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「北朝鮮はテロリストだ」 北で拘束された息子は異様な姿で帰国し死んだ

ニューズウィーク日本版 2017年9月27日 19時0分

<北朝鮮を観光ツアーで訪れたアメリカ人大学生は、想像以上に酷い姿で帰国していた>

北朝鮮に約1年5カ月にわたって身柄を拘束されたアメリカ人大学生オットー・ワームビア。何が起こったのかわからないまま今年6月15日にアメリカに帰国、そして死亡した事実しか伝えられていなかったが、ワームビアの両親が初めてFOXテレビのトーク番組「フォックス&フレンズ」で取材に応じた。両親から語られたのは、北朝鮮から帰ってきた息子の変わり果てた様子だ。

激しくけいれんし、昏睡状態に

オハイオ州で息子の帰宅を待ち構えていた両親は、想像以上の事態を目の当たりにした。この時点で北朝鮮が「非人道的」という事は承知していた。北朝鮮のホテルの展示物を盗もうとした罪で1年以上投獄されていたワームビアが脳を傷付けられたことは知らされていたからだ。

それでも、ワームビアの状態は、想像以上に酷かった。母親のシンディはあまりにも恐ろしい光景におののいてしまったと言う。

早まる気持ちを抑えられない両親が、ワームビアの乗る飛行機に乗り込んだ瞬間に聞こえたのは、人間とは思えないうめき声。両親は「それがどういうことか本当にわかっていなかった」。久しぶりの再会を果たした息子は医療機器に囲まれ横たわっていた。

「オットーの頭は剃り上げられ、鼻には栄養チューブが差し込まれていた。体は激しくけいれんしていた。目はぼんやりと宙を見つめていたが、何も見えず何も聞こえないようだった。下の歯は誰かがペンチで歯並びを変えたようだった」。北朝鮮は、「目的を持って意図的に息子を傷付けた」と、両親は語った。

「北朝鮮は犠牲者ではなくテロリストだ」

一体、北朝鮮は何をした

北朝鮮は、ワームビアを拘束するなかで残虐に扱ったり拷問したことはなく、国際基準に従って処理しただけだと言い張っている。

その主張は、ワームビアがホテルに置いてあった政治スローガンが書かれた展示物を盗もうとしたため、裁判にかけて15年の労働強化刑を言い渡したまでで、あくまで北朝鮮側が「被害者」という立場だ。

しかし、ニューヨーク・タイムズ紙が伝えたところでは、ワームビアは拘束されている間に繰り返し暴行を受けていた。ワームビアの死から3カ月以上経つが、依然として謎に包まれている部分が多い。




語られない死因

今年6月のワシントンポストの報道によれば、ワームビアの容態について両親は、「ボツリヌス中毒症で体調を崩し、睡眠薬を服用して昏睡状態になった」と説明を受けていた。

ただ、インタビューでワームビアの死因に話が及ぶと両親は、「(ワームビア)は旅を終えた」と言うだけで、特定の死因は挙げなかった。

当時、ワームビアの治療に当たった医師は、脳組織が大量に喪失し、筋肉、腕、脚の「深刻な衰弱と収縮」が認められると述べた。ワームビアは瞬きはするものの、周りの掛ける言葉や周囲の状況を理解する兆候はなく「応答不能な覚醒」状態だったようだ。この状態の患者は、昏睡状態でも目を開くことはできるが、周りの指示などには反応を示さないという。

ワームビアの両親は北朝鮮の行動を「容認できない」と強く非難する。2008年に北朝鮮が「テロ支援国家」の指定を解除されたことに言及し、再指定すべきだと強く訴えている。その一方で、息子の検死は「これ以上、苦しめたくない」と言って拒否し続けている。北朝鮮でワームビアに何が起こったのか、「死人に口なし」の言葉通り、真相は謎のままで終わる可能性もある。


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ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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