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「少年犯罪は凶悪化している」は真実か?

JIJICO 2015年10月31日 10時0分

過去10年において「検挙人員」「人口比率」は共に減少

近年、少年犯罪の凶悪化を懸念する意見をよく耳にします。意見には「戦後から長い目で見れば減少している」や「社会背景を鑑みれば凶悪化している」など、賛否両論があります。実際のところ、警察庁が今年2月に発表した「少年非行情勢」では、過去10年において「検挙人員」「人口比率」は共に減少しています。

また、刑法犯全体で見ても減少しており、成人の犯罪発生率と比較した場合はほぼ横ばいで推移しています。そして、凶悪犯も全体で51%減少し、「強盗」の60%減以外はほぼ横ばい。つまり、犯罪の認知件数や検挙人員の減少と比較した場合、横ばいであっても増加しているように感じるかもしれません。

凶悪化を感じさせるのは犯罪不安

統計には、数字による感じ方の違いの他に、「凶悪化」を感じるものがあります。それは「罪状の種類」です。警察発表による「凶悪犯」は、「殺人」「強盗」「放火」「強姦」の4つです。しかし、一般的に「傷害」「暴行」といった「粗暴犯」や「街頭犯罪」の対象や手口でも、「凶悪化」をイメージするはずです。「粗暴犯」のうち「傷害」の35%減に対し、「暴行」はほぼ横ばい。また、「街頭犯罪」では成人を含めた総検挙人員の半数以上を少年が占めており、変化が見られません。このように、数字の増減は比較する対象によって感じ方が異なり、言葉の表現や解釈の違いも影響します。

昨今、インターネットの普及やマスコミ各社の取材合戦などで、報道される頻度が増え、少年犯罪の増加を実感する人がいるかもしれません。また、近年に凄惨な事件が発生したほか、手口の粗暴化や再犯者率の上昇、非行の低年齢化も同じように「凶悪化」を感じさせる現状です。

このように、少年犯罪の凶悪化は、統計などの数字で表されるものではなく、事件発生の時間的間隔、犯罪の種別、犯行の手口、犯行者の年齢、報道頻度、認知頻度、表現方法、衝撃度など、複合的に感じる「犯罪不安」であり、個人差のある「感覚」が作り出すものです。

社会情勢の変化と少年犯罪の推移

少年犯罪の推移は、その時代の社会情勢に大きく影響されていると考えられます。少年の刑法犯検挙人員の推移には、戦後から現在の減少傾向に転ずるまでに、3度のピークが訪れています。それぞれの社会情勢を内閣府の「少年白書」から読み解きます。

・1951年(昭和26年)/戦後最初のピーク
戦後直後の社会混乱から経済復興の過程で、戦災孤児、浮浪児、家出少年の増加と覚せい剤(ヒロポン)の流行や人身売買、有害な出版物や映画など、戦後社会の不安定な状況が起因していると考えられています。また、世論調査では、家庭環境の悪化、社会の混乱などが挙げられています。

・1964年(昭和39年)/第2のピーク
経済復興から高度経済成長へ移行する中で、国民の生活水準は向上。消費ブームの中、深夜徘徊や有害な出版物、映画などの氾濫が問題視されました。少年非行情勢は、低年齢化、集団化といった特徴や刃物を使った凶悪な非行が増加しました。

・1983年(昭和58年)/第3のピーク
経済は安定成長期を迎え、核家族化や少子化の進行などにより、家庭の教育機能の低下傾向がみられました。また、受験競争の激化や人間関係の希薄化、性産業やゲームセンターの増加など、享楽的傾向の強まりと知識の豊富化や感覚的傾向の増大などから、地域の育成環境も変化しました。少年非行情勢は戦後最悪を迎え、窃盗、校内暴力、家庭内暴力、いじめなど問題の多様化が進行しました。

精神的自立を支援することが優先

上記の通り、少年犯罪が増加する背景には、社会情勢の変化に適応しようとする少年たちの焦りのようなものが感じられます。情報過多ともいわれる現代社会では、「何を学び、どこへ向かうのか」、選択肢が溢れ、戸惑っているようにも思えます。

少年非行の原因は、さまざまな観点から意見がなされます。しかし、過去を振り返っても、主役である少年たちが置き去りになっていることは明らかです。少年は知識や経験の少ない未熟な存在ですが、意思を持つひとりの人間です。大人の理屈や都合を押しつける前に、精神的自立を支援することが優先ではないでしょうか。

(神田 正範/防犯・防災コンサルタント)

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