クルマの免許は、日本において18歳から取得可能です。では、高校生はクルマで通学することは可能なのでしょうか。
■そもそも免許取得が許可制の場合も
日本では18歳から取得できるクルマの免許。法律上は高校生も免許を取得できることになりますが、クルマで通学することは可能なのでしょうか。
いわゆる「クルマの免許」、正確には「第一種普通自動車免許」もしくは「第一種準中型自動車免許」は、受検資格が18歳以上と定められています。
より詳しく見ると、仮免許試験を受けることができるのが18歳の誕生日以降であることから、多くの自動車教習所では18歳になる1、2か月前からの入校を認めています。
そのため、18歳になってすぐに仮免許試験を受け、その後もスムーズに進めることができれば、最短で18歳の誕生日から2、3週間ほどで公道でクルマを運転できる資格を得ることができます。
文部科学省の「学校基本調査」によれば、2020年度の高校進学率は約98.8%となっていることからもわかるとおり、18歳の多くは高校生だといえそうです。
前述の通り、誕生日によっては夏前に免許を取得することもできることになりますが、高校生がクルマで通学をしているというのは、定時制高校などの例外を除けば耳にすることはまずありません。
定時制高校の場合、社会人を経て高校に再入学するなどもあり、18歳以上の生徒も少なくないことから、学校によってはクルマ通学が認められる場合があるようです。
一方で、昼間に勉学をする一般的な高校では、実際のところ生徒自身がクルマを運転して通学することに関して、明確な校則を規定している高校はそれほど多くないようです。
もちろん、生徒のクルマ通学を許容しているという意味ではなく、常識的に見て、そうした事例がほとんどないことが要因でしょう。
ただ、クルマに関する校則として、免許の取得自体を校則で規定している高校は少なくないようです。
例えば、和歌山県立有田中央高校では、「単車・自動車等の運転免許は,在学中は取得しないことを原則とする」としており、「無断で取得した場合は,運転免許証を保護者の責任において卒業まで学校で保管する」という規則も設けられています。
一方、卒業後の進路によってはクルマの免許を必要とする場合もあるため、高校の許可を得ることで、自動車学校への入校および免許の取得を許可すると定められています。
法律で許可されている免許の取得を校則で規制するのは、人権侵害に当たるのではないかという議論が、おもにバイクの「3ない運動(免許を取得させない、バイクに乗せない、バイクを与えない)」が話題となった際になされました。
校則に違反してバイクに乗ったことを理由に退学処分となった生徒が、学校側を訴えるという事例もありましたが、社会一般的に不合理な校則であるとはいえないとして、原告の訴えはしりぞけられています。
16歳から免許取得可能なバイクに関しては、このように校則での規制が話題となったり、地方部など公共交通機関が未発達な地域でのバイク通学を認める例が話題となったりしますが、クルマに関してはほとんど議論されることがありません。
バイクと比べて、免許の取得やクルマの購入のハードルが高いことから、そもそもクルマ通学をする人がいないというのがおもな原因といえそうです。
■クルマ通学が認められない理由は?
校則でクルマ通学を明確に規制されていなかったとしても、現実的には生徒自身がクルマを運転して通学をしたら、高校側から禁止を言い渡されることでしょう。
学校がクルマ通学を禁止する最も合理的な理由は、やはり「危険だから」ということにほかなりません。
学校教育法では、校長や教師は生徒の生命・身体の安全を守るべき義務を負うとされており、学校内はもちろん通学時も同様に安全への配慮が求められます。
21歳未満の自動車保険料が高額なことからもわかるように、若年層の事故率はそれ以上の年代に比べても高く、重大事故も少なくありません。加えて、もし18歳で免許を取得したとしても、少なくとも在学中は免許取得1年未満の「初心者ドライバー」となります。
そのため、高校が生徒のクルマの通学を規制することはもちろん、免許の取得自体を許可制とすることは、決して不合理なものではないといえます。
アメリカなどでは、高校生がクルマで通学をする例も少なからず見られますが、これは公共交通機関が発達していない地域が多く、また国土も広大なため、保護者や高校による送迎も限界があるためです。
日本にも公共交通機関が発達していない地域はありますが、生徒のクルマ通学を認めなければならないほどの地域はほとんどないようです。
なかには、高校に無断でクルマ通学をしている、あるいはしたことがあるという人もいるかもしれませんが、クルマの取得費用や駐車スペースの問題を考えると、生徒自身にあまりメリットがなさそうです。
このように、さまざまな事情から、生徒自身がクルマを運転して通学することはほとんどおこなわれていないと考えられます。
一方で、高校卒業後にクルマを運転する仕事に就く人も少なくありません。もちろん、クルマに乗る以上は交通事故に関わる可能性はありますが、それでもクルマを運転しないと生活自体がままならないという人も多くいます。
加えて、日本は世界に誇る自動車大国であり、自動車産業は日本の基幹産業です。ただ漠然と「危険だから」で規制するのではなく、クルマに乗ることのメリットとデメリットを正確に伝え、高校生のうちから安全運転について学ぶことも重要なのではないかと思われます。