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あと13年で5人に1人がロボットに仕事を奪われる

ニューズウィーク日本版 2017年11月30日 17時30分

<ロボットやAI(人工知能)の実用化が進むなか、何百万人もの労働者が仕事を奪い合う時代がやってくる>

経営コンサルティング会社マッキンゼーが発表したレポートが話題を呼んでいる。報告によると、2030年までに最大で世界8億人の労働力がロボットに置き換えられる可能性があるという。先進国が新技術に急速に移行すれば「全人口のうち、7500万~3億7500万人が職業分野を変え、新しいスキルを学ぶ必要が生じるだろう」。なかでも中国の労働者は、ロボット化への切り替えによって最もインパクトを受ける可能性が高い。

調査は世界46カ国、800の職業を対象に実施されたもので、今後13年間で世界の労働者の約5分の1が産業のロボット化で影響を受けることがわかった。「4~8億人の人が職業の変更を促され、2030年までに世界中で新しい雇用を創出する必要がある」と試算している。

産業革命に匹敵する大変革

18世紀後半のイギリスから世界に広まった産業革命は、現代社会の原型を形作った大きな転換点として知られるが、2030年までの労働市場の変化は「非常に激しく、過去の農業や製造業からの移行の規模にも匹敵する」とマッキンゼーは予想している。

報告によれば、アメリカだけでも2030年までに最大7300万人の雇用がカットされる可能性があり、失業した労働者のうち約2000万人はスム―ズに他の仕事に就ける。イギリスでは現在の雇用の約2割がロボット化される(英デイリーメールの試算)。

「自動化が急速に進めば、2030年で労働力の12%に相当する最大1億人が、仕事を変える必要に迫られる」

しかしながらマッキンゼーは、我々を戦々恐々とさせるメッセージだけを送っているわけではない。そもそもアナリストらは、求人が不足することはないと考えている。ただ「ロボットが賢くなればそれに伴って労働者もさらに熟練しなければならないという意味」で、産業のロボット化は「労働の生産性を高め、経済成長や賃金上昇を後押しする」と英テレグラフは期待を込める。



なくなる仕事、なくならない仕事

マッキンゼーによるとロボット化の煽りを受けやすいのは、投資する資金力のある先進国が中心で、対照的に貧しい国ではその打撃はほとんどない。

産業で見ると、機械オペレーターと食品加工業で特にロボット化が進む。アメリカやドイツのような先進国且つ豊かな国で、労働者の3分の1程度が転職するための訓練が必要になるとの見方だ。

職業では、モーゲージブローカー、パラリーガル、会計士、および一部の事務職(バックオフィススタッフ)が、特に影響を受けやすいという。ここ数年は日本企業もRPA(ロボット・プロセス・オートメーション)導入で、バックオフィス等の業務の効率化に乗り出す動きが目立ってきた。

一方で人間とのコミュニケーションが重要な仕事はロボット化の影響を受けにくい。主に医療や教育の分野で医師、弁護士、教師、バーテンダーなどが挙げられる。また、園芸、配管工事、ケア作業などの専門的且つ一般的に低賃金とされる仕事もロボットの手に渡ることはないと予測している。

ロボットにできない仕事は、「教育を必要とする職」だと英デイリーメールは指摘する。先進国では今後「教育を必要としない職」がロボット化の波に押されて求人が減り、自ずと「教育を必要とする職」を目指す人が増えると予想される。「人間にしかできない仕事」にありつくために大学教育へのニーズが一層高まるだろうとBBCは予測している。


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ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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