ロシアに無知だったEUはソ連のように自壊する ロシアを民主主義の反面教師としてきた欧州のツケ
東洋経済オンライン / 2024年4月11日 8時0分
2024年になってウクライナの敗北が確かなものになり、ロシアの軍事力の強さが明らかになるにつれ、ロシア脅威論が再出現した。そして次第にそれは「ロシアへの恐怖」という形に変わりつつある。
それまでNATOの主役だったアメリカやイギリスが、ウクライナ戦争の後方に退き、フランスがウクライナ支援の矢面に立ちつつある。フランスはすでにオデッサ(オデーサ)や、前線に兵士を送り戦争への参加を決めているともいわれる。
歴史を振り返ると、1814年4月、ナポレオンを追ってロシア軍がパリに出現したとき、それまで漠然とあったにすぎないロシア脅威論が一気に現実のものへと変わった。フランスやドイツに残る「野蛮なコサック人」という話は、このときのロシア兵の傍若無人ぶりを表現する伝説的な話でもある。
これは、ときにはタタール人、そして13世紀にヨーロッパへ侵攻したモンゴル人の脅威へと組み替えられ、やがてアジア人という黄色人種への脅威、黄禍論へと変貌していく。
1812年のナポレオン侵攻当時、「ロシア人は最初から侵略的民族だ」とする内容の『ピョートル大帝の遺書』という書物が出され、後にこれは偽書であることが判明した。(『ピョートル大帝の遺書』については、2023年5月10日「ウクライナ戦争の停戦を邪魔する西欧のロシア観」を参照)
しかしこの偽書の内容が真実味を持ったのも、欧州がロシアに対して上記のような見方をしていたことが背景にあったためだ。しかし、ロシア軍がフランスになだれ込む原因をつくったのはフランス・ナポレオンのロシアへの侵略(フランスから見れば解放なのだが)だったことは、この話から完全に忘れられている。
ロシアから見れば、侵略的民族はフランス人、そして第2次世界大戦で攻めてきたドイツ人のほうであり、ロシア人ではないのだ。
皮肉な話だが、ヨーロッパとりわけ西欧が、西欧というアイデンティティーを持ち得たのは、このロシア脅威論があったからだともいえる。
ヨーロッパのロシアへの脅威は、自由と民主主義のヨーロッパという一種の信念によって、野蛮な民族から民主主義と人権という西欧がもたらした普遍的文明を守るという、ヨーロッパ人の自負とあいまって、ヨーロッパ中心主義を形成した。それがヨーロッパは統合すべきというEU(欧州連合)を生み出す力になったともいえるのである。
「西欧の統一」とロシアの脅威
ロシアの脅威がツァー体制として存在していた19世紀、共産主義のソ連として存在していた20世紀、それに対抗する西欧の統一というアイデンティティーは、あえて問う必要もないほど、確かなものに見えた。
この記事に関連するニュース
-
戦争を始めた世界のエリートは自国民を守らない ミアシャイマー『大国政治の悲劇』が示す国家の自己保存
東洋経済オンライン / 2024年5月19日 8時0分
-
19世紀、破竹の勢いで戦争に勝ち続けていたフランス皇帝・ナポレオンが「まさかの敗北」を喫したワケ【世界史】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月18日 18時0分
-
「もしトラ」へ備え?習近平氏「5年ぶり訪欧」の思惑 なぜフランス、セルビア、ハンガリーだったのか
東洋経済オンライン / 2024年5月10日 10時0分
-
習近平主席がヨーロッパ3国を訪問~東欧に映るウクライナ戦争への思惑
RKB毎日放送 / 2024年5月9日 14時57分
-
武力行使を伴わない外交はロシアに通用しない…プーチンの侵略を止めるために西側諸国がやるべきこと
プレジデントオンライン / 2024年5月5日 10時15分
ランキング
-
1内閣支持率低迷26%、自民党の規正法改正対応「評価せず」79%…読売世論調査
読売新聞 / 2024年5月19日 22時0分
-
2「顔も腫れあがり、髪の毛もむしり取られていた」妹が殺され償いを求めた遺族 加害者へ賠償求めても全額払われず 相手の口座に残っていたのはたった"931円"「憎みたくなくても憎んでしまう...今の制度では」
MBSニュース / 2024年5月19日 19時40分
-
3上野飲食店経営者夫婦殺害、背景に首謀者への畏怖か 遺体処理から殺人も「断り切れない」
産経ニュース / 2024年5月19日 19時20分
-
4IBXエアラインズが福岡空港着陸前に機材トラブル 滑走路一時閉鎖の影響でセブパシフィック航空が北九州空港にダイバート
RKB毎日放送 / 2024年5月19日 20時25分
-
5Amazonレビューは大荒れ、SNSでは卑怯者扱い…“アニメの感想ツイート”が炎上した「大学教授のその後」
文春オンライン / 2024年5月19日 17時0分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください