ目としては韓国側の対日意識の変化を挙げた。「日韓関係がかつての『日本が上、韓国が下』という垂直な関係から水平の関係になったとかねて指摘されているが、日本人記者が韓国メディアに入ることに中央日報の読者や一般市民がさほど反発しないだろうという見通しが中央日報にあるからにほかならず、韓国側がいかに日本を特別視しなくなったか、もっといえば意識しなくなったかを示しているのではないか」と指摘した。
日本の朝鮮半島取材も変化
そして、2つ目の意味としては、日本人ジャーナリストの韓国取材の変化を象徴している点を挙げた。塚本氏は「1980年代の韓国の民主化闘争の時代は事件取材が重要と見なされ、ソウルに駐在したのは必ずしも韓国語ができるわけではない社会部出身の記者が少なくなかった」という。
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