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米人気スーパーの菓子パッケージが批判を受けて変更、そのワケは?

ニューズウィーク日本版 2019年9月27日 18時0分

<アメリカのヒット菓子のパッケージが動物愛護団体からの批判を受けて変更することになった。近年の動物愛護の状況と影響とは......>

質の高い商品を比較的安く買えるとあり、若い世代を中心に人気を集める米大手スーパーチェーンのトレーダジョーズ(Trader Joe's)で、人気の菓子パッケージに動物の絵が不当に描かれているとして、商品デザインが変更されることがわかった。

問題の菓子は「バンバ・ピーナット・スナックス」(Bamba Peanut Snacks)というもの。ピーナツの風味やカリッとした食感もさることながら、3.5オンス(約99グラム)でたったの99セントというお得さもあり、ここ数年の人気商品の一つだ。

日本のカルビー・ポテトチップス(小60グラム、中85グラム、大135グラム)の大中サイズの中間ほどのサイズが約100円で売っているとイメージすれば、物価の高いアメリカで群を抜く高コスパ商品だとわかるだろう。

ニューヨークにあるトレーダジョーズ(Trader Joe's)(c) Kasumi Abe

トレーダジョーズ(Trader Joe's)の店内イメージ (c) Kasumi Abe

サーカスでの曲芸をイメージさせる絵はNO

バンバ・ピーナット・スナックスが問題になったのは、菓子パッケージに象の絵が描かれているからだ。サーカスでの象の曲芸をイメージさせるものとして、動物の権利(アニマルライツ)を守るための米運動団体「動物の倫理的扱いを求める人々の会」(PETA)からクレームが入ったのだ。

バンバ・ピーナット・スナックス

サーカスの曲芸は、動物愛護者や団体から嫌悪の対象として指摘されている。動物の体の一部をチェーンで繋ぎ動きの自由を奪っているほか、芸の練習のために、動物を鞭で叩いたり、ショックを与えたりするのが通例だからだ。



近年のアメリカは、動物の権利を守ることに関して、人間の権利同様にとても厳しい。筆者の友人が以前、アニマルシェルターから捨て猫の里親になりたいと言い出したことがあったが、里親になる審査がとても厳しかったことが印象的だった。シェルターから第三者である私に電話がまずあり、その友人がどのような人物か、どのように知り合ったか、どのような仕事をして猫を養える安定した収入はあるのか、虐待歴はないかなど、非常に事細かく電話でインタビューを受けた。

また3年ほど前には、自宅近くで開催されたサーカス公演の会場前で、動物愛護団体が抗議しているのを実際に目にしたこともある。「すべての生物を愛し生命に敬意を示す」というポリシーを掲げた動物愛護団体「フレンズ・オブ・アニマル・ユナイテッド」による抗議活動だった。参加していた女性は、「時代は21世紀です。動物をサーカスに使ってはいけません」と静かに語った。

サーカス会場前で「動物をサーカスに使うなんてけしからん」と抗議する人々 (c) Kasumi Abe

アメリカでは、ファッションとしての毛皮も嫌悪の対象として、動物愛護団体から非難されるので、着用の場合はやや注意が必要だ。当然、動物への虐待は罪が重く、犯罪者として厳しく罰せられる。

1年前にはナビスコもデザイン変更

トレーダージョーズのイメージは、同ピーナツ菓子だけではなく、ピーナツバターやトイレットペーパーにも同様に使われていた。

トレーダージョーズは、象をイメージに使った理由として、「野生動物の中でも特に記憶力が良いとされている象を描くことで、記憶=一度食べたら忘れられないバンバ・ピーナット・スナックスの味と結びつけたかった」と、悪意はなかったとしている。

しかし今回のPETAからのクレームを受け、同社は関連するすべてのパッケージデザインを変更し、販売再開を目指す。

PETAはこのほかにも、ちょうど1年前、ナビスコのロングセラーのクラッカー菓子「バーナムズ・アニマル・クラッカーズ」(Barnum's Animal Crackers)のイメージがサーカスの移動車の中に入れられた野生動物だったため警告し、デザインを一新させることに成功している(新デザインは自然の中を歩く野生動物)。今後、トレーダージョーズの象は、曲芸の様子からどのように変わるだろうか。



Animal crackers remove cages from packaging after PETA complaint


安部かすみ

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