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マッチョな男が高級車で飛ばしたがるワケ

ニューズウィーク日本版 2018年8月21日 15時30分

<権力欲もブランド志向も男性ホルモンのなせる業――一方で心臓が強く、長寿に恵まれるというメリットも>

男性ホルモンのテストステロンが多い人は性欲旺盛で、自己顕示欲の塊でもある――というのはよく聞く話。それなら、スポーツカーを乗り回すようなイタいオヤジはテストステロン値が高い......?

いや、冗談ではなくそれなりに科学的な裏付けがある。ここ数年の研究で分かってきた男性ホルモンたっぷりな人の特徴を見ていくと、たいていはあなたのよく知る誰かさんに当てはまるのではないか。

【1】高級感にこだわる

科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載された研究によると、テストステロン値が高い人ほど高級ブランドや高い地位にこだわる傾向がある。

実験では18~55歳の男性約240人を2グループに分け、一方にはテストステロンを飲ませ、他方には偽薬を与えた。その後、高級なブランドとカジュアルなブランドを提示し、どちらが好きかを聞いた。さらに同様な商品に関する複数の広告を見せ、最も気に入ったものを選ばせた。

すると、テストステロンを飲んだ男性ほど高級ブランドを好み、性能や品質より高級感や特別感を訴求する広告に反応する傾向が高かったという。

群れで暮らす動物のオスが力の優位性を誇示して自分の地位を守ろうとするのと同じだと、論文の共著者でカリフォルニア工科大学のコリン・キャメラー教授は言う。「人間のオスも同じ。かぎ爪や筋肉の代わりに服や車で力を誇示する」。そういえば、超高級車ランボルギーニの所有者の93%は男だとか。

【2】リスクを取り過ぎる

シンガポール経営大学のメルビン・テオらが約3200人の男性ファンドマネジャーの運用成績を調べたところ、幅広顔の人(一般にテストステロン値が高いとされる)は細面の人に比べて1年間の成績が6%ほど悪かったという。

幅広顔の投資家は積極的にリスクを取り、損をしてでも一発逆転を狙いがち。データがなくても直感を信じ、結果のためなら手段を選ばず、不正行為にも手を染めやすいとされる。

【3】判断が衝動的

男性ホルモンの多い人は衝動的な決断を下しやすい。サイコロジカル・サイエンス誌に発表されたペンシルベニア大学のギデオン・ネーブ経営大学院助教らの研究によれば、テストステロンを1回投与しただけで、引っ掛け問題(直感的に正解と思われる答えが実は誤答になるような問題)への正答率が低下したという。

動物のオスはメスをめぐって争うときにテストステロン値が上がるが、そんな状況で衝動的な判断を下すと命取りになりかねない。

【4】恵まれた環境で育つ

テストステロン値はその人が育った環境も教えてくれる。英ダラム大学などの研究チームが360人のバングラデシュ人男性を調査したところ、イギリス育ちでイギリス在住の人は、バングラデシュ育ちでバングラデシュ在住の人よりもテストステロン値が有意に高いことが分かったという。イギリス育ちのほうがバングラデシュ育ちの人より背が高く、思春期を早く迎える傾向も確かめられた。

途上国では感染症や栄養不良のリスクが高いが、筆頭著者のケッソン・マジッドによれば、こうした健康リスクのない状況ではテストステロンの値が上がりやすいそうだ。



【5】典型的ナルシシスト

メルボルン大学(オーストラリア)のニコール・ミード准教授らの研究によれば、テストステロンは「社会的に有害なナルシシズム」を助長する。テストステロン値の高い男女に権力を与える実験を行ったところ、搾取的・特権的な行動が目立ち、権力を乱用する傾向も見られたという。テストステロン値の低い人では、そうしたナルシシスト的な行動は見られなかった。

実験では約200人の男女を集めてランダムに「ボス」の地位を与え、統率力を試す作業をやらせ、その過程で不正行為や他人を犠牲にする行為の有無を観察した。ミードによれば、「テストステロン値が高い人は権力志向が強いが、統率力を欠く」傾向があるそうだ。

【6】それでも心臓は丈夫

ボストン大学などの研究チームが10年にわたって実施した追跡調査によると、テストステロン補充治療を受けた男性では治療を受けなかった男性に比べ、心臓疾患などによる死亡率が有意に低く、血糖値や血圧、体重も対照群より低かったという。つまり、テストステロンは健康な心臓の味方ということ。

いかがだろう? 何となくドナルド・トランプ米大統領に当てはまりそう。強心臓も、大統領選で証明済みだ。

<本誌2018年8月14&21日号掲載>


スコッティー・アンドルー

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