特集2017年2月16日更新

人はなぜ嘘をつく?世界を騒がす「嘘ニュース」

このネット社会、デマやデタラメないわゆる「嘘ニュース」(フェイク・ニュースとも)は珍しくありません。この嘘ニュースが最近になって大きくクローズアップされています。先の米国大統領選では、この嘘ニュースが結果を左右したとまで言われるほどでした。嘘ニュースがどのように拡散し、どんな影響があったのか?なぜ嘘ニュースを流すのか?探ってみました。

大手メディアが「ヒラリー氏の敗因は嘘ニュース」と主張

ワシントン・ポストなどの大手メディアは、ヒラリーの敗因は今日のネットメディアがもたらしたものであると最近になって主張している。TwitterやFacebookなどのSNS、そして特に一部のニュースサイトが発信している“フェイクニュース”によってヒラリーが敗北したのだと、元凶となるニュースサイトを非難しているのだ。

Facebookなどに大量の「嘘ニュース」が出回る

「テロリストがヒラリーの政治活動資金の20%を援助」、「オバマ、不法移民にも投票を呼びかけ」など、目を疑うようなニュースがネット上で多く拡散されている。このどちらも、何の根拠もない虚偽のニュースだが、前者はFacebookで63万回以上もシェアされた。「オノヨーコ、70年代にヒラリーと不倫していたと告白」というニュース記事は、虚偽のニュースサイトで日付もない状態で掲載されたが広く拡散された。日本語にも訳されて紹介されていたので、目にした人もいるかもしれない。

「ローマ法王がトランプ氏を支持」「「クリントンはレズビアン氏」などの嘘ニュース

<ネットやSNSで流れる「偽ニュース」が大統領選の結果を歪めたという議論が噴出。グーグルやフェイスブックは、偽ニュースの規制に乗り出したが、本当に偽ニュースが影響したのかという疑問は残る>
「ローマ法王が大統領選でトランプを支持!」「クリントンはレズビアンで、闇の小児性愛ネットワークの元締め」――これらはもちろん真っ赤なウソだ。だが、今回のアメリカ大統領選では、こうした偽ニュースやデマがネットを通じて大量に拡散された。

「嘘ニュース」の影響力

上記の画像は、米大統領選のラスト3カ月で嘘ニュースが実際に起きたことを伝えるニュースより拡散されてたというグラフです。これらは、別ものに見えて同じ所有者による無数のサイトを、(おそらく同一人物・組織)によるサイトやSNSが拡散していった…という現象によるものだったようです。

中でも影響が大きかったのが、クリントンが重病というニュースで、これを真っ先に広めたのもロシアでした。あとでThe Daily Beastが嘘報道だと伝えましたが、もうその頃には「焼け石に水」でした。以下のデータを見てください。差は歴然です!

・嘘を暴く記事: Facebookアカウント1,700件、閲覧3万回
・ロシアの嘘記事: Facebookアカウント90,000件、閲覧800万回超

この数カ月で大反響を呼んだ嘘記事の多くはロシア発でした。

で、このロシアのニュース拡散で一番重要な役割を果たすのが、騙されているとも知らずに広める一般国民です。いわゆる「使えるマヌケ(useful idiots)」。米政府の言ってることが本当なら、Wikileaksのジュリアン・アサンジもロシアにとっては「使えるマヌケ」ということになります。

嘘ニュースを信じた男による襲撃事件も

「ヒラリー・クリントン氏が児童の人身売買を行っている」という嘘ニュースを信じた男が、その現場とされるピザ屋を自動小銃で襲撃、発砲するという事件も起こりました。

報道によれば、ノースカロライナ州に住むエドガー・ウェルチ容疑者(28)が4日の午後3時頃、家族連れで賑わっていたワシントンのピザ店「コメット・ピンポン」にライフル銃を持って押し入り、警察に逮捕された。銃は他にも2丁所持しており(1丁は車の中)、ニューヨーク・タイムズによれば、少なくとも1度、店内で発砲している。
ウェルチ容疑者は警察の調べに対し、ネットで広まっていた「ピザゲート」を自ら確かめるつもりだったと供述。幸いにも負傷者は出なかったが、偽ニュースが銃撃事件にまで発展したと、大きく報じられている。

その経緯は、上記の記事及び下記のリンクに詳しく書かれています。Wikileaksにリークされたクリントン陣営のメールを見たアメリカ版2ちゃんねる「4chan」が発端となり、そこで「誰かが」言い出した噂がTwitterやネットニュースサイトRedditにより拡散。Facebookによってさらに拡散され・・・それを真に受けた男が…といった流れのようです。

トランプ大統領はメディア批判

ドナルド・トランプ次期大統領は1月11日午前11時過ぎ(日本時間12日午前1時過ぎ)、NYで米大統領選後初となる会見を開いた。
その中でトランプ氏は冒頭、自身に対するマスコミの報道を強く批判。「正確な報道がなされなかったため、記者会見を開かなかった。偽のニュースを広まるのを止めようとしてくれたメディアもある」と語った。

「ロシアがトランプ支援」にトランプ氏「嘘ニュースだ!」

トランプがロシアから直接支援されていたことを示す文書の存在をCNNが報道し、さらにBuzzFeedがその内容を全文公開しました。ただしこの文書、本当に真実が書かれているのかどうかは検証されていませんし、検証できそうもないので、以下、眉ツバしながらご覧ください。

この文書はいくつかのメモを集めて合計35ページになるもので、日付は2016年6月から12月まで半年ほどにわたっています。元イギリスの諜報員が、ドナルド・トランプの政敵向けに作ったもの、と言われているそうです。

トランプ氏はTwitterで「嘘ニュースだ、これは政治的魔女狩りだ!」とツイートしています。

嘘ニュースで儲けるマケドニアの若者たち

米大統領選以来、急激に注目を集めているのがドナルド・トランプ氏をターゲットにした偽ニュースサイトだ。米ニュースサイト「バズフィード」によって確認されただけでも、トランプ氏に関するデタラメな情報を流しているサイトは100以上存在するという。
「おや?」と思うのはここからだ。これらのサイトすべてが、東欧州のバルカン半島に位置するマケドニア共和国の一都市、ヴェレスで運営されている。人口わずか4万5000人という小都市にも関わらず、過去1年間で立ちあげられた政治サイトは140を超える。

日本でも逮捕者が出た「嘘ニュース」

「地震でライオンが逃げた」

こうした嘘ニュースは、当然ながら日本でも例外ではありません。日常でもSNSを中心にガセネタはあふれています。
特に震災など災害の際にこうした嘘ニュースが出回ることが多く、熊本地震の時に「遊園地からライオンが逃げた」などとTwitterで嘘をついた男性がのちに逮捕されるという事件も起きています。

熊本地震が発生した直後に、「動物園のライオンが逃げた」などとウソの内容をツイッターに投稿し、動物園の業務を妨害したとして、神奈川県に住む20歳の男性が7月20日、偽計業務妨害の疑いで逮捕された。

報道によると、男性は4月14日の熊本地震の発生直後に、「地震のせいで、うちの近くの動物園からライオンが放たれたんだが」などとウソの内容をツイッターに投稿し、熊本市動植物園の業務を妨害した疑いがもたれている。

「小6女児を妊娠させた」

こちらは、小6女児を妊娠させたという教師のニュース。内容も、掲示板に貼られていたリンクも全てがデタラメのものでしたが、問い合わせが殺到したため、書き込んだ男性会社員が「北九州市教育委員会に対する業務妨害」の容疑で書類送検されました。

そしてこのニュースが発端で小倉北署が任意送致していたことが「西日本ニュース」によって明らかになりました。

つまり、虚構ニュースを投稿し偽計業務妨害などの罪に問われたようだ。どうやらこのニュースに多くの意見が問いあわせられ、警察が動いた模様。

嘘ニュースで問われる罪は

「デマを発信することにより他人に迷惑を与える行為は、業務妨害罪が成立する可能性があります。

具体的には、デマを流すことにより本来不要であった業務を発生させたり、正常な業務に支障を来すような状況になった場合です。

本件では、100件を超える電話の対応のほか、獣舎などの点検がスムーズに行えなかったといった正常な業務への支障が生じているため、業務妨害罪が成立するといえるでしょう」

嘘ニュースの仕組み、影響力

なぜ嘘ニュースが生まれるのか

広告収入システムで月に100万円以上を稼ぎ出してた嘘ニュースライターもいたそうです。

ではなぜ、虚偽のニュースは存在するのか? その狙いは主に広告収入のようだ。バズフィード(英語版11月4日付)によると、虚偽ニュースの発信元に多いのは、デジタル・ゴールドラッシュを迎えているといわれるマケドニアに住むミレニアル世代だ。彼らがトランプ氏をネタにするのは単に金銭的な理由だという。これまでの経験から、最も効率よくトラフィックを獲得できるのが、Facebook上でトランプ寄りかつショッキングな内容のニュースを発信することだったという。

「拡散させる側」の心理は?

事実に基づかない話であっても、多くの人々はそこに望みを託したのです。

こうしたムーブメントがここまで拡大したのも、一般市民がソーシャルメディアというツールを得て、デマや偏りすぎた主張を検証もなしに拡散できるようになったからです。

キャッチコピーや見出しの強烈さとは裏腹に、その多くはよく読めば論理破綻(はたん)しているのですが、個人個人の中で事実よりも“気持ちよさ”が勝ってしまうと、その「事実ではないもの」がいつの間にか既成事実化していく。
ニュースをシェアするという行為は、単に情報を知らせるだけでなく、「アイデンティティのマーカー(印づけ)」として行うのだという。人はグループに分かれる傾向があり、自分自身のグループとの結びつきを大切にする。リアルな世界であればこうした社会的なアイデンティ(どこに属しているか、ということ)は服装や食べ物などで示すが、オンラインの世界では、物質的なマーカーはそこまで大きな意味を持たない。そのため、自分が属するグループとの繋がりを、そのグループの志向や信念を反映した記事へのリンクを投稿するという行為で主張するのだ。こうした心理により、信憑性が低い記事でも拡散されることになる。

デマから身を守るには?

たとえば医療情報で、情報の字数をカウントするというは方法があります。要は、大本の情報が0次だとしたら、それをプロが書いているのが1次。それを孫引きしたのが2次・3次っていう。だから次数が低いほど信頼性は上がるわけですよ。医療情報とかの場合っていうのは、その情報の次数をカウントするっていうのは簡単なんですね。実際の本当に病院が得意としている病例・症例っていうのをちゃんとあげていますから。

騙されないように注意すべきこと

重要なのは読者一人ひとりが情報の真偽を見極めること。USA TODAY Collegeでは、若い人向けに友人知人へシェアする前の7つのチェック項目を推奨している。
1.投稿日、いつの出来事か確認する。再編集の可能性を考える。
2.発信元の他の記事を確認する。
3.サイトデザインやドメイン、免責事項や著作権の記述など、サイトをよく確認する。
4.事実確認のサイトで情報の真偽を確認する。
5.信頼できる大手メディアのサイトで同じ事件・事象が扱われているか確認する。
6.類似画像検索サービスで記事の写真と似た写真の記事を検索する。
7.ユーモアにあふれ、欲求充足や親近感に富む記事こそ注意。

最近もアイドルの急死のニュースの際に、その死因に関して、また「後追い自殺者が出た」というデマ情報が出回りました。最近はSNSの普及で誰でも気軽に情報を発信できるようになった一方で、その情報の真偽の見極めを受け止める側が行う必要が出てきました。既存のメディアでも誤報や嘘を流すこともありますし、見極める力を高めたいですね。