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トランプの本心を身ぶり手ぶりで読み解く

ニューズウィーク日本版 2017年1月21日 11時0分

<大混乱となった当選後初会見のトランプを、ボディーランゲージの専門家はどう見るか>(写真:よく見せる独特のOKサインは何を意味する?)

 コミュニケーションで言葉と同じくらい、いやそれ以上に重要なのがボディーランゲージだ。ある研究によれば、メッセージの55%はボディーランゲージを通じて伝達される。声のトーンは38%、言葉は7%にすぎないとのことだ。しかも、最近の研究によると、ボディーランゲージは言葉よりも人の思考や感情を浮き彫りにするらしい。

 先週、トランプ次期米大統領が大統領選後初の記者会見に臨んだ。このときトランプが声を荒らげたり、記者を指さしたりといった露骨に攻撃的な態度を取ったことは知ってのとおりだが、ボディーランゲージを見ると、不安を感じていて、おそらく隠したいことがあったようだ。

 ボディーランゲージを30年以上研究しているパティ・ウッドによると、大統領選の選挙運動を始めて以降、トランプのボディーランゲージには若干の変化が見られる。例えば、身ぶり手ぶりをするとき、以前より手を高く掲げるようになった。これは、選挙に勝って自己評価が一層高まったことの表れの可能性があるという。

 表情にも変化が見られる。選挙戦の初期には感情の幅が広く、笑いと怒りの表情を自由に行き来していた。しかし次第に、「怒りの表情に長くとどまることが多くなった」という。

【参考記事】トランプ初会見は大荒れ、不安だらけの新政権

 その一方で、変わっていない点も多い。例えば質問に直接答えず、脈絡のない単語を並べる形で返事をする傾向がある。「完結した文章の形では答えない。奇妙な組み合わせの言葉を並べる。これは人を欺こうとしている人間に典型的なパターンだ」と、ウッドは言う。

 よく見せるしぐさも、聴衆を欺いている面がある。中指から小指まで3本の指を軽く曲げたような独特のOKサインはおなじみだ。スピーチ中にこのようなしぐさをする人はあまりいないので、聴衆は戸惑い、トランプのいいかげんな発言に注意が向きにくくなる。

 ウッドによれば、トランプは武器を使うようなしぐさもよく見せる。先週の記者会見でも、「ロシアとの関係はない」と述べたときに「物を断ち切るような」ジェスチャーをした。ニュースサイトのバズフィードを非難したときは、「目の前にある物を押しのけるように」手を動かした。これは、言葉としぐさの発するメッセージが一致しているパターンと言えるだろう。

 トランプのボディーランゲージが強力なメッセージを発していたのは、マイクの前に立っていたときだけではない。



 記者会見で弁護士にマイクを譲り、利益相反問題について説明させていた間、前後に体を揺らして立っていた。「いら立ちを抑えようとする」態度だという。このとき唇をかむ姿も数回見られた。これも「何かをぐっとこらえようとする」心理の表れだと、ウッドは指摘する。

【参考記事】オバマ、記者団に別れ「まだ世界の終わりではない」

 弁護士が説明する間、背後にちらちらと目をやるしぐさも数回見せた。「群れのボスでありたい、自分の縄張りを確認したいという原始的な欲求」が見て取れると、ウッドは言う。一方、弁護士が話し始めた直後はそのほうを向いて立っていたが、すぐに記者団のほうに向き直ったのは、「自分が注目の中心にいたい」という心理を浮き彫りにしているという。

 ひとことで言えば、このときトランプは「退屈している」ように見えたと、ウッドは分析している。

[2017.1.24号掲載]
ジェシカ・ファーガー

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