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「君たちはどう生きるか」中国で特大ヒットの裏側 日本と宣伝手法一変、「宮崎駿最後の作品」強調

東洋経済オンライン / 2024年4月9日 14時30分

伸び悩んでいる最大の理由は内容の難解さだと言われている。にもかかわらず中国では、公開後5日間の興行収入で、あれだけ話題になったスラムダンクをも上回っている。何が中国人をそれほど引き付けているのだろうか。

まず挙げられるのは、宮崎監督とスタジオジブリ作品の圧倒的なブランド力だろう。

近年は中国の映画市場の大きさが認識され、日本のアニメ映画の多くが続々と輸出されるようになった。『君の名は。』『天気の子』『すずめの戸締まり』を手掛けた新海誠監督は新作公開前に毎回中国を訪れてファンと交流するなど、中国での宣伝に力を入れている。

一方、10年ほど前までは中国国内における外国映画上映本数の制限が厳しく、ジブリの映画はほとんど公開されなかった。中国で最初に上映されたジブリ作品は日本より4年遅れの1990年に上陸した『天空の城ラピュタ』だ。『となりのトトロ』は日本公開から30年後の2018年、『千と千尋の神隠し』は18年後の2019年に正式上映がかなった。

正規のルートでは上陸できなかったが、中国人の多くは2000年代からネットや海賊版を通じてジブリ作品に触れるようになり、宮崎監督のことをアニメ映画の礎を築いた第一人者と認知している。

新海監督のファン層は10代後半から20代のZ世代が中心だが、活動期間の長い宮崎監督はより広い世代に支持されている。

日本と異なる宣伝戦略も、『君たちはどう生きるか』の初速と評価に大きく関係している。

同作品は日本ではストーリーや出演者などの情報が公開までほぼ明かされず、宣伝もされなかった。映画館に足を運ばないと何もわからない異例の手法がかえってファンの興味を引き、出足こそ好調だったが、映画を見た人たちの多くが「難しい」「暗喩が多い」と戸惑った。過去の作品の足跡をちりばめながら、宮崎監督の人生観が色濃く反映されたストーリーは賛否両論だった。

中国ではアリババグループの映画事業会社アリババ・ピクチャーズ・グループら2社が中国での配給やプロモーションを担当し、しっかりとプロモーションを行った。

3月28日に上海で開かれた先行上映会にはジブリの鈴木敏夫プロデューサーと中国版の声優が登壇、鈴木氏は作品の主人公とアオサギが宮崎監督と自身のモデルだと明かし、会場を盛り上げた。

中国最大の映画レビューサイト豆瓣(douban)で『君たちはどう生きるか』は20万近いレビューがついており、平均スコアは10点満点の7.7と、ほかのジブリ作品に比べると明らかに低い。5つ星評価で3以下の低レビューの多くは中国で上映が始まる前に投稿されており、こちらは日本人同様に戸惑いが見られる。

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