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オートバイからジェット機へ、ホンダ躍進の影にある本田宗一郎の願い

JIJICO 2015年5月10日 10時0分

本田宗一郎氏が宣言した航空機事業の参入が結実

4月23日、ホンダが開発した小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」が日本上空を初飛行しました。ホンダジェットは1997年、プロジェクトチームを立ち上げ、アメリカで開発を進めてきた7人乗り小型機です。価格は450万ドル(約5億4000万円)。注文はすでに100機以上入っているといいます。

世界一のオートバイメーカーでもあるホンダのエンブレム「ウイングマーク」には、いつかは空へ羽ばたきたいという創業者・本田宗一郎氏の願いが込められています。「自由な移動の喜びを空にまで届けたい。創業当初からの夢へのチャレンジ」と、独自の技術で陸、海、空を自由に移動するモビリティの提供を目指し、世界的にも稀なジェットエンジンと機体の両方を開発しました。1962年、宗一郎氏が宣言した航空機事業の参入がまさに結実した瞬間です。

国内にはトヨタを始め、存在感を示すメーカーが多数

国内には、トヨタ、ホンダ、日産、マツダ、三菱、スバル(富士重工業)といった自動車メーカーがあります。また、軽自動車主力のスズキ、ダイハツ。トラック専業のいすゞ、日野自動車、三菱ふそうトラック・バス。そして二輪主力のヤマハ発動機、大型バイク「Ninja」ブランドで知られるカワサキモータースジャパンがあります。

スズキは、軽自動車にほぼ特化し早くからインド市場を開拓。世界有数の航空機メーカー・中島飛行機が前身で、安全技術や航空宇宙分野に強みを持つ富士重工業などはニッチ市場で存在感を示しています。トヨタ自動車は「一代一事業」を是とし、創業者の豊田佐吉氏が自動織機を発明。佐吉の長男の喜一郎氏がトヨタ自動車を興し、その息子の章一郎氏がハウスメーカーのトヨタホームを創業しました。

一代で一事業のメリットは、起業家精神を忘れず本業に専念することで「上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を拳ぐべし」を実現できるとした「豊田綱領」に依拠します。その結果、トヨタは世界一の自動車メーカーに君臨することになります。例えばの話ですが、トヨタの技術力をもってすれば、飛行機、宇宙開発もできないわけではないでしょう。ただ、欧米メーカーがひしめく市場でビジネスとして成立させるにはリスクが大きすぎるのかもしれません。

競合が少ないビジネスジェット機は、欧米で市場拡大の期待も

こうしたなか、ホンダはあえて航空機分野に参入します。それは創業者の念願だからでしょうか。いや、そればかりではなく、そこにはニッチ分野で成長してきた市場識別眼にかなった「したたかな戦略」が垣間見えます。定員5~20人までのビジネスジェット機は競合が少なく、欧米で市場拡大が見込まれるマーケットなのです。

かつて中小企業であった本田技研工業が創業以来、売上高が伸びているということは、世の中に支持される製品を送り続けているということです。二輪で世界シェアトップを占めるほか、四輪、水素燃料電池、太陽光発電、ロボット、さらには飛行機まで手掛け、後発独立系でありながら売上高12兆円の巨大メーカーに成長したホンダの歴史は、チャレンジの蓄積です。

根っからの職人の本田宗一郎氏(1906-1991)は技術開発に専念し、副社長の藤沢武夫氏(1910-1988)に実印と会社経営の全権を一任していたといいます。地方の中小企業にとっても、この成功事例は大いに参考になると思います。死後24年を経て念願の飛行機の出来栄えを、雲の上の宗一郎氏は目を細めていることでしょう。

(村上 義文/認定事業再生士)

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