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トランプ元側近バノン、 欧州で極右の元締めに?

ニューズウィーク日本版 2019年5月29日 19時0分

<トランプ政権の元幹部スティーブ・バノンがパリを拠点に暗躍、欧州議会選挙後のヨーロッパで国境を超えたポピュリスト同盟を創ろうとしている>

2017年にトランプ政権を去って以来、スティーブ・バノン元米首席戦略官は、活動の場をヨーロッパに移している。めざすのは、極右政治家を結集し、国境を超えたポピュリスト同盟を設立することだ。イタリアの反移民・極右政党「連盟」の党首マッテォ・サルビーニ副首相兼内務大臣も、長年の盟友バノンの下に馳せ参じる予定だ。

各国のポピュリスト政治家たちはサルビーニを中心に連携を深めており、バノンは望み通りのものを手に入れるかもしれないという印象もある。

<参考記事>イタリア極右指導者の背後に、「あの男」バノンが

政治学者イヴァン・クラステフは、バノン的なポピュリズムは「今後数十年で、リベラリズムに代わる有力な選択肢になる可能性が高い」と主張する。

主戦場はフランスに

ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)は、サルビーニのポピュリスト同盟を支持している。フィンランドの保守派ポピュリスト政党フィン人党も加わった。この党は欧州内のビザなし移動を可能にするシェンゲン協定からの脱退とロシアとのビザなし協定締結を主張している。オランダの極右政党自由党のリーダー、ヘルト・ウィルダースも参加した。

だが、ポピュリストとEU派の本当の戦いの場になると予想されるのはフランスだ。バノンはまさにそこを本拠地にし、パリの高級ホテルで過ごしている。中道のエマニュエル・マクロン仏大統領はバノンの存在に腹を立て、バノンはロシアのオリガルヒ(新興財閥)と組んでEUの弱体化を仕組んでいると非難した。

欧州を一体と考える汎ヨーロッパ主義の新政党「ボルト」は、フランスはヨーロッパの将来にとって重要だと言う。「EU懐疑派やポピュリストはヨーロッパでは無用の存在だ」と、ボルトのダニエラ・ラモス・ヒラルドは言う。「ドイツやフランスがEU懐疑派になってしまったら影響はとても大きい。明け渡すことはできない」



欧州議会選挙の結果、ポピュリスト政党が獲得した議席はほぼ横ばいだった。しかし欧州議会を仕切ってきた二大会派は過半数を割り、中道右派や中道左派が欧州議会を支配できる時代ではなくなった。

とはいえ、ポピュリスト陣営も分裂しているため、主流派の政治家たちに本格的な挑戦を突き付けることはできないと、政治アナリストのヨルン・フレックは論じる。

フランスの極右政党、国民連合のマリーヌ・ルペン党首は、サルビーニの同盟に対する支持を表明した。だが彼女は5月26日の選挙までの間、バノンとの距離を広げようと試みており、記者団にバノンは「選挙運動にはまったく関係ない」と伝えている。

バノンは自身を選挙の単なる「オブザーバー」と語った。だが報道によれば、バノンは投票日前にパリでルペンと会っていた。

バノンはグローバルなポピュリスト運動のまとめ役になりたいと言う。フランスのルペンやハンガリーの極右ビクトル・オルバン首相、さらにはフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領までを結びつける役割を果たしたい、というのだ。

バノンはまた、ヨーロッパの右腕として、ベルギーの極右政党『人民党』党首のミシャエル・モドリカメンのような男を味方につけている。

だが、バノンの仲間のなかには、イタリアのサルビーニ一派と距離を置く者もいる。ハンガリーのオルバンやイギリスの「ブレグジット党」党首ナイジェル・ファラージだ。ファラージは、イギリスで欧州議会の第1党の地位を手に入れた今、国内の支持者を増やすため、極右路線からは離れつつある。

オルバンは、その反EU的な発言のために、欧州議会で中道右派の議員が所属する「欧州人民党グループ(European People's Party group/EPP)」から参加を拒否された。しかしそれでも、サルビーニのポピュリストグループには入らなかった。ポーランドの極右政党「法と秩序」もサルビーニの誘いを断っている。


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クリスティナ・マザ

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