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ロシア軍の兵器庫は無尽蔵? 破壊し尽くせない物量の恐怖

ニューズウィーク日本版 2024年3月25日 22時0分

<ウクライナに本格侵攻してからというもの。ロシア軍は無謀な作戦や失態で人員、兵器共に大きな損失を被ってきたが、目を見張る戦争継続能力を維持している>

2年にわたるウクライナへの本格侵攻で数々の失態を演じ、驚異的な損害を被ったにもかかわらず、ロシア軍がいまだに作戦を継続する能力を維持していることは明らかだ。

 

厳しい冬と消耗戦の末、戦況は再びロシア優位に傾いている。ウクライナちは思うような兵力増強ができず、西側諸国、特にアメリカからの軍事援助の減少に直面している。

【動画】ウクライナによるドローン攻撃により、ロシアT-90戦車が爆撃を受ける瞬間の映像

今年はウクライナにとって、生き残りを懸けた過酷な年になりそうだ。ロシア軍は兵士や装備の犠牲を問わず、ルハンスク州とドネツク州で構成される東部ドンバス地方全域の制圧を主目的とする攻撃を続けるとみられる。

ウクライナもロシアも詳細な死傷者数を定期的に公表することはしていない。ロイター通信が昨年12月に明らかにした機密解除された米情報機関の報告書によれば、2022年2月以降のロシア軍の死傷者数は推定31万5000人で、侵攻前の兵員の約90%にも相当する。ウクライナは、約43万5000人のロシア軍兵士を「排除」したと主張している。

現役は約110万人

一方、ウクライナ軍の死傷者総数は、8月にリークされた米軍のアセスメントを引用したニューヨーク・タイムズによれば約12万4500人から13万1000人で、戦死者は1万7500人に上る。またウォロディミル・ゼレンスキー大統領は今年2月、2年間の戦闘で3万1000人が死亡したと述べた。

ロシアは、囚人まで動員して兵を増やしてきた。2022年8月、プーチンは現役兵士の数を13%増員(約13万7000人)し、総兵力を115万人に引き上げるよう命じ、予備役30万人の「部分動員」も行われた。

国際戦略研究所(IISS)の「2024年軍事バランス」データベースによると、ロシア軍の現役兵力は全軍で約110万人、うち50万人が陸軍に所属している。さらに全軍で150万人の予備役がいる。

ロシアの機甲部隊はウクライナ軍の戦線を崩壊させる前衛の役割を担っているが、これまでの戦いは過酷だった。ロイターは、匿名のアメリカ政府関係者の話を引用し、ロシア軍は3100両の戦車で戦争を開始し、2200両を失ったと報じている。

こうした損失を埋めているのは、旧ソ連で1970年代に生産された戦車T-62のような古い車両だ。IISSによれば、ロシアでは現在、約1300両の戦車が使用されているという。古い戦車の一部は、静止型射撃台に改造されるほか、爆薬を詰め込んで車両搭載型即席爆発装置(VBIED)として使用されることもある。

失われた戦車の中には、ロシアで最も先進的で戦闘実績も高いT-90主力戦車数十両も含まれている。大々的に宣伝されていた次世代装甲戦闘車両「アルマータ」シリーズのT-14主力戦車の導入は長らく延期されていたが、開発にあたっていた国営の防衛コングロマリット、ロステックはコストの増大を理由に、今年初めに開発を断念した。

IISSの『軍事バランス2024』報告書によれば、ロシアには200両以上のT-90を含むさまざまなタイプの戦車が1750両ほど残っており、最大で4000両が保管されているという。

歴史的にロシアが「戦争の神」として重視している砲兵火力は、今も戦場で重要な役割を果たしている。ウクライナはこれまでの戦闘で1万70門以上を破壊したと主張しているが、
IISSによれば、ロシアはさまざまなタイプの砲を4397門保有している。

ロシア空軍の活躍

空中戦では、ロシアは戦争の初期段階で数的優位を行使することができなかった。ウクライナ空軍は現在も定期的に出撃している。対空兵器の支援を受けて増強し、国土の大半でロシア軍機の進入を防いでいる。

ウクライナは2022年2月以来、あらゆるタイプのロシア軍機347機を撃墜したと主張してする。オープンソースの情報サイト「オリックス」は、97機の撃墜と8機の損壊を確認したという。

それでも、ロシア空軍は東部戦線で極めて重要な戦果をあげており、航空機から投射する滑空爆弾を使ってアウディーイウカのような激戦地でウクライナの陣地を攻撃、破壊している。

ロシアは、ウクライナの都市やインフラ目標に向けて長距離ミサイルを発射するために、今もさまざまな航空機を使っている。開戦前に保有していた2300発の戦略ミサイルも、まだ約900発残っている。

IISSの報告によると、ロシア空軍は爆撃機129機、戦闘機188機、戦闘機/対地攻撃機433機、対地攻撃専用機257機を含む固定翼機約1169機を保有しており、さらに208機が海軍航空部隊に配属されている。また、空軍は約340機の攻撃ヘリコプターを保有している、と軍事バランス報告書は述べている。

ウクライナ軍が近代的な非対称的海上攻撃戦略に磨きをかけたため、ロシア軍の最も衝撃的な敗北のいくつかは海上で起きた。ロシアはいまだアメリカ、中国に次ぐ世界第3位の海軍力を誇っており、その黒海艦隊はバルト海艦隊、太平洋艦隊、北洋艦隊と並ぶ4大艦隊のひとつでもあるが、ここ2年は大敗を喫している。

黒海艦隊は約80隻で侵攻を開始した。ウクライナはそのうち27隻を破壊し、少なくとも15隻を修理が必要な状態にしたと主張している。とくに黒海艦隊の旗艦だった誘導ミサイル駆逐艦モスクワ、攻撃型潜水艦ロストフ・ナ・ドヌー、コルベット艦イワノベッツ、大型揚陸艦ツェーザリ・クニコフなどの損失は衝撃をもって受け止められたが、まだ軍艦の半数は残っている計算になる。



デービッド・ブレナン

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