男性との収入格差が縮まらない女性の不当な現実 改善しているように見えても実態は違った
東洋経済オンライン / 2024年4月18日 16時0分
子どもが一人だけの場合、長子と末子は同じ子どもである。SSM調査では、結婚したときの年齢と子どもの年齢、そしてこれまでに就いたことのある職業のすべてについて仕事の内容と就いていた期間を尋ねているため、このような集計ができるのである。そして時代による変化をみるため、女性たちを出生年ごとに5つのグループに分け、それぞれについてグラフを示しておいた。
たしかに働く女性の比率は増えている。1975―84年生まれの女性たちの結婚2年前の就業率は87.9%で、1935―44年生まれの女性たち(78.3%)より10%近くも高くなっている。しかし就業率は、結婚1年後には49.0%にまで急落してしまう。
1935―44年生まれの38.2%に比べれば高いといえるが、それでも5割を切っている。そして長子出産1年後になると、就業率は33.6%にまで低下する。この比率は1935―44年生まれの35.3%より低く、比率がもっとも低かった1955―64年生まれの28.7%と比べても大差がない。大半の女性たちが、出産時までに仕事を辞めていることがわかる。
男女間の格差が縮まらない原因
このように、就業率を年齢別にみるのではなく、結婚・出産の時点を基準にしてみれば、日本の女性たちが依然として、結婚・出産の時期に就業を継続するのが難しい状況に置かれていることがわかる。
国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」の結果をみると、2010年以降に出産した女性では育児休業制度を利用して就業継続する人が増えているようだが、それでも妊娠前から無職の女性が2割前後、出産退職した女性が3割前後いて、まだまだ就業継続が容易でないことは明らかである。
就業継続が難しいから、あいかわらず多くの女性たちが、結婚・出産を機に退職し、子育てが一段落したあとで再就職しているのである。しかし再就職の場合、正規雇用の職に就くことは難しいから、多くの女性たちは低賃金の非正規労働者となる。これでは働く女性の比率が高くなっても、男女間の格差は大きくは縮小しない。
橋本 健二:早稲田大学人間科学学術院教授
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