曙さん「酒席を共にしなかった」若貴兄弟への思い「飲まなくて芽生えた感情、大好きだからシバキ合えた」
よろず~ニュース / 2024年4月14日 11時20分
2000年9月、若乃花引退相撲で土俵で勢揃いした(左から)曙、若乃花、貴乃花
大相撲で外国出身初の横綱となった曙太郎さん(享年54)が4月上旬に心不全のため死去した。1990年代、国民的ヒーローとなった若乃花と貴乃花という2人の兄弟横綱に立ちはだかったヒール(敵役)的存在として空前の大相撲ブームを盛り上げた曙さん。88年春場所初土俵の同期である若貴兄弟とは「一度も酒席を共にしたことがなかった」からこそ「芽生えた感情」があったという。2011年にデイリースポーツ紙面で連載した「第64代横綱の真実 曙道」取材の中で本人が明かした思いを再現する。
曙さんはヒールであることを受け入れていた。「若貴ファンだけでなく、一般のファンの中にも『日本の国技がハワイのヤツらに取られてたまるか』と思う人が少なくなかったと思う。でも、俺はね、それを結構、楽しんでたんですよ。土俵で〝ブーイング〟を浴びる快感があったですね。俺、よく(東関部屋の)若い衆に言ってました。『若貴ばっかり人気だけど、それが嫌だったら、勝てばいいだろ』って」
東関部屋の屋台骨を背負った曙さんは孤軍奮闘した。「僕のライバルは若貴兄弟だけでなく、二子山部屋勢だったわけですよ。曙vs藤島部屋、曙vs(93年合併後の)二子山部屋。終盤戦で若貴とやるまでに、実力者の(元大関)貴ノ浪さん、(元関脇)貴闘力さんや安芸乃島さんらを倒さなきゃいけない。そこでつまずくと、もう若貴には届かない。さらに、武蔵川部屋も出てきた。横綱の武蔵丸さん、大関は武双山さん、出島さん、雅山さんと3人いて、全員と当たるんだから」
大相撲で同部屋の力士は本割(本場所での正規の取組)での対戦はない。実力者と総当たりして歴代10位となる通算11回の幕内最高優勝を遂げた曙さんの実績は数字以上に評価されていい。打倒・二子山部屋の執念をむき出した象徴的な場所は94年春場所。横綱曙は千秋楽結びの一番で大関・貴ノ花を破り、12勝3敗で3人が並んだ優勝決定巴(ともえ)戦で大関・貴ノ浪、苦手とした平幕(前頭12枚目)の貴闘力に連勝して7度目の優勝。1日で二子山勢を3連破して意地を見せた。
そんな勝負師もプライベートでは陽気なハワイアン。仲間と飲食する機会を好んだ。「僕はこういうタイプだから、よく同期と飲み会を開いたりしていた。巡業でも必ず1回は、同期会みたいな『曙会』をやってました。その席には(元大関)魁皇さん、(元小結)和歌乃山さんら同期がいたわけだけど、みんな、若貴さんにも来て欲しいわけですよ。でも、結局、お二人が来ることはなかったです」
ストイックでアスリート志向の若貴兄弟に対し、曙さんは「あの人たち、『自分の部屋の壁だけ見てて何が楽しいのか』って思いました。ほんと、自分のことを殺してるなと感じた」という。だが、それはそれとして、相手のスタイルを尊重した。若乃花は2歳下(日本式の学年では1年下)、貴乃花は3歳下だが、敬語を使った。「僕より年下ですけど〝さん〟付けしました。一緒に遊ぶなんてことは全くなかったですけど、俺は仲いいつもりだった。2人がどう思ってたか分からないけど、俺は大好きだった」
引退後にハワイでのテレビ収録時に元若乃花の花田虎上さんから当時の思いを伝えられたという。
「若乃花さんから『本当は(飲み会に)行きたかった』って初めて聞いた。同期の仲間が勝負を離れて楽しく飲んでいるのが『うらやましかった』と。でも、彼は『行かなかったことによって、あれだけ、いい相撲を取れた』って言ったんですよね。『一緒に飲みに行って、感情が芽生えたりすると、あれだけのいい勝負はできなかった』って。その話を初めて聞いて、『彼らは勝負に徹したんだな』と。その気持ちがよく分かった」
(優勝決定戦を除く)対戦成績は若乃花とは18勝17敗、貴乃花とは21勝21敗と互角。93年名古屋場所では、3人が13勝2敗で並び、優勝決定巴戦で若貴を連破してV4を達成した日も忘れられないという。
「大好きだからシバキ合えた。好きじゃなかったら、何の感情も芽生えないんだよな。一緒に飲まなくても、彼らとの間に感情は芽生えてたんですよ」
そう語っていた曙さん。逝去後、一時代を築いた〝若貴兄弟〟から思いのこもったメッセージが届けられた。
(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
【伝説の8番】若三杉が初V「優勝の瞬間、マス席のおふくろを見てしまった」千秋楽で魁傑を寄り切る…1977年夏場所
スポーツ報知 / 2024年5月13日 4時0分
-
曙さんの「横綱ブランド」ホワイトハウス土俵入りとハリウッド映画は幻も、長野五輪で「人生は映画」実感
よろず~ニュース / 2024年5月12日 11時0分
-
大相撲を飛び出した“流浪の格闘人生”史上初の外国人横綱54歳で急逝…曙vs若貴秘話
日刊大衆 / 2024年5月8日 18時0分
-
「ハワイには〝地獄〟もある」後輩力士が非業の死…楽園の「影」語った曙さん 角界で心の支えは故郷の絆
よろず~ニュース / 2024年4月26日 15時0分
-
「教わったことをすぐ覚えちゃうのがすごいネ」師匠の元関脇高見山が驚いた曙の本当の強さ
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年4月25日 9時26分
ランキング
-
1レーバークーゼンが歴史的快挙!ドイツ1部史上初シーズン無敗優勝達成 クラブ初の“欧州3冠”へ弾み
スポニチアネックス / 2024年5月19日 0時28分
-
2宮田笙子、NHK杯13年ぶり3連覇で初五輪切符 岸里奈、岡村真、中村遥香が五輪代表決定
スポーツ報知 / 2024年5月18日 16時12分
-
3巨人・坂本勇人「いい感じで打てました」 “ミスター超え”187度目猛打賞
スポニチアネックス / 2024年5月18日 19時32分
-
4「やっぱ持ってる」大谷翔平、“記念日”に自ら祝砲!「日本も早くしないとな。アメリカに先越されとるで」
スポーツ報知 / 2024年5月18日 13時56分
-
51014億円男・大谷翔平が生んだ“今季最高”の光景 米国でも話題沸騰「大金が支払われた理由」
THE ANSWER / 2024年5月18日 19時33分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください