日本で販売されているクルマ用の燃料は、「レギュラー」「ハイオク」「軽油」の3種類ですが、それぞれ間違えて給油した場合には、どのようなトラブルが起こり得るのでしょうか。
■燃料入れ間違えによる故障の心配は?
一般的にクルマに使用される燃料には、ガソリン車用として「レギュラー」と「ハイオク」、ディーゼル車用に「軽油」が指定されています。
では、レギュラーとハイオクにはどのような違いがあり、ハイオク仕様にレギュラーを入れても問題はないのでしょうか。
クルマのエンジンは、燃料を気化させて空気と混合させたものをスパークプラグで着火し、爆発(燃焼)させることで、ピストンを動かして駆動力を生み出す仕組みになっています。
なかでも、高出力を発揮するようにすために設計されたエンジンは、高い圧縮比で大きなパワーを得ようとしますが、これが低い圧縮比でも燃えると爆発力が弱まるためパワーが出ません。
また、最適なタイミングで爆発しないとノッキング(振動や音が出る状態)が発生し、エンジンを痛める原因となります。
そのため、高出力を求めるエンジンは、高い圧縮比で適正に燃焼するハイオク指定になり、それ以外のエンジンでは、圧縮比が高くなくても燃焼するレギュラーガソリンを指定しています。
なお、輸入車の多くはハイオク仕様になっていますが、欧州・アメリカと日本とでは、ガソリンに含まれるオクタン価が違うためです。
オクタン価とは、添加物の割合を示すもので数値が高くなるにつれ異常燃焼が起きにくくなっています。
日本では、オクタン価の数値が96以上をハイオク、それ未満で89以上のものがレギュラーとなっています。
では、レギュラーとハイオクを間違えて給油してしまった場合、どのような影響があるのでしょうか。自動車ディーラーのスタッフは以下のように話しています。
「レギュラー車にハイオクを間違えて給油してしまっても大きく問題はありません。
しかし、ハイオク車にレギュラーを入れると性能低下や燃費悪化に繋がるほか、最近のクルマでは『ノッキングセンサー』というノッキングを防ぐ機能がありますが、年式が古いクルマの場合は稀にノッキングを起こす可能性もあるので、基本的にハイオク車にレギュラーを入れることはやめておいた方がいいです」
ノッキングセンサー(ノックセンサー)とは、ノッキングを検知すると原因となるエンジン点火のタイミングを自動で調整する機能です。
また、レギュラー車にハイオクを入れた場合に限り、多少ながら洗浄効果やレスポンス向上などのすることがあるようですが、その効果はわずかだとされています。
■ガソリン車に軽油を入れたらどうなる?
JAFによると、2018年12月1日から31日の期間で「燃料入れ間違い」による救護要請は、一般道と高速道を合わせて390件だったとしています。
では、ガソリン車にレギュラー・ハイオクでもなく、誤って「軽油」を入れてしまうとどうなるのでしょうか。
入れ間違いトラブルについて整備工場のスタッフは、次のように話します。
「ガソリン(レギュラー/ハイオク)と軽油では、そもそもの性質が違います。
ガソリンエンジンは霧状になった燃料に、スパークプラグと呼ばれる電極が火花を飛ばすことで燃料を燃やしています。
一方のディーゼルエンジンは軽油を圧縮して燃焼させているため、こうした構造上の違いから、最適な燃料を入れないとエンジントラブルの元となります。
ガソリン車に誤って軽油を入れた場合、最初はガソリンタンク内に残っているガソリンと混ざって燃焼しますが、次第に軽油の比率が増えて不完全燃焼によってパワーが落ちてマフラーから黒煙が出るなどの症状が発生し、最終的にはエンジンが停止します。
一方、ディーゼルエンジンにレギュラーを入れた場合、レギュラーは軽油よりも潤滑性が低いことや、燃料方式の違いにより、最終的にはエンジンを損傷させる可能性が高くなるのです」
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こうした燃料の入れ間違いを防ぐため、セルフ式ガソリンスタンドでは給油ノズルを色別で別けており、赤色はレギュラーガソリン、黄色がハイオクガソリン、緑色が軽油となっています。
また、最近ではクルマ側でも給油蓋に指定燃料を記載するなど、さまざまな対策がおこなわれているようです。