「芸術の国」イタリアが進める鉄道保存の本気度 400両超保有の「財団」、自前の工場で徹底整備
東洋経済オンライン / 2024年4月20日 6時30分
財団の工場内部を取材
ラ・スペツィアはイタリア北西部、リグーリア州の東部に位置する人口約9万人の港町で、首都ローマとジェノヴァを結ぶ幹線上に位置する。ラ・スペツィア工場は1926年に建設され、当時はまだ三相交流方式という特殊な電化方式を採用していたイタリア国鉄の電気機関車を整備する工場として使用された。
2014年にイタリア鉄道財団へ譲渡され、以降は主に財団の保有する電気機関車の定期点検やオーバーホールのほか、動かない状態で保管されていた車両の修復作業なども請け負っている。
工場建屋内へ入ると、戦前製の古い機関車がずらりと並んでいる。
財団の保有する車両は、1:動態保存(本線走行可能) 2:動態保存(本線走行不可) 3:静態保存 の3種類に大別される。
1は動く状態に完全復元され、信号などの保安装置も現在の最新システムに換装し、イベント時に本線上を走行させることが可能な車両だ。2は、電気装置などはすべて稼働状態となっていて、パンタグラフを上げて電気を通せば動かすことができるが、保安装置が現代の基準に合致しないため、構内など閉鎖された場所でのデモ走行に限られる。日本で言えば「碓氷峠鉄道文化むら」(群馬県)に保存されているEF63形電気機関車のようなものだ。3は文字通り、動力や制御装置が稼働できない状態で、博物館などで保存・展示させるための車両だ。
工場建屋の中に1両、ピカピカに磨き上げられた電気機関車がいる。E424型249号機といい、第二次大戦直後の1946年に製造された4動軸の機関車だ。主にローカル線で旅客・貨物列車の両方に使えるよう設計され、荷物や郵便を運べるように車体中央にはシャッター付きの荷室が設けられたユニークな機関車だ。
後年、近郊列車をプッシュプル運転する目的で、推進運転制御装置を搭載し、色を当時の最新塗装へ変更して使用されたが、その改造の際に元番号+200へと改番されている。つまり、オリジナルの状態ではE424型049号機だった。
見えない部分も解体して徹底修復
現場で案内をしてくれた技師いわく、この車両は動かせる状態にあるが、信号装置が古い状態のままで、かつパンタグラフは現在本線上での使用を認められてない古いタイプ(FS Tipo42)を搭載しているため、本線走行はできないという(前述「2」に該当)。
ただ、現場のこだわりで車体表記は元の番号である049号機へ塗り替えており(製造銘板などは249号機のまま)、前面の目立つ位置に取り付けられていた制御回路引き通し線も撤去し、オリジナルの古いパンタグラフとともに美しい状態で保存できている、と技師は胸を張っていた。動かすことはできるので、工場内のイベントなどでは、今後も元気な様子を見ることができるだろう。
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