南北境界線 来たれ外国人 韓国、「非武装地帯」周辺観光解禁へ 半島緊張も「安全問題ない」
産経ニュース / 2024年5月10日 7時0分
【ソウル=時吉達也】北朝鮮との軍事境界線を挟む非武装地帯(DMZ)周辺の民間人規制区域を散策する韓国政府の観光事業で、年内にも外国人観光客の参加を解禁することが韓国国防省への取材で分かった。これまで規制区域への外国人の出入りは一部に限定されていたが、全域で認められることになる。韓国政府は核・ミサイル開発を進める北朝鮮との緊張が高まる状況を逆手に、地域経済の活性化を図る狙いだ。
鉄柵沿いを散策
民間人の規制区域内での観光を認める韓国政府の「DMZ平和の道」事業は、2018年9月に南北が敵対行為の中止などで合意したことを受け、翌19年に開始された。参加自治体は年々増加し、今年は韓国東端から西端まで、10自治体のコースが設定された。
国防省によると、外国人の参加は北部漣川(ヨンチョン)郡で試験的に認め、問題が生じなければ他の自治体に順次拡大していくという。これまでは軍事境界線上に位置する板門店の共同警備区域(JSA)がある坡州(パジュ)市など、4自治体に限られていたDMZ周辺への外国人の立ち入りが、今後全域で認められる見通しだ。
新たに解禁される地区では、DMZと民間人規制地域を区切る鉄柵沿いを散策したり、南北を貫く鉄道トンネルに立ち寄ったりすることが可能になるという。同省担当者は「経済活性化を図る自治体の要望を受けて検討し、安全性に問題がないと判断した」と話す。
韓国人の参加者は新型コロナウイルス禍だった21年の1060人から、昨年は6915人に増加。外国人に門戸を広げることで、さらなる参加者増が見込まれる。DMZ周辺観光を活発化させる狙いについて、文化体育観光省の担当者は「周囲の食堂や市場に寄ってもらうことで地域の活性化につなげたい」としている。
北朝鮮見下ろすスタバ
「平和の道」事業以外でも、自治体が独自にDMZ周辺の観光政策を進めている。北朝鮮からわずか1・4キロの距離にあり、北朝鮮の集落を肉眼で確認できる北西部・金浦(キンポ)市の愛妓峰(エギボン)展望台では、米コーヒーチェーンのスターバックスが年内の開業を予定。市関係者は「米国系のコーヒー店から北朝鮮の居住区を見下ろす珍しい体験になる」と観光資源化に期待する。
同展望台では昨年末以降、夜間のライトアップイベントを9年ぶりに再開した。1970年代以降、体制の優位性を北朝鮮に誇示する目的で保守系キリスト教団体が主導する行事だったが、北朝鮮の反発を受けて中断が繰り返されてきた。金炳秀(キム・ビョンス)市長は産経新聞の取材に対し、市の主催で再開した理由について「北朝鮮を脅かす意図は全くなく、あくまでも観光事業だ」と話した。
一方、昨年7月に駐韓米兵の北朝鮮越境事件があった板門店では、北朝鮮が南北軍事合意の破棄を宣言し兵士の拳銃所持を再開したことを受け、観光事業の中断が続いている。
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