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メンタリストDaiGoがなぜかオススメした1冊のアイデア本

ニューズウィーク日本版 2019年9月20日 17時0分

<「持ってるだけで【モテる】アイテム」と題したYouTube動画で、約80年前に書かれた本をDaiGo氏が紹介した理由>

人の心を読んでいるかのような驚きのパフォーマンスで、テレビでもお馴染みのメンタリストDaiGo氏。作家として多くの著書も出版しているが、実はユーチューバーでもある。それも、チャンネル登録者が156万人(2019年9月20日時点)もいる人気のユーチューバーだ。

そんな彼が6月、「持ってるだけで【モテる】アイテム」と題した動画を配信し、その中でフランスのブルターニュ南大学で行われた1つの心理学実験を紹介した。

男子学生たちを使った実験で、ギターケースを持って女性をナンパする、スポーツバッグを持ってナンパする、何も持たないでナンパするという3パターンのうち、成功した(=電話番号を聞き出した)確率が高かったのは誰か、というもの。DaiGo氏によれば、スポーツバッグの成功率が9%で、ギターケースは14%だったという。

この差を生んだのは何か。DaiGo氏が言うように、バンドマンやアーティストが女性にモテるのはなぜだろうと不思議に思ったことがある人は少なくないだろうが、理由はまさにそれ。「ギターケースは創造性の証しだから」と、彼は説明する。

自然界では創造性(クリエイティビティ)が生き残るために必要な能力だから、女性は本能的にクリエイティブな男性に対して魅力を感じやすい、というのだ。

ここで、じゃあ皆さんバンドを始めましょう、なんて無茶なことを言わないのが、自らのフォロワーをよく理解しているDaiGo氏のすごさだ。それよりも、本を読んでアイデアの出し方を鍛え、クリエイティブな人間になればいいと彼は言う。

「今日、最高にオススメの本を1冊紹介します。30分くらいで読めます。30分で読めるのに、皆さんの人生を変えるくらいの、アイデアに関する本。僕もこの本、めちゃめちゃ読みましたけど、何回も読めば読むほど、アイデアが出てくるという面白い本。すんごい薄くて、本が苦手な人でも読めちゃうくらいの本です」

それが『アイデアのつくり方』(CCCメディアハウス)だ。



時代が変わっても古びない、発想術のエッセンスを凝縮させた本

まさか2019年に遠く離れた東洋の国で、モテるために役立つ本と紹介されるなどと、著者は想像もつかなかっただろう。なんとこの本、アメリカで80年近く前に書かれた発想術の本なのだ。

著者は、アメリカ最大の広告代理店トンプソン社の常任最高顧問だった故ジェームス・W・ヤング氏。アメリカ広告代理業協会(4A)の会長などを歴任し、広告審議会(AC)を設立した人物で、原書の初版が刊行されたのは1940年だ。



邦訳版も初版は1988年で、日本で四半世紀にわたって売れ続けてきたロングセラーである。多くの広告クリエイター、あるいはアイデアの出し方を模索するあらゆる業種のビジネスパーソンに支持されており、累計30万部にも達している。

2017年に漫画化され、再評価されてブームとなった『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎・著)は1937年に初版が世に出た。2000年代に入って東京大学生協の書籍ランキングで1位になるなど話題を呼び、長く読み継がれている『思考の整理学』(外山滋比古・著)は1983年に刊行された。

よい本は長く売れる。古典回帰も一部で言われるなか、『アイデアのつくり方』はこれらの本と比べても遜色がないと言えるのではないか。

この本は時代が変わっても古びない、発想術のエッセンスを凝縮させた1冊だが、DaiGo氏が言うように、読みやすさも人気の理由かもしれない。わずか104ページという薄い本で、しかもそのうち26ページが、科学雑誌『Newton』初代編集長で東大名誉教授の故・竹内均氏による解説である。

その凝縮されたエッセンスのさらにごく一部をここで紹介しておくと、著者はこう書いている。

 アイデア作成の基礎となる一般的原理については大切なことが二つあるように思われる。 そのうちの一つには既にパレートの引用のところで触れておいた。即ち、アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもないということである。(中略) 関連する第二の大切な原理というのは、既存の要素を新しい一つの組み合わせに導く才能は、事物の関連性をみつけ出す才能に依存するところが大きいということである。(27~28ページより)

この一般的原理が、過去80年間、世界のビジネスパーソン(や、モテたい男性たち)を導いてきた。今も有効な原理であることは、DaiGo氏が紹介する通りだ。


『アイデアのつくり方』
 ジェームス・W・ヤング 著
 今井茂雄 訳
 竹内 均 解説
 CCCメディアハウス


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※9月24日号(9月18日発売)は、「日本と韓国:悪いのはどちらか」特集。終わりなき争いを続ける日本と韓国――。コロンビア大学のキャロル・グラック教授(歴史学)が過去を政治の道具にする「記憶の政治」の愚を論じ、日本で生まれ育った元「朝鮮」籍の映画監督、ヤン ヨンヒは「私にとって韓国は長年『最も遠い国』だった」と題するルポを寄稿。泥沼の関係に陥った本当の原因とその「出口」を考える特集です。






ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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