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新形式TOEIC対策の要は、テクニックに頼らない基礎力の底上げ

ニューズウィーク日本版 2017年6月14日 17時0分

<昨年5月に出題形式が変更されてから一年が経過したTOEICテスト。スクールでの試験対策にも変化が表れている>

昨年の改訂でTOEIC Listening & Reading Test(以下、TOEIC L&R)は、英語の使われ方などの現状を反映し、より実践的な英語力が問われる出題形式を一部の問題に採用。攻略テクニックだけでは高得点を取るのが難しくなったと言われている。

果たして、新しいTOEIC L&Rの対策にはどのような勉強法が効果的なのか。1993年に創立し、TOEIC対策指導の専門校として知られる「エッセンス イングリッシュスクール」(東京・池袋)の加藤優・主任講師にテスト対策の最新事情を聞いた。

まずは基礎力を身につけることが前提

改訂以前は、特定のパターンに従って質問や答えが設定されていることが多かった。そのため、例えばリスニングの応答問題では、キーとなる言葉だけを注意して聞けば正解を推測することができた。ところが改訂の最も大きなポイントは、話し手の意図や背景に潜む意味も汲み取った上で答えを選ばなければならなくなったところ。

加藤氏は、「一般的には難しくなったと感じる人が多いと思う。普段から英語を使う環境にいる人にとっては、それほど難しくはないはずだが、テクニック重視で対策してきた人にとっては攻略しづらい」と分析している。

そのため、TOEIC対策の各スクールでは新形式に対応して指導を強化。受験者も基礎力を身につける必要があると認識するようになった。リスニングの場合は基本的な聞き取る力の底上げが必須で、最も効果があるのは音読だと、加藤氏は言う。

エッセンス イングリッシュスクールの加藤優・主任講師

模擬問題を解いた後にスクリプトの内容を確認し、音声を手本にして、一文ずつ同じように発音。音声と同じスピードで読めるようになるまで、何度も繰り返す。すると、英語が聞けるようになるだけでなく、内容が同時に頭の中に入ってくる。「ただ声に出すだけでなく、どんな状況で話しているのかをイメージし、役者になったつもりで読むことが大事」と補足する。

さらに効果的なのが、シャドーイングと呼ばれるトレーニング法だ。英語の音声を聞いて、聞こえた通りに即座に発声する。最初はスクリプトを見ながらでもいいので、トレーニング自体に馴れることが重要。ある程度できるようになれば、スクリプトを見ないでシャドーイングする。これができれば、英語を100%聞き取ることができるようになる。

【参考記事】新生TOEICで試される、英語コミュニケーションの実力

リーディングの長文読解では文章の区切りに印をつけて、意味のまとまりごとに理解していく「スラッシュリーディング」という手法を重視。「日本人は英語を英語のまま、速く読むというのが苦手。新しい出題形式によってさらに読む量が増えているので、長文全体の内容を素早く捉える力を鍛えるには、今までの意識を変えなければならない」と指摘する。そのため、まずは長文を精読して内容を100%理解した上で、同じ文章を繰り返し読み、スピードを速めていくトレーニングが有効だ。

モチベーションの維持も不可欠

TOEIC L&Rで高得点を狙うには、英語の能力を向上させる地道な努力を怠らないことが大切だ。一方で、加藤氏は「英語力だけで勝負しても思うようにスコアが伸びないこともある。受験スキルを高めるテクニックも不可欠で、この2つのバランスが重要」と強調する。

ここでいうテクニックとは、予測される傾向やパターンを頭に叩き込むこと。例えば、リスニングの写真描写問題なら、この問題にしか出てこない、特有の単語を覚えておくような対策だ。リスニングの会話問題や説明文問題でも、何を問われているのかがすぐに判断できるようにしておくことで、問題にスムーズに解答できるようになる。

【参考記事】最新ビジネス英会話に求められる、ロジカルスピーキングと「おもてなし」

基礎的な英語力やテクニックを身につける上で、不可欠なのがモチベーションの維持だろう。目標設定がある人と、そうでない人では学習に対する姿勢そのものが大きく違う。何点を目指すのかというスコアはもちろん、なぜそのスコアが必要なのか、目標を達成したら何がしたいのかというビジョンがあると、モチベーションを保ちやすい。また、学習成果をしっかりと確認・記録することも役立つ。

例えば、最低でも3回は繰り返さなければならないという対策問題集への取り組み。初めて解いたときに70%しかできなかったのが、2回目の挑戦では85%できたというように、自分の学習成果を確認しながら勉強することも効果がある。もちろん、正解の根拠や重要表現をその都度チェックすることが大切だ。

TOEIC対策の授業風景(写真提供:エッセンス イングリッシュスクール)

「TOEIC L&Rの教材だけで勉強しても、内容に対して興味を持って取り組める人は少ない。だから、教材以外の英語に触れる機会をつくるといい」と言う加藤氏が勧めるのは、英語で楽しめる海外のYouTube動画や、海外ドラマなどを見ることだ。直接的なスコアアップになるわけではないが、学習に対する意識が変わり、英語そのものを純粋に楽しむことができる。さらに、そこで身につけた英語の表現が実際に試験に出てくると、実生活と試験が繋がり、学習に対する意欲が高まる。

最後に、試験に対する心構えについて聞いてみた。「自分の能力以上のものを発揮しようとしないこと。というのも、75分間のリーディングセクションは、ほとんどの人が時間内に最後まで解き終わることができない。そのことを理解していれば、出来る範囲の中で確実に正解を狙っていこうという意識に変わってくる。満点を目指すのでない限り、最後まで解き終わらなくても目標のスコアは達成できる」と、加藤氏はアドバイスする。

英語力を地道に高めていき、確実に正解できる問題を増やすことが何よりの近道。そうすれば、高得点を取るだけでなく、実生活での英語のコミュニケーション能力も向上しているはずだ。

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ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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