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高齢者の交通事故、増加の要因は「認知症」ではない 「脳ドックデータ」で判明した大きな事実誤認

東洋経済オンライン / 2024年4月30日 18時0分

そして、白質病変内の毛細血管や神経線維は可塑性が高い組織なので、後から運動などで脳を刺激した場合には神経ネットワークの破綻が軽減する可能性があり、白質病変と安全運転能力低下の関係性はまだ不確定なことがあります。最近の知見では、白質病変のみならず脳萎縮も考慮すべきだと考えています(Front. in Aging Neurosci, 2022)。

脳萎縮と白質病変の増加を抑えるためにすべきこと

脳萎縮や白質病変発生の有無は、脳ドックを受診し、頭部MRIを撮ることによってわかります。年齢が同じでも個人差が大きいのが特徴ゆえに、定期的な受診が推奨されます。しかし、お住まいの地域にある脳ドックを受けるにしても、気軽に「じゃあ明日行ってこよう」というわけにはいかないでしょう。

そこで私が提案するのが、脳萎縮や白質病変が発生している可能性を示唆する兆候や傾向を探り、その対策を立てるという方法です。できれば脳ドックを受けていただきたいのですが、受けなくても、脳が萎縮していたり、白質病変ができていたりする公算が大きいということは、ある程度予測できます。

血圧が高い人、大酒飲みの人、タバコを吸う習慣のある人は脳萎縮と白質病変の両方に関係し、過度のストレスを抱えている人は脳萎縮に強く関係すると考えています。

通常、私が主宰する脳ドック施設のデータでは、男性は1年で2ml、女性は1mlの割合で脳萎縮が進行するのですが、飲酒・喫煙習慣のある人はそれが約5mlに、仕事や人間関係などにストレスを感じている人は約10mlに増加するのです。

栄養バランスの取れた食事と規則正しい生活が大切

さらに、運動不足や睡眠不足、不規則かつ栄養バランスの偏った食事、糖尿病をはじめとする生活習慣病が脳萎縮に影響することも、付け加えておかねばならないでしょう。

また最近では、フレイルと脳萎縮・白質病変が密接に関係しているのではないかということが指摘されています。脳萎縮が進み、白質病変が継続的に増加すると、高次脳機能の衰退・低下、やる気・粘り・意欲の枯渇などをまねき、それがフレイルに結びついていくとする考え方です。

欧米の追跡調査では、白質病変とフレイルの関係が多く報告されていますので、フレイルと診断されたら、白質病変が増えている可能性を疑ったほうがいいでしょう。

高齢になっても、長く安全運転を続けたいのであれば、脳萎縮や白質病変の増加を抑えることが求められます。そのためにも、お酒やタバコを極力減らし、栄養バランスの取れた食事をとり、適度に運動して良質な睡眠をとるなど、生活習慣を見直して健康的な日々を送ることを心がけましょう。

朴 啓彰:医師

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