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北朝鮮は「世界一安全な国」、来年のブロックチェーン会議に向けて必死の売り込み

ニューズウィーク日本版 2018年11月21日 17時46分

<ただし日本人、韓国人、イスラエル人はお呼びでないし、そうでなくても「共和国に対する敵対行為」はゆるされない。あのアメリカ人学生ウォームビアのように>

北朝鮮は11月20日、平壌で来年4月に開催予定のブロックチェーンと仮想通貨の会議の詳細を発表し、外国人の参加条件と守るべきルールについて明らかにした。

同国の公式旅行サイトで20日に公開された専用の情報ページによれば、会議の期間は19年4月18~25日。誰でも参加歓迎だが、例外は韓国と日本、イスラエルのパスポート保有者とジャーナリスト。「よくある質問(FAQ)」欄では、外国人訪問者が守るべき規則の一部を紹介している。

アメリカ国籍者の「申し込みは歓迎」する、出席者はノートパソコン、スマートフォン、タブレットを持ちこむことができるが、「マスコミのプロパガンダや共和国の尊厳を損なうデジタルおよび印刷資料は許可されない」と警告している。

「北朝鮮は世界で最も安全な国と考えられている」と同サイトは主張。「他国の文化や信念に対する基本的な常識や尊敬の念の持ち主である限り、わが国が過去28年間、受け入れてきた数千人の友人と同様に、いつでも歓迎される。文化、スポーツ、科学、ビジネスにおける交流を楽しんでほしい」とアピールしている。

近年、北朝鮮は急成長する観光業を後押しするため、人権侵害が横行する核武装した独裁国家というイメージを払拭しようとしている。観光客誘致のキャンペーンを開始したのは90年代で、当時は深刻な飢饉で臨時収入を得ることが目的だった。

会議の目玉は観光旅行

金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は権力を掌握すると、平壌市内の紋繍ウォーターパークや東部沿岸の都市元山の葛麻リゾート、近郊の馬息嶺スキー場などに多額の投資をした。

高句麗墓、白頭山など多くの観光名所の存在に加えて、北朝鮮は多くの国際スポーツイベントや会議を開催している。

今回のブロックチェーンと仮想通貨会議開催のニュースが最初に浮上したのは、アメリカの経済制裁を迂回するために北朝鮮政府がデジタル技術を使ったと欧米から非難されている時期だった。それでも、イメージチェンジの機会を作ろうとする北朝鮮の企ては阻止できなかった。

4月の会議には、多くの小旅行が用意されている。1日目は人民大学習堂や朝鮮戦争博物館、平壌外国語大学、中等学校をまわり、 2日目は南部の開城市、板門店、最近設置された南北連絡事務所を訪れる。別の日のツアーの参加者は主体思想塔、金日成広場、スケートパーク、ボーリング場、射撃場、ショッピングに連れていかれる。

北朝鮮の厳しい情報統制のため、犯罪率に関する信頼できる数字を入手することは困難だ。だが当局とのトラブルで外国人が被害にあった数々の事件は、北朝鮮のイメージを傷つけてきた。



2008年には、人気の金剛山リゾートに近い立ち入り禁止地区に入り込んだ韓国人女性が、兵士に射殺される事件が起きた。昨年は、バージニア大学の学生オットー・ワームビアが滞在中のホテルから政治宣伝ポスターを盗んだ容疑で「国家に対する敵対的行為」で告発され、昏睡状態で釈放された直後に死亡した。この事件の後、ドナルド・トランプ大統領はアメリカ人の北朝鮮への渡航を禁止した。

米朝首脳会談に関する交渉の一部として、金は今年5月に北朝鮮に拘束中の米国市民3人を釈放したが、米国務省は北朝鮮渡航禁止を解除していない。それでも、前例のない高レベルの米朝対話が実現したことから、北朝鮮の街頭やメディアにみられるアメリカへの敵意の誇示は抑制されている。

アメリカと北朝鮮の直接交渉はここ数週間、停滞しているようだが、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、北朝鮮との接近を引き続き歓迎している。南北間の自由な旅はまだ不可能だが、文と金は両国の鉄道システムの相互乗り入れと、要塞と化した軍事境界線の武装解除に関する協定の締結に取り組んでいる。

(翻訳:栗原紀子)


トム・オコーナー

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