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能登半島地震、“旅行で復興支援”する際の「観光の見所」と注意すべきポイント

日刊SPA! 2024年3月21日 8時51分

 石川県能登地方を震源とする最大震度7の地震「令和6年能登半島地震」が発生してから2か月以上が経ち、甚大な被害を受けた地域でも少しずつ営業を再開する店や施設も増えつつある。また、石川県の観光を通じた復興支援である「北陸応援割」も受付が開始されている。そこで、限定的にはなるが、筆者が取材した各地域の状況とともに、ぜひ知ってほしい店や施設について紹介。取材にあたり被災地などを案内してくれた「株式会社ぶなの森」の代表・高峰博保氏や現地の方に聞いた“被災者に直接届く支援”や“観光の際に注意したいこと”とともに、石川県の旅行で利用したい割引制度などについても紹介したい。(※現地取材は2月下旬)
◆被災者に活力を届ける支援と迷惑行為

 今回取材に同行してくれた「ぶなの森」の代表・高峰博保氏は震災後、自社サイトやSNSで復興の様子を発信するほか、被災地でボランティア活動を希望する県外団体との橋渡しなどもおこなっている。そんな高峰氏に、素早く、そして直接被災者に届く支援について聞いた。

「復興支援したいというお気持ち、そして義援金や支援金を送っていただけることは、すごくありがたいです。もし、もっと早く直接的に支援したいということでしたら、各店舗や企業が販売している商品をオンラインショップで購入いただくといいかもしれません。石川県では、応援消費の機運を高める“能登のために、石川のために 応援消費おねがいプロジェクト”などの取り組みもおこなっています」

 高峰氏によると、大きな被害を受けた地域でも農業や漁業といった一次産業は再開しているところが多く、「一次産業を担いたいという移住希望者も歓迎」だと言い、石川県の観光旅行についても、「やはり皆さん生活がありますので、来ていただきたいです」と言う。

「まだまだ道路が損傷していたり家屋が倒壊したりしている地域もありますので、もちろん行き来が可能な地域ということにはなりますが、たとえば金沢市や加賀市で食事や宿泊をしていただいても支援につながります。食事には石川県の食材が入っていますし、お土産だってそう。そして何より、直接注文することで、お店や企業の方の活力になります」

参考:「政府広報オンライン」
参考:「能登のために、石川のために 応援消費おねがいプロジェクト」
参考:産直アウル「北陸特集」

◆事前にチェックすべき運転ルート

 高峰氏は、「中能登町や羽咋市以南では、地震により被害を受けた店舗や施設でも営業を再開しているところが多いので、ぜひ遊びに来ていただきたいです」と続ける。もし自家用車で行くなら、気をつけておきたいのが運転するルート。

「ボランティアに来ている方々の多くは、被害の少なかった金沢市などに宿泊し、そこから毎日のように被災地へ向かいます。そのため、内灘町から穴水町までを無料でつなぐ “のと里山海道”は、午前中や夕方頃はかなり混雑することも多いです。また、羽咋市までは海岸線沿いの景観が美しく走行しやすいですが、羽咋市を越えると道路に段差やう回路が多いので運転に気をつけてください。3月15日からは一般車も穴水まで走行可能になりましたが、制限速度が40キロに制限されています」

参考:①石川県「のと里山海道の紹介」
②石川県「のと里山海道 よくある質問」

参考:「のと里山海道の沿革」
参考:「千里浜(ちりはま)なぎさドライブウェイ」

 また、以下のように話してくれた50代・男性の話も心に留めておきたい。

「震災直後には炊き出し支援をしてくださる団体さんなども多かったのですが、食材や調理途中のゴミなどを置いて帰るようなケースもあったようです。SNSなどでも問題になっていました。震源地に近いところでは、とくに物が壊れたり家屋が倒壊したりして、処分しないといけないゴミがたくさんあります。それなのに、ゴミを放置されたら…。せっかく来ていただいても、一部そういう方がいらっしゃることが残念です」

 50代・男性の話は、震災直後の炊き出しに関する話だが、こういったゴミ問題については観光客も気をつけたいところ。ポイ捨てをしないようにするだけでなく、なるべくゴミが出ないよう心がけたいものだ。

◆輪島市門前町の状況

 輪島市でもっとも被害が大きかったといわれる市内中心部までは行けなかったが、門前町の住宅街の損傷も想像以上だった。住宅街では多くの家屋が倒壊し、断水が続いている地域も多く、自衛隊やNPO法人などが簡易的なお風呂を設置して対応にあたっている。

参考:輪島市「入浴支援」
参考:NPO法人Vネット「輪島市門前町に2箇所目のお風呂オープン」

 水道の復旧は2024年3月末や4月以降となっており、観光など足を運ぶのは難しい状況。天領黒島地区は日本の海運業とともに船員の居住地として栄えたエリアであり、「旧角海家住宅(輪島市天領黒島角海家)」は国指定重要文化財である。

「旧角海家住宅」は、2007年に発生した能登半島地震で大きな被害を受け、2011年に土地建物ともに輪島市へと寄贈。莫大な費用をかけて復元工事がおこなわれた。10年そこそこで今回の「令和6年能登半島地震」が発生し、さらに大きな被害を受けたため「復旧は難しいかも」という県民の声もあるが、現地の案内看板には力強い貼り紙も見られた。

参考:「輪島市の水道復旧見込み」

◆志賀町エリアの状況と店舗紹介

 まずは、天井や駐車場などに甚大な被害を受けながらも、2月19日から営業再開している「トギストアー」。志賀町富来地頭町にある食料品店で、一般社団法人志賀町観光協会が2024年4月22日までおこなっているクラウドファンディングでも紹介されている。

 店内はシートが掛けられている箇所や電気の消えている棚もあり、取材時の2月下旬は空の棚もあるなど商品は品薄。けれど、被害が大きかったとされる七尾産のタイなどもあったほか、ジュースや菓子類は充実していたし、野菜や日用品などもあった。

「トギストアー」と同じ志賀町には、「増穂ケ浦ショッピングモールアスク」もある。ビル内に入居しているお店のほとんどを、地元住民が経営している。1995年の開業から営業している店も多く、お好み焼き&ランチ「ポルポ」もそのひとつ。
参考:一般社団法人日本ショッピングセンター協会「全国都道府県別SC一覧 石川県」

 2月上旬に断水が解消されてからは時間を短縮しながら営業し、地域住民が憩う場になっている。おすすめは、お店と同じ地域「富来」産のサザエが入った魚介のうまみ香る「シーフード華麗(カレー)」。3月2日(土)からは通常営業している。
 
 どちらもぜひ立ち寄ってほしいお店だが、志賀町エリアでは道路の一部が破損していたり、住宅街では家屋が倒壊していたりすることも少なくない。更新工事中の「世界一長いベンチ」は3月中旬には完成予定だが、観光するにはもう少し時間がかかるかもしれない。

◆宝達志水町や羽咋市エリアの状況と店舗紹介

 宝達志水町のなかでもっとも被害を受けた柳瀬地区は、道路の損傷や家屋倒壊など深刻な状況が続いているため足を運ぶのは控えておきたい。ただ、それ以外の地区では平常通り店や宿泊施設なども営業しているため、観光も楽しめる環境。

 大阪の元祖オムライスの店「北極星」の創業者の出身地であるということから「オムライスの町」としてプロモーション活動を展開してきた宝達志水町の人気老舗店が「志お食堂」。絶品なのに、オムライスは600円とリーズナブルな価格なのも魅力的だ。

 学校へ行きづらい子どもたちが集う応援サポートハウス「おばちゃんち」には、震災後も多くの人が集う。多くの子どもたちが集まって騒ぐなどし、地震のストレスを吐き出していた。こちらの「パンダ焼き」は種類も多く、あんこやカスタード、たまごサンドなどもある。
 羽咋市にある「道の駅のと千里浜」周辺も、観光が楽しめる状況だ。こちらでは、食材から製造まですべて石川県の「紅はるかチップス」や「れんこんチップス」のほか、能登産天然イノシシを使った「のととしカレー」などバラエティ豊かな商品を販売(※品薄状態・在庫がない場合もあり)している。迫力のあるサンドアート(砂像)も見応え抜群。

◆金沢市や加賀市エリアの状況と店舗紹介

 金沢市や加賀市に在住の方によると、地震の影響は少なかったとされるエリア。店や宿泊施設、企業なども通常通り営業していて観光も楽しめる環境だ。

 温泉が有名な加賀市には、昭和レトロな雰囲気漂う看板やポスターが店内を彩る「アサヒ軒」がある。昭和気分を存分に楽しみながら味わう中華そば(昔ながらのしょうゆラーメン)は、とてもおいしい。オムライスやフライメン、うま煮そばなどメニューも豊富な人気店。

 そして「アサヒ軒」のすぐ近くには、もしかしたら世界一小さいかもしれない、店舗面積1.5坪(たたみ3畳)のケーキ屋「No5 Paris」もある。オシャレな店舗の冷蔵ケースには、この道ウン十年のパティシエが腕をふるった美しいフォルムのケーキが並ぶ。とくにおいしかったのは、甘すぎないカスタードクリームとフルーツの相性が抜群のタルトケーキ。

 金沢駅は2月下旬には震災前と変わらないにぎわいぶりで、人の往来も多い印象だった。金沢の伝統芸能「能楽」で使用する鼓をモチーフにした「鼓門(つづみもん)」も変わらず兼六園口(東口)にある。日没から深夜0時までライトアップされ、フォトスポットとして人気。

 そんな金沢駅から車で15分ほどの距離にある「むてっぽう」というラーメン店も、おいしくて人気がある。塩ラーメンも醤油ラーメンもどちらもとてもおいしく、明るくて元気なスタッフが対応してくれる、雰囲気も抜群のお店だった。

◆北陸応援割など石川県の観光などが割引になる制度

 2024年3月16日(土)より開始される北陸応援割「いしかわ応援旅行割」では、旅行・宿泊料金の50%(条件・上限あり)が割引される。3月12日(火)より、2024年4月26日(金)宿泊分までの受付が開始され、第2弾は予算の範囲内でGW以降に実施予定。

 また、「IRいしかわ鉄道」では、あいの風とやま鉄道、IRいしかわ鉄道、ハピラインふくいの各社区間(越中宮崎駅~敦賀駅間)が2日間乗り放題になる「北陸3県 2Dayパス」やIRいしかわの沿線の金沢駅~倶利伽羅駅間すべてが自由周遊区間となり、普通列車が乗り降り自由となる「IRいしかわ一日フリーきっぷ」なども2024年3月31日(日)まで販売している。

※「令和6年能登半島地震」で亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された方々が1日も早く平穏な日々を取り戻せるよう心より願っております。

高峰博保氏
「株式会社ぶなの森」の代表。ぶなの森では、石川県の観光や交流サポートをおこなうほか、加賀市や宝達志水町を中心に石川県への移住促進を担う。震災後には自社サイトに「令和6年能登半島地震関連情報」ページを作成し、個人のSNSとともに復興の様子を発信。家屋を失った人に空き家を手配するほか、ボランティア希望の県外団体と被災地を結ぶコーディネーターとしても活動している。
・「令和6年能登半島地震関連情報」ページ
・能登定住・交流機構のFacebook
・高峰氏個人のFacebook
・高峰氏個人のInstagram

【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意

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