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系外惑星「プロキシマ・ケンタウリb」は “ハビタブル” ではない?強烈な恒星風にさらされている可能性

sorae.jp 2023年1月2日 11時10分

【▲ 図1: プロキシマ・ケンタウリを公転するプロキシマ・ケンタウリbの想像図。 (Image Credit: ESO) 】

■惑星が“ハビタブル”かどうかは恒星の活動にも左右される

地球に住む私たちから見て太陽の次に近い恒星は、地球から約4.3光年の距離にある「プロキシマ・ケンタウリ」です。プロキシマ・ケンタウリで発見された太陽系外惑星「プロキシマ・ケンタウリb」は、ハビタブルゾーンにある地球型惑星として注目されています。

ただ、ハビタブルゾーンを公転する惑星の表面に、必ずしも液体の水があるとは限りません。特に重要なのが大気の有無です。水は蒸発しやすい物質であり、表面で液体の水が維持されるにはある程度の厚い大気が必要です。大気が維持されるかどうかはある程度の重力とともに、恒星の活動にも左右されます。恒星の放射圧が強ければ、惑星から大気が逃げてしまう可能性があるからです。

プロキシマ・ケンタウリbは地球以上の質量を持つと推定されているため、大気を維持するのに十分な重力があるはずですが、周回するプロキシマ・ケンタウリが赤色矮星という小さな恒星であることが問題となります。

一般に、恒星は質量が小さいほど放射量が少なくなるため、ハビタブルゾーンは恒星に近くなります。一方で、恒星は質量が小さいほど半径も小さくなり、表面から中心核(コア)までの距離は短くなるため、中心核の激しい活動が表面に現れやすくなります。

恒星の中心核では激しい磁気活動があり、強い磁場は電気を帯びた粒子を加速させ、恒星の表面から吹き出させます。これが恒星風で、太陽の場合は太陽風と呼ばれます。このような粒子が惑星の大気にぶつかると、大気を構成する分子が加速され、惑星の重力を振り切って逃げ出す原動力となります。大きい恒星のハビタブルゾーン内でそのような現象に遭遇することは滅多にありませんが、小さい恒星のハビタブルゾーン内では惑星は激しい恒星風に常時さらされます。このため、本当に “ハビタブル (生命が居住可能である)” であるかは議論の余地があります。

ほとんどの場合、特定の恒星の磁気活動を知ることはできません。一部の観測可能な恒星の磁気活動をもとに、他の恒星の磁気活動を推定する方法が使われてはいるものの、これが正しいのかどうかはわかりません。

■プロキシマ・ケンタウリbは地球と比較して最大1000倍の恒星風にさらされている可能性

近年、プロキシマ・ケンタウリの観測値が積み重ねられたことで、磁気活動を直接モデル化できる「ZDI (ゼーマン・ドップラー・イメージング)」をプロキシマ・ケンタウリの研究に利用できるようになりました。ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのCecilia Garraffo氏などの研究チームは、プロキシマ・ケンタウリの観測データをもとに、ZDIを用いた磁気活動のモデル化を検証しました。

【▲ 図2: 今回の研究で構築されたプロキシマ・ケンタウリの磁気圏。左からZDIモデル、代替モデル、両者の組み合わせによるもの。 (Image Credit: Garraffo, et.al.)】

その結果、プロキシマ・ケンタウリの磁気活動について詳細なモデルが構築され、プロキシマ・ケンタウリbは地球と比較して平均値でも100~300倍、プロキシマ・ケンタウリの活動サイクル(7年周期)のピーク時には地球の1000倍もの恒星風にさらされると推定されました。この値では惑星の表面にある大気や水は短期間で蒸発しきってしまうことから、プロキシマ・ケンタウリbはハビタブルゾーン内を公転しているにもかかわらず、不毛の惑星である可能性が高いことがわかりました。

プロキシマ・ケンタウリのように小さな恒星は、大きな恒星よりも数多く存在すると考えられています。その中にはハビタブルゾーン内にあると推定される系外惑星がいくつも見つかっていますが、その居住可能性については再考する必要があるかもしれません。

 

Source

Cecilia Garraffo, et.al. - “Revisiting the Space Weather Environment of Proxima Centauri b”. (The Astrophysical Journal Letters)

文/彩恵りり

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