1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「団地再生」の成功事例を深掘りして見えたこと 子育て世帯の「入居続々」大阪・茶山台団地

東洋経済オンライン / 2024年4月8日 11時0分

取材当日は2月の3連休の日曜日だったが、スタッフの方々の手によってDIYされた居心地の良い空間で、子どもたちがお昼ご飯を食べていたり、ご高齢の方々がお茶をしていた光景がとても印象的だった。

いつでも大人の目がある安心感

「団地に住んでいると、入居者の人たちが子どもたちの様子を見守ってくれます。誰かの目があり安心できることもこの団地に入居する魅力の1つですね」と、ここの責任者で子どもを持つ女性は話していた。

このほか、介護や健康、子育てなどの相談やチェックなどができる「茶山台ほけんしつ」というスペースも設けられている。

昨年11月から運営されたもので、「ほけんしつだより」という独自リーフレット(月刊)は、雑誌編集の心得がある入居者が制作に携わっている本格的なものだ。

ちょうど5年前、この団地を取材したときは、今ほど地に足の着いた団地再生の姿を目にできようとは、正直なところ考えられなかった(『入居希望者が続々集まる「茶山台団地」のすごみ』)。

運営する大阪府住宅供給公社や行政などの支援があるから可能なことなのだろうと、いぶかしんでいたからである。

何か大きな変化があったのだろうか、と考え、思い当たったのが、この5年に起こった大きな出来事、コロナ禍だ。

たとえば「やまわけキッチン」では、コロナ禍を契機に団地に住む希望者にお弁当やお総菜を届け、それを通じて定期的な独居高齢者との交流を確保し、体調を確認するなどの取り組みを行ったという。

コロナ禍を経て強まったコミュニティー

コロナ禍は大きな社会的混乱、人と人とのつながりを分断するような出来事だったが、茶山台団地ではそれを乗り越え、より強固なコミュニティー形成につなげたのだろう。

茶山台団地には、団地再生を自分事としてとらえる入居者や地域の人々の努力がある。

そのうえで思うのだ。このようなコミュニティー形成による団地再生のかたちを全国津々浦々に広めようとするのは至難の業だろう、と。コミュニティー形成は人づくり、人の参加が不可欠であり、大変根気の要る事業だからだ。

また、茶山台団地における団地再生が一定の成果をあげているのは、一大人口集積地である大阪府にあり、かつ交通などの利便性があるという恵まれた地理的条件があることも忘れてはならない。

どんなに仕掛けを作り、コミュニティー形成に力を入れても再生が難しい団地や地域がある。それは大阪府住宅供給公社のほかの団地において、茶山台団地のノウハウを平行展開しきれておらず、それぞれで試行錯誤的な再生チャレンジを行っていることからもうかがえる。

それぞれが置かれる状況や課題がそれぞれに異なるため、団地や地域の再生は大変難しいケースが多い。とはいえ、この困難を極めた5年間を乗り越えた茶山台団地の経験と成功事例は大変貴重であり、より多くの方々に知ってもらいたい。

田中 直輝:住生活ジャーナリスト

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください