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太陽系外縁部から移動してきた?「非常に赤い小惑星」が小惑星帯に存在することを発見

sorae.jp 2021年7月29日 21時3分

【▲ 岩石や塵を含む小惑星帯を描いた想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech/T. Pyle)】

宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所(JAXA/ISAS)の長谷川直氏ら国際研究グループは、火星と木星の間に位置する小惑星帯に、スペクトル(波長ごとの電磁波の強さ)が非常に赤い特徴を持つ小惑星が2つ存在することが明らかになったとする研究成果を発表しました。研究グループは、この2つの小惑星から初期の太陽系外縁部の情報が手に入る可能性があるとして注目しています。

■探査すれば初期の太陽系外縁部の情報が小惑星帯で得られる可能性

初期の太陽系にはガスや塵でできた原始惑星系円盤が存在しており、そのなかで塵が集まって微惑星が形成され、微惑星どうしが衝突・合体して原始惑星へ成長したとみられています。研究グループによると、小惑星帯に存在する直径100km以上の小惑星は太陽系初期に形成された微惑星の生き残りではないかと考えられていて、研究グループではその組成や分布を解明するべく近赤外線の波長を中心とした分光観測(天体のスペクトルを捉える観測手法)を行っています。

研究グループが分光観測を進めたところ、小惑星「ポンペヤ」(203 Pompeja、直径110km)のスペクトルは波長が長くなるほど強度が上がる、言い換えれば「赤い」スペクトルを持つことが明らかになりました。更に分析を進めたところ、別の小惑星「ユスティティア」(269 Justitia、直径55km)もポンペヤと同様に赤いスペクトルを持つことがわかったといいます。

【▲ ポンペヤおよびユスティティアのスペクトルを小惑星(左)や太陽系外縁天体など(右)と比較した図。比較対象のアルベド(絶対反射率)はいずれも0.1以下(Credit: ISAS, Hasegawa et al. 2021より改変)】

小惑星は分光観測によって判明した組成をもとに数種類に分類されています。小惑星帯の外縁部や木星のトロヤ群(※)には赤いスペクトルを示す「D型小惑星」が存在していますが、ポンペヤとユスティティアのスペクトルはD型小惑星よりもさらに赤く、むしろ海王星の外側に位置する太陽系外縁天体や、木星よりも外側を公転するケンタウルス族の小惑星などと同様とされています。

※…太陽を周回する小惑星のグループのひとつ。太陽と木星の重力が均衡するラグランジュ点のうち、木星の公転軌道上にある「L4点(公転する木星の前方)」付近と「L5点(同・後方)」付近に分かれて分布している

研究グループでは、非常に赤いスペクトルを持つポンペヤとユスティティアが小惑星帯に存在する理由として、太陽系の初期に有機化合物のスノーライン(後述)よりも外側にあたる太陽系の外縁部で形成された後に、現在の軌道まで移動したためではないかと考えています。太陽系外縁天体やケンタウルス族小惑星の表面はメタンやメタノールから生成された複雑な有機物に覆われている可能性が過去の研究で指摘されており、同様のスペクトルを示すポンペヤやユスティティアも同じように有機物で覆われている可能性があるといいます。

また、太陽系の外縁部で形成されたことが考えられるポンペヤとユスティティアを探査することで、遠く離れた太陽系外縁天体まで探査機を送り込まなくても太陽系初期における外縁部の情報が得られる可能性があることから、研究グループは将来の探査対象候補として検討する価値があると指摘しています。

■小惑星の組成を左右した揮発性物質のスノーライン

水、二酸化炭素、有機化合物(メタンやメタノールなど)といった揮発性の物質は、太陽から遠い場所では固体として存在していますが、太陽に近い場所では揮発して気体になります。固体と気体のどちらになるかは太陽からの距離に左右され、その境界は「スノーライン」(snow line、雪線)と呼ばれています。スノーラインは物質によって位置が異なり、水の氷のスノーラインは二酸化炭素のスノーラインよりも太陽に近く、二酸化炭素のスノーラインは有機化合物のスノーラインよりも太陽に近くなります。

小惑星(もしくはその元になった母天体)の形成時にどの揮発性物質が固体として含まれるかは、太陽からの距離に応じて異なることになります。たとえば、JAXAの小惑星探査機「はやぶさ」が探査した小惑星「イトカワ」(25143 Itokawa)は石質の「S型小惑星」(石質隕石の普通コンドライトに対応)に分類されていますが、S型小惑星は水氷のスノーラインよりも内側で形成されたとみられています。

これに対し、昨年12月にサンプルを地球へ持ち帰った「はやぶさ2」が探査した小惑星「リュウグウ」(162173 Ryugu)が分類されている炭素質の「C型小惑星」(石質隕石の炭素質コンドライトに対応)は、水氷のスノーラインよりも外側で形成されたとみられています。形成された場所が水氷のスノーラインよりも内側か外側かで、S型かC型かが分かれたことになります。

また、二酸化炭素のスノーラインよりも外側の領域では、前述のD型小惑星が形成されたと考えられています。D型小惑星のスペクトルは彗星のスペクトルに似ていることが知られており、彗星と同様に水や二酸化炭素を含むとみられています。いっぽう、太陽系外縁天体やケンタウルス族小惑星のように非常に赤いスペクトルを持つ天体は、有機化合物のスノーラインよりも外側の、太陽から遠く離れた領域で形成されたと考えられています。

【▲ 太陽系の進化を示した図(Neveu & Vernazza2019およびDeMeo & Carry2014を参考に作成されたもの。Credit: ISAS, 天体画像:NASA、リュウグウ画像:JAXA)】

近年の太陽系形成モデルでは、木星や土星といった巨大惑星が形成後に移動したと考えられており、移動の影響を受けた他の天体の軌道も変化したとみられています。形成当時はスノーラインに応じて組成が分かれていた小惑星も、移動する巨大惑星の影響を受けてそれぞれの軌道が変化したことで、現在の小惑星帯には異なる組成の小惑星が存在するようになったと考えられています。

研究グループによると、スノーラインと最新の太陽系形成モデルを組み合わせて小惑星帯~木星トロヤ群に存在する小惑星の数を推定すると、D型小惑星よりも遠くで形成された非常に赤いスペクトルの天体のほうが、この範囲における数は少ないことが考えられるといいます。実際に、小惑星帯に存在する非常に赤いスペクトルの天体の数はD型小惑星と比べてはるかに少なく、最新の太陽系形成モデルの確からしさが支持されるとしています。

 

関連:隕石内部に取り込まれていた太陽系初期の炭酸水、理論を裏付ける発見

Image Credit: JAXA宇宙科学研究所
Source: JAXA宇宙科学研究所
文/松村武宏

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