大日本印刷にマネックス系ファンドが株主提案 経営学者、楠木建氏の社外取選任で経営改善狙う
東洋経済オンライン / 2024年4月18日 17時30分
印刷大手の大日本印刷(DNP)が、6月に予定する定時株主総会に向けて社外取締役選任の株主提案を受けている。提案したのは「マネックス・アクティビスト・マザーファンド」に投資助言を行うマネックスグループ傘下のカタリスト投資顧問。同社が提案内容を4月18日に明らかにした。
【写真】3代にわたる世襲企業のDNP。2018年5月の社長交代は39年ぶりだった
正式受理なら定時株主総会で賛否
プレスリリースなどによると、提案内容は一橋ビジネススクールの教授、楠木建氏を社外取締役に選任することだ。今後DNP側が正式に受理すれば、定時株主総会ですべての株主に対して賛否が問われることとなる。
株主提案を出したカタリスト投資顧問は、ネット証券大手のマネックス証券を創業した松本大氏が中心となって2019年に立ち上げた。以来、経営者とのエンゲージメントを通じた経営改善をうたっている。
2021年にはベンチャーキャピタル大手のジャフコグループに働きかけ、同社が保有していた野村総合研究所株の売却につなげた。この時にはジャフコの社長が「今後も建設的な対話を期待しています」という異例のコメントを発表するなど、松本氏の個人的なつながりも生かした水面下のやりとりが得意技だ。
その後も複数の案件でTOB(株式公開買い付け)価格に対するコメントなどを発表してきたが、株主提案や法的措置など具体的なアクションは見送ってきた。批判合戦もいとわない香港のオアシス・マネジメントや旧村上系ファンドとは異なり、穏健派のアクティビストファンドとみられている。
DNPは3代にわたる世襲企業
だが、直近の動きは様相が異なる。
3月には衣料品大手のしまむらに株主還元方針の変更を提案した。DNPについては「印刷やパッケージを中心とした成熟産業においては収益性が低く、構造改革が必要な状況」(リリース)と指摘。提案内容も資本効率を高めるための増配や自己株買いではなく、社外取締役の選任まで踏み込んだ。
一般的にモノ言う株主が社外取締役の選任を要求する背景には、現経営陣に対する強い不信感がある。東芝やオリンパスが典型例だが、ファンド側が経営体質改善のために経営陣を監視する目的で自らの腹心を送り込むケースが多い。
今回提案されている楠木氏とマネックスの間には「一切の利害関係はない」(リリース)という。だが、楠木氏はマネックスが開いたフォーラムで基調講演を行うなど、一定の意思疎通があるのは間違いない。
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