ホンダは、2019年7月7日に公式SNSで豪雨によるクルマの冠水や浸水に関する注意喚起を発信しています。しかし、その内容は「ハイブリッドカーや電気自動車の場合、感電する可能性があり危険です」というものでしたが、ハイブリッド車や電気自動車を販売するトヨタや日産では過去に感電事故は起きていないといいます。なぜ、ホンダはこのような投稿をおこったのでしょうか。また、水害にあったクルマを発見した場合どのような対応を取れば良いのでしょうか。
■クルマが冠水・浸水したらハイブリッド車・電気自動車は感電の危険はあるのか?
今回の豪雨禍を受け、ホンダはフェイスブックとツイッター、LINEなどのSNSを通じて「クルマが浸水・冠水した際の対処法」として、「ハイブリッドカーや電気自動車の場合、感電する可能性があり危険です。すぐに車両から離れて下さい」という情報を流しました。誰でも容易にイメージ出来る危険性ということで、拡散している人が多数存在しています。
これを見た人は、ハイブリッドカーや電気自動車が浸水や冠水していたら、車内に要救助者が居ても、善意で「そのクルマはハイブリッド車だ!危険なので近寄るな!」と注意喚起することでしょう。
聞いた人は「そういえば危険だ!」と思うだろうから、助けることを断念するかもしれません。ホンダがSNSで発信した情報は、命に関わるほど重要なことなのです。
果たしてハイブリッド車や電気自動車は浸水や冠水したら感電の可能性あるのでしょうか。
まず「今まであったのか?」を調べてみました。ハイブリッド車といえば世界でもっとも台数を売っているのがトヨタです。
安全を担当している部署に聞いてみると「1997年から23年間、今まで走行に使う高電圧系の電池で感電したケースは1件もありません」といいます。
続いて2010年から電気自動車を販売している日産の電池開発担当者に聞くと、「走行用のリチウイムイオン電池で感電したというケースはありません」
東日本大地震の津波で多数のハイブリッド車が流され、なかには事故より酷い損傷を受けた車両もあったけれど、感電事故は皆無で、日本製の電気自動車に限っていえば、感電も火災も無いようです。
なぜ、水害にあったクルマで感電しないのでしょうか。それは、国土交通省は自動車メーカーに対し、高電圧電池搭載車に対する厳格な安全基準を義務付けているからです。
具体的に書くと、起動ボタンを押していない駐車状態では「コンタクター」と呼ばれる精密な通電スイッチにより走行用大電力バッテリーを絶縁状態にしています。そのため、走行用電池から外部にはまったく電気は流れないのです。
走行状態で冠水や水没したら、クルマはどうなるでしょうか。
基本的には、「1)一気に大きな電流が流れたら、その瞬間にコンタクターで回路を切る」、「2)制御用に搭載している12Vバッテリーからの電力供給が途絶えたり、異常を感知してもコンタクターで回路を切る」、「3)大きな衝撃を受けエアバッグが展開したら、やはりコンタクターで回路を切る」というような安全策を取ります。
■ホンダのSNS投稿の意図は?
もしかしたらホンダ車は過去に感電事故を起こしているのか心配になり、ホンダの広報に問い合わせてみたところ「現時点で確実かどうか確認を取れていませんが当社のハイブリッド車の感電事故は起きていないようです」。
2020年7月現在、ホンダは国内で販売していない電気自動車の感電まで指摘しているので、何か理由があるのかもしれません。
再度SNSを通じて注意喚起した理由を聞いてみたところ、7月9日の朝時点で「社内調査中です」と説明しています。
ただ8日の夜に「上記の投稿文及びリンク先ウェブサイトのハイブリッドカーや電気自動車に関する記述内容を現在再確認中です。確認が取れ次第、再度掲載させていただきます」という投稿が追加されました。果たして、今後どうなるのでしょうか。
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再確認しておくが、今までハイブリッド車や日本製の電気自動車(海外のメーカーについて確認していない)で感電事故を起こしたケースは1件もありません。
これは、津波に巻き込まれ原型を留めなくなったハイブリッド車も含みます。冠水して溺れそうな要救助者に遭遇したら、普通のクルマと同じように助けて頂きたいです。
ただし、一度冠水や浸水したクルマを闇雲にエンジン始動して移動するのはやめてほしいとJAFは警告するので、あくまでも助けるだけに留めておくのがいい。