北大など、リュウグウ試料の表面に初期太陽系の新たな磁気記録媒体を発見
マイナビニュース / 2024年5月2日 17時18分
北海道大学(北大)、ファインセラミックセンター(JFCC)、神戸大学、東北大学、東京大学(東大)、京都大学(京大)の6者は4月30日、小惑星探査機「はやぶさ2」がリュウグウから回収した試料(以下、試料)の表面を詳細に調べたところ、「マグネタイト(磁鉄鉱)」(Fe3O4)粒子が還元して非磁性となった、似た構造の木苺状組織を発見し、「擬似マグネタイト」(擬似Fe3O4)と命名したことを共同で発表した。
また、それを取り囲むように点在する渦状の磁区構造を持った多数の鉄ナノ粒子からなる新しい組織も同時に発見したと併せて発表した。
同成果は、北大 低温科学研究所の木村勇気教授、JFCCの加藤丈晴主席研究員、同・穴田智史上級研究員、同・吉田竜視上級技師、同・山本和生主席研究員、日立製作所 研究開発グループの谷垣俊明主任研究員、神戸大大学院 人間発達環境学研究科の黒澤耕介准教授、東北大大学院 理学研究科の中村智樹教授、東大 理学系研究科の佐藤雅彦助教(現・東京理科大学 准教授)、同・橘省吾教授、京大大学院 理学研究科の野口高明教授、同・松本徹特定助教らの共同研究チームによるもの。今回の研究は、はやぶさ2の「初期分析チーム」の「石の物質分析チーム」による初期分析の一環として行われた。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。
宇宙風化作用の痕跡を調べることで、天体表面の年代に関する情報など、惑星間プロセスを理解できると考えられている。これまでの試料の初期分析からも、その痕跡として、小惑星内部で水質変質により形成される主要鉱物の「層状ケイ酸塩」が、太陽風や宇宙塵の衝突によって部分的に脱水した組織であるということが確認されている。このように、層状ケイ酸塩に対する宇宙風化作用は徐々に解明されつつあるが、もう1つの重要な鉱物であるFe3O4の宇宙風化作用に関する研究は限られていたという。そこで今回の研究では、宇宙風化作用を受けたFe3O4をさらに詳細に分析することにしたとする。
まず、集束イオンビーム加工装置を用いて試料の超薄切片が作製され、宇宙風化作用を受けている試料表面のFe3O4粒子の磁束分布が、ナノスケールの磁場を可視化できる電子線ホログラフィ(EBH)専用電子顕微鏡(TEM)により直接観察が行われた。さらに、通常のTEMによる微細組織観察、結晶構造解析、元素組成分析、電子エネルギー損失分光分析も実施された。
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